第3節 教育の量的拡大から質的充実の時代へ

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多くの改革点
昭和57(1982)年からの10年間に、18歳人口は増大し、大学進学率も徐々に上昇してきた、教育の量的拡大期であった。しかし、平成4年の205万人をピークに、18歳人口は急激に減少していくことになる。
それに加え、女子高校生の4年制大学志向の強まり、一方で専門・専修学校の多様化による吸引力の増大の2つの要因にはさまれて、短期大学は極めて重大な局面に立たされており、質的な充実を迫られているのが現在の状況である。
なんといっても重要な改革は、平成3年7月1日に施行された「短大設置基準」の改正にかかわる事柄である。各大学がいかに教育を質的に充実させるかが、今後の短大の行方を決定することになり大学淘汰の時代が来るとみられる。
本学では、平成4年3月現在、改革案を検討中であり、十分な時間を費やして検討し、改革案を得て、5年度から実施する予定である。
こうした転換期において、本学は、最近10年間に、大学内の改革において、かなりの成果をあげてきている。特に、学年暦を改めたこと、授業を週5日制にしたこと、一般教育を中心に科目選択制度を導入したことなどである。施設の面では、岡崎学舎に体育館が完成したことをはじめとして、2年間にひとつの割で、建物が出来ている。
本学は、58年度から、学年暦を改めた。
これは、従来は前期末試験が、夏期休暇の後の2週間程度の授業の後、9月下旬に行われていたが前期末試験を休暇前に行うことにより、2年生の就職活動を活発にさせる、年度末の事務的繁忙期の負担を軽減させる、などを狙いとしたものである。

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週5日制については、本学は、平成元年度から、5科3学舎とも、授業を月曜日から金曜日までの5日間で行うことになった。これは金融業界に始まり、4年5月からは公務員も、また学校も、週休5日制に移行しつつあるという状況を先取りするものであった。

ただ、服飾・生活・家政の3科は、実験、実習授業が多く(1.5コマ135分)、従来の一日4コマでは、5日間に全科目を入れることが出来ない。このため、岡崎学舎だけは、始業時刻と終業時刻を変更して、4.5時限を作った。

1時限 9時15分~10時45分
2時限 10時50分~12時20分
3時限 1時~2時30分
4時限 2時40分~4時10分
4.5時限 2時40分~4時55分

次に、科目選択制の導入であるが、これは、62年度からカリキュラムが改められた際に導入された。
5科に共通する改正点は、一般教育科目を自由選択制とし、岡崎学舎3科で科の枠を越えて選択ができるようにし
た、外国語はフランス語重視から英語重視に変えた、ワープロ・パソコン教育をさらに深化するようにした、などの点である。科別では、次のように改正された。

服飾科 デザインコースは、「服飾」に適したデザインを深く学ぶようにした。
生活科 「栄養士法」の改訂に基づく改訂で、実験・実習は勿論、理論科目も少人数で行うようにした。
家政科 司書をモデルとした情報処理教育を中心に据えた。
幼児教育科 全人教育にも一層、意を注ぐことになった。
国際教養科 実務能力と英語力の養成を強化する方針を打ち出した。

カリキュラムのその後の大改訂は、平成5年度からの実施を目指して、現在、検討中であるが、幼児教育科のカリキュラムだけは、「保母養成法」に基づいて、4年度から、改訂実施されることになった。
ところで、入試は、大きく、推薦入試と一般(いわゆる筆記)入試とに分けられ、推薦入試は、指定推薦(平成3年度より)と一般推薦(基礎学力テスト)があるが、このうち、一般推薦は、かつては1月に行われていたが、12月になり、11月になり、現在は11月中旬になっている。一般入試も、2月初めであったものが、現在は1月下旬に行われている。

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5科の最近の動向
最近10年間の愛知学泉女子短期大学の5科の動向をエピソードで綴れば、以下のようである。

・服飾科の被服構成・デザインの2つのコースは、それぞれの成果をファッションショーと学外展で公開している。61年11月9日、大学祭での恒例のショーに引き続き、名鉄デパートでのフロアーショーに出演した。

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・生活科2年栄養コースでは、61年4月22日、定光寺自然休養村で行われた植樹祭に参加した。岡崎営林署の緑化行事として行われたもので、環境問題にも理解を持つ栄養士の養成を考えている生活科の方針で、3月の学外講師による森林教室に続き、行事として参加したものである。
・食物コースでは、同じ頃、平城宮跡を見学し奈良の茶がゆ、柿の葉ずしの試食旅行を行った。なお食物コースは63年度で廃止となった。
・家政科では、教員、学生双方の、授業のあり方に対する反省や研修旅行のマンネリ化脱皮という意図から、平成2年度後期より、新たに「家政科セミナー」を始めた。対象は1年生で、履修期間は、2年度前期までの1年間。教科書や教室といった形式を脱して、演劇の鑑賞、見学、学外研修が行われるようになった。このセミナーで、自主的、問題発見的な姿勢の育成を目指している。

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・幼児教育科では、54年に始まり、現在も継続している(平成4年、第14回)「こどもまつり」が特筆されるべきである。この他、平成元年9月に第13回、2年2月に第14回が催された「学内コンサート」、同年2月に開催された第10回「合唱コンクール」もある。これら学生が主体となったものの他には、音楽系教員の「さわやかコンサート」が2年5月、安城市中央公民館(第1回)で、また美術系教員の「教員美泉展」が3年5月(第1回)に催された。
・国際教養科1年の中野朋美は、3年12月22日~24日、帯広市で開かれた「日本学生氷上競技選手権大会」のフィギュア(2部)部門で、5位に入賞した。メンバー不足から数年間休部中のスケート部を復活させての快挙であった。中野選手は、4年1月末の山形での冬期国体のフィギュアスケートにも、愛知県代表の選手として参加した。
(この項の上欄小見出しは、平成4年度版短大要覧の各科紹介に用いられたコピーである。)

大きな改革の波のなかで
平成3年7月1日に施行された新しい「短大設置基準」に盛り込まれた内容の革新性は、明治初年の学校令公布、第二次大戦後の学制改革に次ぐ「第三の改革」と言われるほど、大きなものであった。
その要点は3つある。
第一点は、大綱化、自由化である。従来あった一般教育と専門教育の枠が取り払われ、一定の範囲内で1単位分の授業時間が自由に決定できる、他の大学・専修学校・外国の大学などで取得した単位を認定出来る、短大卒業生は「準学士」の称号を得る、などの改革を含み、以前の量的規制から解き放って質的充実を図り、個性的な発展をさせることを狙ったものである。
この点については、本学では、平成5年度からの実施を目指して、改組と同程度の効果を期待できるほどの抜本的改訂を図るべく、鋭意検討を進めている段階である。
第二点は、自由化と組み合わされた盾のもうひとつの面である、自己点検、自己評価である。独自の教育体系を築くことが可能な反面で、自己の大学内で、研究、教育、設備などを特定の組織によつて評価点検し、適宜公表する必要があるとされている。特に、学科増や改組転換などに際しては、その成果が重視される。本学では、平成4年度から、自己点検・評価のための機関を作り、(既存の組織を活用して)、具体的作業に入る。既に、教育面の自己点検のひとつとして重要な、「シラバス(授業計画)」(原型は『キャンパスライフ』に盛り込まれている)の全教員による執筆準備が開始されている。
第三点は、大学の社会への公開である。公開講座や社会人入学など、開放にはいろいろな形がある。
本学では、既に昭和51年から始められ、平成4年度に第17回が予定されている「幼児教育公開講座」と、63年に開講し、既に4回の実績を持つ国際教養科の「日本語ワープロ公開講座」を持っている。従来の聴講生制度も、4年4月1日改訂の新しい学則により、「科目等履修生」となり、単位認定も行なわれるようになった。公開講座についても、さらに検討の余地があるし、図書館や体育館などの開放も、短期大学将来構想に盛り込まれており、体制が整い次第、実施に移されることになるであろう。
大学は冬の時代を迎えたと言われる。地方の女子の短大は特に厳しく、淘汰の時代に入っている。伝統の長さはこの際、ほとんど、役に立たないだろう。
しかし本学では、4年度の着工を目指し計画されている岡崎学舎の短期大学用校舎、「設置基準」に基づき建学の精神、立学の理想に根ざした革新的カリキュラム、既存、新設の組織機関の活性化など今、目の前にあるもので、期待を寄せるべき要素は多い。

短期大学の全教職員うって一丸となり、何としてもこの危機を乗り越え、創立者が理想とした学園の実現へ向けて進んでいかなくてはならない。
こうした期待のなかで、本学の教育施設環境は大きな前進をみている。

・57年11月には、岡崎学舎に管理棟が竣工した。1階は、展示ホール、応接室3室、事務分室。2階は、学長室、応接室、会議室があり、展示ホール部分は吹き抜け。3階には、120名収容の大会議室、資料室。延べ床面積は880平方メートルである。
・58年4月には、1階展示ホールに、学園創立者寺部だい、三蔵両先生の胸像が完成し、除幕式が行われた。
・59年3月には、現在の若林学舎(当時は豊田学舎と呼んだ)に、小規模ながら、体育室、実習室、相談室、クラブ室などを備えた体育館が完成した。
・同年9月には、岡崎学舎に、大体育館が出来た。3階建てで、延べ床面積は4,340平方メートルである。隣接して学生食堂も完成した。
・平成元年2月には、桜井学舎に多目的ホールが建てられた。総床面積784平方メートル。1階の多目的教室では、リトミックなどの授業が可能である。2階ホールにはミキサi室があり、人形劇上演にも適している。
・2年6月には、岡崎学舎の東棟北側に、2階建て4教室のセミナー棟が完成した。
・3年6月には、岡崎学舎の南棟の西側に、普通中教室2つと2研究室の2階建て校舎が建てられた。

今後の課題のひとつには、図書館機能の高度化もある。鋤柄欣宥司書長は、『愛知学泉大学広報』(平成3年6月発行)で、次のようにこの点を指摘している(「これからの大学図書館」)。

「ある大学へうかがった時、学生に図書館の場所をたずねたところ、知らないとの返事に驚かされたことがある。20世紀後半になって、図書館の機能はずいぶん様変わりしたが、最近、どこの大学でも、図書館の存在がすこし薄れてきているようだ。科学や技術の発展と学際的研究の進歩は、高度情報化時代をつくり、従来のような図書館活動では、とても利用者のニーズには応えることが出来なくなった。常に新しい資料、情報の収集と提供、図書以外のAudio-Visual資料の導入が求められ、利用者の要求の多様化により、1館ではとても需要に応じきれず、学内の相互協力はもとより、他大学、他機関との相互協力が必要になってきている。その検索システムとして、オンラインやCD-ROMなどが有効に利用されだしている。各館がコンピュータを導入し、ネットワークが構成され、全国の情報が居ながらにして入手出来、必要な資料がファックスを通じて手元に送られて来る時代は、すぐそこまで来ている。この時代の波に乗り、図書館を充実してこそ、教職員、学生が信頼して研究、学習の出来る場となる。昔、図書館は大学の臍といわれた時もあったが、いまは、大学の心臓であり、情報センターである。新しい活力ある情報を、学内に流さなければなるまい。」

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本学では、ひところは、教授会が開かれる度ごとに、退学者が議題になる、といった具合に、退学者がかなり多かった。しかし、ここ3、4年は、大変、少なくなった。
就職実績では、ここ数年、どの科も、100%の好成績を収めており、伝統の専門職域への就職率も、各科とも大変高くなっている。ちなみに、3年度卒業生では、栄養士約50%、幼稚園教諭、保母約75%である。求職の傾向は、かつては初任給の高さ、次いで企業名、そして現在では休暇が十分とれるところ、となっている。
愛知学泉大学は、62年4月に経営学科を持つ経営学部を出発させ、2学部時代に入り、同時に家政学部は男女共学に踏み切った。両学部の学科増などを含む将来構想とそれに関わる対文部省の問題、短大の将来構想の問題などがあり、岡崎学舎で、41年家政学部の創設以来、あらゆる面で共存関係を保ってきた短期大学と家政学部は、運営面で徐々に分離する方向に動きだした。役職者が短大と家政学部とで別々に決められ、教授会をはじめとして様々な会議が別に催されるようになったのは、平成2年度からであった。
3年度末には、成立したばかりの「短期大学学長選出規定」に基づいて学長選出が行われ(教職員から推薦された人物を1ないし複数名、推薦委員会が理事会へ上申し、理事会で決する)、寺部清毅現学長が再選出された。

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最近2年間(平成2・3年度)の主な就職先
●事務職(秘書)=トヨタ自動車/日本電装/トヨタ車体/アイシン精機/アイシン・エイ・ダブリュ/豊田自動織機/INAX/トヨキン/三菱自動車/スズキ/住友重機/三菱重工業/大同特殊鋼/矢崎総業/中央発条/ブラザー工業/ソニー/富士通/リコー/レナウン/中部電力/日本石油/東海・愛知・三重・静岡・名古屋銀行/日本生命・東京海上火災保険/野村・大和・日興・勧角・国際際・ユニバーサル証券/住友・矢作・小原建設/豊田通商/三越/松坂屋/名鉄/丸栄/豊田そごう/ダイエー/日本航空/名鉄運輸/JTB/近畿日本ツーリスト/名古屋東急ホテル/東海テレビ/TBS/中京テレビ ほか市町村役場、農協、医療機関等の事務職
●デザイナー=ユニチカ/猪村工業/豊田紡繊/装飾織物/笹徳印刷工業/アート企画/クイックス
●ファッションアドバイザー=三越/名鉄百貨店/松坂屋/ユニー/ワコール/出雲殿/ベルモード/オリンピック
●栄養士=名古屋魚国/メイキュー/富士栄食/日本給食指導協会/王水堂 ほか医療機関、学校給食、産業給食等の栄養士
●研究助手=キューピー/ヤマサちくわ/日本ペイント/ポッカコーポレーション/七福醸造/中日文化センター ほか大学の研究助手
●幼稚園・保育園・福祉施設=東三河・西三河を中心とする市町村立および私立の幼稚園・保育園・福祉施設など。

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