岡崎げんき館と子ども育成事業
この間、大学や短期大学は社会との接点を模索する動きの中で、教育の一環として産学連携や地域貢献に資する主体的な活動に力を入れるようになった。
平成20年(2008)3月、岡崎市若宮町2丁目に市民が健やかに集い、賑わいを創出する核としての複合施設「岡崎げんき館」がオープンした。これは岡崎市が民間資金等を活用して民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねるPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)手法を初めて取り入れた施設である。また、その建設から開設後の管理・運営までを1元的に担う特別目的会社(SPC)の「岡崎げんき館マネジメント株式会社」が設立され、本学園も構成企業等として参画することとなった。
本学園は、「岡崎げんき館」が担う「健康づくりゾーン」・「保健衛生ゾーン」・「市民交流ゾーン」・「子ども育成ゾーン」などのサービス機能の内で、株式会社タスク・フォースと共に「子ども育成ゾーン」を運営して子育て家庭に必要な利便性と信頼性の高いさまざまなサービスを提供することとなった。すなわち、一時託児・病後期託児・育児相談などを株式会社タスク・フォースが行ない、各種講座や親子を対象にした遊びプログラムは、幼児教育学科が主導的な役割を担った。この他、親子を対象に講座として開催し、教員の研究成果発表の場として活用されたり2年生の学生はゼミ担当教員と共に遊びプログラム「学泉短大のお姉さんとあそぼう」として親子に提供したりしている。また、幼児教育学科が毎年7月に35年以上行ってきたリカレント教育の一環である保育者を対象にした「幼児教育保育講座」も同館で装いを新たにして継続実施することとなった。このほか、館が主催する「げんき館まつり」にも、音楽担当教員によって子ども向けのコンサートが開催され、毎回好評を得ている。現在では、愛知学泉大学家政学部と愛知学泉短期大学の各専攻・学科の全教員が専門の講座を担当し、また、家政学部こどもの生活専攻の学生も親子の遊びプログラムの実施に参加している。「岡崎げんき館」活動は、学生にとっては子どもだけでなく保護者ともかかわる貴重な経験の場として有効に機能している。
食物栄養学科の産学連携事業
食物栄養学科の産学連携事業は、平成20年4月から開始された。すなわち、本学科は安城市に本社を置くいずみ製菓株式会社と連携した事業を地域貢献型の教育事業として位置づけ、通常授業の枠の中で扱うこととした。また学生には教室を超えて現場で実践的な学びの場を提供することによって、「社会人基礎力」の育成をめざすものでもあり、本学科では前例のないものであった。双方で協議を重ね、「半生麺について添加物表示のいらない方法によるカビ発生防止に関する基礎研究」、「半生麺を活かしたヘルシーメニューの開発」、「レストランメニューの栄養成分表示に関する研究」の3つのテーマで学生を中心に、また双方が連携して取り組むことで合意した。これを受け、平成20年7月16日、本学において寺部曉理事長と沓名令亨いずみ製菓株式会社代表取締役社長により本産学連携事業に係る協定書に調印がなされた。具体的には、同年9月から食物栄養学科の1年生と教員を3つの班に分け、順次いずみ庵本店および同工場を訪問して工場内における落下菌および附着菌の採取、半生麺を活かしたアイデアメニューの開発、栄養成分表示に向けた栄養分析など、調査研究活動を実施した。これらの活動成果は、平成21年(2009)7月に本学で報告会が開催され、3つのテーマに沿った活動状況や「社会人基礎力」の行動特性の中の主体性・創造力・発信力などの能力要素の達成度に言及して学生が成果を発表した。また、いずみ製菓株式会社へは「栄養成分表示に向けた分析結果」および「カビ発生防止に関する報告書」が提出された。平成22年(2010)7月には、夏バテを解消することを狙いとして開発した「美豚野菜そうめん」の試食会並びに新聞記者発表がいずみ庵本店で関係を交えて行われ、同時にメニュー化されて夏季限定で店舗販売されることとなった。さらに、平成23年(2011)からはクリスマスなどの行事向きデザートや若い世代を対象としたヘルシーメニューの開発に着手するなど、この取り組みは地域貢献型の産学連携事業として成果をあげている。