第1節 確固たる建学の精神

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昭和43年9月。学園理事長であった寺部清毅先生が学校長に就任された。寺部学校長は、岩城前校長の教育方針を尊重しつつ、時代に応じた、新鮮にして、より具体的な教育理念をうち出した。

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新校長は三河武士の真髄を家康によって代表し、建学の精神「質実剛健」の解釈にあたり、家康の人となりに着目して述べている。即ち、家康の隠忍持久・質素倹約・堪忍は無事長久の基であり、また、「己に克つ」に於ては小牧・長久手の戦いでの冷静な判断。「剛毅闊達」については、上洛を窺う信玄と遠州三方ヶ原で戦って大敗。浜松城へ逃げ帰ったあとの剛胆にして、細心な思慮に裏付けられた行動等々である。本校の建学の精神は、寺部学校長によって、「質実剛健」「己に克つ」の基本的な立場のうえに「勇気と努力によって困難に立ち向かう、剛毅闊達な人間の育成」へと濾過され敷衍され、今日的な教育理念として確立されたのである。
兼務多忙の寺部学校長は6か月で退き、昭和44年4月、学園本部の企画部長であった鈴木修氏が学校長に就任された。鈴木学校長は、昭和20年以来、安城学園と苦楽を共にした生粋の学園人であり、城西分校(明大寺校舎)時代の1年間、1回生に数学を教えられた。また、昭和41年から、翌42年にかけては、校長補佐として岩城校長をたすけ、城西高校の基礎づくりに腐心された。豊富な現場経験、鋭い洞察力、緻密な計画性、人間的な包容力を兼備した私学人であった。

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事あるごとに生徒に訴えられたことは、「栄光の男子一生に、夢と希望とあこがれを持て。前途は豊かで楽しく、幸多きものである。しかし、それにはそれだけの実力が必要である。その基礎をつくりあげるのが高校時代であり、本校は建学の精神(質実剛健・己に克つ)を通して、その能力づくりを推進する。」ということであった。その具体的な実践目標として、次の6項目を設定された。

1、頑張ろう。頑張りの充実感、快感を体得しよう。そこから男子一生の基盤となる気力、体力、学力が生まれる。
2、目標を定めよう。それを一つ一つ達成していくことで希望が湧いてくる。そこにこそ豊かで充実した高校生活がある。
3、個性を伸ばそう。ちょっと他人には負けないものを教科学習やクラブ活動の中からつくり出せ。
4、謙虚さをもとう。長い歴史の中で人間が創りあげてきた真なるもの、善なるものに謙虚な心で接しよう。
5、自律を心がけよう。心身共に大きな力を持つ高校生である。自分で動き、自分で止まらなければ、他からの力ではどうにもならない。自己に対する責任と、社会に対する責任を果たさねばならぬ年代である。特に止まる能力は大切だ。止まれる自信がなければ、思いきって走れない。
6、時間をかけよう。勉強にも、練習にも、まず時間をかけよ。時間というものの量は、明日のものを今日使うことはできないし、今日のものを明日使うこともできない。またみな同じだけ持っていて、同じだけしか持っていない。だからこそ、多くの時間をかけたことには、それだけの成果があがる。大切なことにはうんと時間をかけよ。

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着任から離任(昭和56年3月)までの12年間、鈴木学校長の教育活動は、この6項目に終始する。生徒指導のあらゆる場面で、手を変え、品を変えて語られた学校長の言動の原点はここにあると言える。岩城学校長から寺部学校長へと引き継がれた「質実剛健・己に克つ」の精神は、鈴木学校長によって具体化され、やがて、進学に、クラブ活動に、生活指導に、確固たる成果として結実してゆくである。

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