(1)豊田学舎の地域への活動―パソコン講座とその周辺
パソコン講座の始まりと広がり
パソコン講座は経営学部経営情報学科が開設されてから3年目の平成6年、学内でのコンピュータ授業担当者山本直3教授と小谷野錦子教授により始められた。それは夏休みの数日を利用するものだった。初期段階は主に豊田市、三好町の住民を対象とした。その後この講座は大学のスローガンである「地域とともに造り、地域とともに生きる大学」の対外的な一大行事になり、継続し更なる広がりを見せている(現在は長久手、日進、東郷、豊明などの地域へも広がっている)。
教員レベルから学生の地域参加へ
講座開設当初は、学内の情報・通信関連の知識と既存の設備を学外に提供し、地域の人々へパソコンの使い方の面白さと有用性を知ってもらおうとの素朴な試みであった。その後、大学でコンピュータ・ユーザーとして学んでいる学生がこの講座の手助けをし、彼らが少しずつ自信を深め、自分たちが学んだ知識と技術を地域の人々へ還元することができるようになった。最近の学泉塾のパソコン教室や学生主催の生活情報研究会などの働きが、この事の成果を如実に表している。地道な活動が教員レベルだけでなく学生にも広がったことで、このパソコン講座の波及効果が地域の要望に大いに貢献し、これによって、大学のさまざまな層の人々が地域に密接なかかわりを持つという誠に喜ばしい進展をもたらした。
最近4年の動き
ここ4年は窓口として経営研究所がパソコン教室の対外受付をしている。講座は一般向けと高校生を対象にした2つに分けられた。ある時期は受付け人数の大幅な増加で(三百数十人)、岡崎学舎の森谷、井関両教員の応援を得た。これがきっかけでその後岡崎学舎にも同様な講座が設けられたのも、豊田学舎の地域への働きが実を結んできたからに他ならない。平成13年度からは情報系の先生方(今泉、今枝、飯田、梅里、田中、武藤)とコミュニティ政策学部の教員(神谷、佐藤)などが加わった。そのうえ、学生補助員の増加で、少人数クラスの実現が可能になり受講者の満足度が上がった。
講座の内容と今後の動向
コンピュータ講座も時代の移り変わりとともに、内容が変化してきている。わが国の方針として、国は情報メディアの発展やパソコン通信の拡張や、平成15年から導入する小学校から高校までのIT関連授業などを決定した。これと並行して豊田学舎ではパソコン講座に今までの初心者、中級者向けの講座だけではなく、上級のメディア関連講座も開設しようと考えている。また、地域への日常的かつ密接なかかわりは、夏休み期間だけでなく夏休み以外の期間でも、さまざまな専攻分野別で働く大学教員が知的資産を住民とともに分かち合う必要があるとも考えている。市民に有意義な情報をネット上のホームページとその他の情報発信ツールで提供していくのに加え、顔がみえる対話形式で情報提供する時代が到来している。そういった意味で素朴に始められたパソコン講座が、初期にかかわった人たちの想像を越えて、更なる発展をするであろう。
(2)今までに開催した学泉塾
学泉塾は、誰もが学べる機会を創出し地域へ「学びの泉」を提供することを目的に、平成12(2000)年よりスタートした施策である。「地域と共につくる大学」を、まちづくり活動により実現する趣旨で立ち上げられた。
現在までに安城、豊田、知立で開催された学泉塾は以下のとおりである。学泉塾はこの他に岡崎でもスタートした。
○安城市(安城学泉塾) (共催 安城商店街あきんど塾、まちづくり市民会議)
第1回講演会 「スーパーおやじの痛快まちづくり」
講師 早稲田商店会会長 安井潤一郎氏
第2回講演会 「フライブルグから安城街作りを考える」
講師 ドイツ環境局 坂田史夫氏
経営学部 小谷野錦子教授
豊田市環境政策課 原田裕保氏
第3回講演会 「森はいのち――森作りから安城市の街作りを考える」
講師 横浜国立大学名誉教授 宮脇昭氏
第4回講演会 「地域通貨から安城市のまちづくりを考える」
講師 NPO政策研究所 山内博史氏
名古屋大門商店街振興組合専務理事 山本幸太郎氏
○豊田学泉塾 まちづくり講演会 (共催 豊田市・豊田市商店街連合会)
第1回講演会 「スーパーおやじの痛快まちづくり」
講師 早稲田商店会会長 安井潤一郎氏
第2回講演会 「地域通貨から豊田市のまちづくりを考える」
講師 地域通貨おおみ委員会 山本正雄氏
名古屋大門商店街振興組合専務理事 山本幸太郎氏
レッツ知多代表 杉浦明巳氏
○知立学泉塾 まちづくり講演会 (共催 知立商工会、知立青年会議所)
第1回講演会 「スーパーおやじの痛快まちづくり」
講師 早稲田商店会会長 安井潤一郎氏
第2回講演会 「地域通貨から知立市のまちづくりを考える」
講師 地域通貨おおみ委員会 山本正雄氏
名古屋大門商店街振興組合専務理事 山本幸太郎氏
レッツ知多代表 杉浦明巳氏
また、講演会以外の活動として、フライブルグへ調査団を派遣、安城まちづくり委員会への参加、早稲田商店会への訪問、植樹などの幅広い活動を行った。
(3)豊田学泉塾パソコン教室
平成12年11月22日より、豊田市喜多町2丁目の旧長崎屋ビル1階に「豊田学泉塾パソコン教室」をオープンした。これは、豊田学泉塾活動に、豊田市観光開発課および豊田市商店街連合会の協力を得て実現したものである。
設備は、18台のパソコンを設置したパソコン教室と10名程度が会議できる会議室となっており、すべてのパソコンがインターネット接続のうえ、大学と光ファイバーで直結されている。その費用は、パソコンが大学の設置、場所が豊田市の整備賃貸契約、光熱費・経費は大学が負担(一部は教室の収入で負担)することとなった。
パソコン教室設置のねらいとしては、
1、日本で一番進んだIT商店街の実現
2、商店街の活性化に学生のパワーを注入する
3、大学と地域との結びつきを強固にする
4、学生と地域との協同によるイベントの開催
といったものであった。
実際の運営は、本学経営学部田中英之教授を責任者とするコンピュータサークル(UCC)および田中ゼミ生が担当者となり、以下のような具体的活動を行った。
1、学生によるパソコン教室
2、学生中心の豊田市商店のホームページ作成とその維持・補修・管理
3、家庭出張パソコン教室
4、家庭出張パソコンメンテナンス
5、団体や子ども向けのパソコン教室の開催
6、会議室を使った、本学実業界出身教員による「起業家育成教室」(次期経営者育成講座)の開設
現在計画されている事業には、次のようなものがある。
1、学生による「インターネット・カフェ」の開設
2、SOHOへの独立法人化
3、豊田市商店会顧客データベースの作成
4、顧客データベースを活用した豊田市商店街活性化対策事業(ITシステムによる顧客確保)
5、豊田市内他地域での活動拠点の確保と教室の開設
6、本学設置市を中心とした近隣市への展開
(4)コミュニティ政策学部の活動
コミュニティ政策学会・研究フォーラムの創設
コミュニティ政策学部のこれまでの取り組みを基礎にして、全国的に多様に行われている理論と活動の集約・発展をめざして、全国規模の学会を立ち上げることができた(平成14年6月29日~30日、会場・愛知学泉大学8号館)。学会の事務局は、当分の間、コミュニティ政策研究所内に置くことになった。本学からの学会役員としては、初代会長に、中田コミュニティ政策学部教授が就任し、庶務担当理事に明瀬同教授、研究担当理事に山崎同教授がそれぞれ就任した。学会は、年1回の大会、研究会を関東・関西で開き、恒常的研究プロジェクトとして、地域分権、NPO・ボランティアとコミュニティ、日本のコミュニティ政策の検証などに取り組む。
安城市民公開講座の開催協力
安城市の生涯学習企画として同講座がもたれており、コミュニティ政策研究所が共催団体として、コミュニティ政策学部の所属教員を講師として派遣している。
①平成13年度のテーマ「安城のまちづくり」。当学部からの講師としては、中田實、山崎丈夫、高橋博久、岡田洋司、沢恒雄が参加。
②平成14年度のテーマ「産・学の最新事情」。当学部からの講師としては、明瀬政治、安井喜行、井上匡子、梁瀬和男、岡田洋司、中田實が参加。
その他、地域への教員のかかわり
①豊田市逢妻地区教員懇談会 ②足助高校学校評議員 ③豊田市・安城市TMOへの協力 ④安城まちづくり市民会議アドバイザー ⑤豊田市JC事業への協力など。この他、愛知県・県下市町村の各種審議会・研究会委員として多くの教員が参加し、大学との架け橋の役割を担っている。