第1節 概要

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学園の管理運営
明治45年(1912)寺部三蔵・だい夫妻により創設された学校法人安城学園は平成24年度(2012)学園創立100周年を迎える。本学園の経営は、創立者から寺部清毅理事長そして寺部曉理事長へと着実に受け継がれた。100年という歳月のなかで、時代と社会は激しく変動した。本学園は、創立者の教育信条「誰でも無限の可能性を持っている」を堅実に受け継ぎ、常に教育の原点を見据え、建学の理念・建学の精神に基づいた教育を展開し、地域に・社会に貢献できる人材の育成に取り組んできた。

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寺部清毅理事長から寺部曉理事長に受け継がれた平成7年(1995)から今日までの18年間、私学を取り巻く環境は厳しく変動し、18歳人口は減少傾向を辿った。また、大学・短期大学への進学率については、今から約10年前(平成15年)は41.6パーセントであり、平成19年(2007)には50パーセントを超え51.2パーセントとなった。その後は微増の状態でほぼ横ばいを辿り、平成24年は53.6パーセントと半分を超える状況となった。大学・短期大学への入学者数については、平成21年(2009)と22年(2010)は少し減少したが、ここ10年間の推移はほぼ横ばいの状態である。平成24年は大学・短期大学あわせて約66万9,500人であり、ここ10年間で約6万人の減少となっている(平成24年度学校基本調査より)。このような高等教育環境の変化する社会において、本学園は私学であるからこそその独自性を特化させ、本学園にしかできない教育を自信と誇りを持って継続させ、常に西三河という地域性を重要視し、本学園の根拠地であるという布陣を大切にして教育を展開してきた。
時代の変化に対応すべく、大学・短期大学における改組転換、高等学校における教育課程の再検討・見直し、幼稚園教育においては、常に地域との連携を視野に入れ、本学園の設置する幼稚園としての強みを教育内容に反映した保育を実施してきた。
また、女性の地位の向上を立学の主旨として創設された本学園は、時代の変化を先取りし、昭和62年(1987)大学に経営学部を開設するとともに、家政学部を男女共学化し、男子の家庭科教員の養成に踏み切った。高等学校においては、平成11年度(1999)男女共学化した。短期大学については平成13年度(2001)、幼児教育学科を除く全学科を男女共学化した。これで本学園は、短期大学の幼児教育学科を除き、全ての教育機関において男女共学化し、新しいスタートを踏み出し、今日に至っている。
さて、この間学園全体として政策的に取り組んできたのは、高大・高短教育連携である。
大学、短期大学、及び2つの高等学校を擁する本学園としては、社会的に18歳人口の減少期に本学園の系列校間で高大・高短教育連携をすることにより、運命共同体として学生確保につなげていくものである。これは今後継続して行っていかなければならない大切な政策である。
幼稚園については、本学園の設置する幼稚園として共通の教育理念に基づき、それぞれの幼稚園の特色を保育の中に取り組んでいる現状である。地域、とくに立地している安城市との連携活動、保護者・系列高校との連携活動など様々なプログラムを積極的に展開している。
施設面では、この10年間、各設置校において新しい校舎の建築、建物の改修工事及び施設・設備の修理・修繕などハード面において大々的な整備を行った。
具体的には第3節の第1項「学園の財政について」、第2節「教育環境等の整備について」に詳細に記載しているのでここでは割愛する。
安城学園創立100周年を機にさらに飛躍的に教育活動を展開するに際して、従前の教育活動を自己点検・評価する必要がある。創立者の教育信条を正しく伝承した教育を展開できているか。日々の教育活動は、建学の理念・建学の精神に基づいたものであるか。さらに、従来の基礎学力・専門知識・技術に加えて社会人基礎力を取り入れた三位一体の教育を展開できているか。日々の業務を遂行する中で反省・改善を積極的に行い前進していくことが重要である。

学園の財政等
法人の財政について
本学園は建学の精神に基づいて、社会のニーズも踏まえて教育改革を実践し、平成13年には学園全体の学生数が約7,600名を数えたように、これまで順調に学生数を確保し経営基盤を確立してきた。中でも近年の本学園の教育改革を牽引してきたのは大学・短期大学であり、経営基盤の大きな柱でもあった。しかし、平成14年(2002)から平成24年にかけては大学・短期大学を取り巻く社会的環境が大きく変貌した10年間であった。日本の高等教育の大衆化を反映するように大学の学校数は国公私立全体で平成14年の686校に対して平成24年は783校と増加の一途を辿った。(文部科学省平成24年度学校基本調査より)そして、18歳人口の減少期を迎えて大学の入試選抜制度は多様化するとともに大学間の学生募集競争が激化した。また、国庫補助金は経常費一般補助金の定員未充足学部・学科に対する補助金減額が強化されるなど、競争的要素が高まった。本学園にとって、この10年間は教育事業の適正規模を再設計し、学園全体の学生・生徒・園児の在籍目標数を6,200名とし、法人財政の収支均衡を図ることとした。
短期大学では平成16年(2004)にこれまでの5学科体制から3学科に改組転換を行い、適正規模への移行を実施するとともに収支改善を果たした。また、大学では平成15年(2003)に大学豊田学舎の2学部(経営学部、コミュニティ政策学部)が定員未充足となりその後も定員充足率の回復を果たすことはなく、平成23年(2011)に学生募集を停止した。同年、大学豊田学舎は経営学部とコミュニティ政策学部を融合して現代マネジメント学部を開設し、適正規模への移行を図ることとした。一方、大学岡崎学舎の家政学部は平成20年(2008)にこれまでの1学科2専攻から1学科3専攻へ規模を拡大し、安定して定員を充足している。大学学部の適正規模はこの10年間で大きく変貌を遂げることとなった。
高等学校及び幼稚園のこの10年間については、ほぼ安定的に生徒・園児を確保し、帰属収入の安定を実現している。

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法人の財務情報の公開について
私立学校法の一部等を改正する法律が平成17年(2005)4月1日から施行され、学校法人は、毎会計年度終了後2月以内に財産目録、貸借対照表及び収支計算書のほか事業報告書を作成し、監事の作成する監査報告書とともに「事業報告書」として事務所に備え置き、在学者及びその他の利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないこととなった。このことにより本学園は平成16年から事業報告書等を法人本部に備え置き、閲覧に供する環境を整備した。そして、平成22年から財務情報の公開を積極的に推進することとし、法人の事業報告書等を本学園のホームページに公開している。また、平成22年6月の学校教育法施行規則の改正により、大学・短期大学において平成23年4月から教育情報の公表を行う必要のある項目が明確になった。このことにより、本学園では平成23年3月から愛知学泉大学及び愛知学泉短期大学の教育情報を公表することとした。

法人の財政健全化計画について
本学園は、これまでどの時代においても建学の精神に基づいた教育を具体的に実践することで100年の歴史を重ねてきた。時代は平成に移り、本学園を取り巻く環境も大きく変貌を遂げる中、本学園にとって教育改革と財政改革を同時に進めていくことが必要となった。平成16年には、建学の精神に基づいた教育を実現するため、そして、専任教職員の『雇用の確保』という観点から、今後、教職員一人当たりの学生・生徒・園児数を恒常的に維持していくための適正規模を再設計した。愛知学泉短期大学幼児教育学科の岡崎学舎への移転に伴う新校舎の整備、愛知学泉大学附属幼稚園及び愛知学泉大学附属桜井幼稚園の新園舎建設等の大規模事業を実施した。
平成22年、本学園は財政健全化スキームを策定した。期間は平成23年から平成27年(2015)までの5年間である。この計画では、帰属収入に占める消費支出の比率が90%以内の財政状態を「財政健全化」としている。具体的には、帰属収入の目標値を60億円以上とし、消費支出の目標値を54億円以下にすること、この2つの目標を実現することによって「財政健全化」が実現できるとした。ここで本学園の適正規模の指標となる学生・生徒・園児数は愛知学泉大学豊田学舎の改組転換の年次進行を踏まえ、平成25年(2013)に学園全体で6,200名を確保することを計画している。また、計画期間の最終年となる平成27年には専任教職員数340名を目標とした。この財政健全化スキームの確実な履行により、教職員一人当たりの学生・生徒・園児数を恒常的に20人に維持することが可能となり、建学の精神に基づいた教育を実現する経営基盤を構築し得るのである。

学園の教育・研究方針 ─無限の可能性に挑戦─
本学園は、創立者である寺部だい先生の教育信条『誰でも無限の可能性を持っている。そしてその潜在能力を可能性の限界まで開発する』に基づいて、「生きる意志と生きる力と生きる歓びに満ち溢れた」人材の育成を目指している。

変化が激しい現代社会では『変化に適応できる能力を身につける』ことが生き抜く必要条件であり、さらに「変化を生み出せる能力を身につける」ことが求められる。この2つの能力を身につけ、『生きる意志と生きる力と生きる歓びに満ち溢れた』人材の育成が、喫緊の教育課題であるとした。
また、3歳・15歳・18歳の各人口が減少して更なる少子化が進み、さらには学力低下、学習意欲の低下等、教育界には様々な課題が山積みしている。厳しい競争社会の中でそれぞれの私立学校も各自の教育を続けるために、建学の精神に基づいて特色ある教育をいかに打ち出せるのかが重要になってきた。

本学園では、15年程前から『私たちの仕事はまちづくりのためのひとづくり』をテーマに、地域に貢献できる人材の育成に力を注いできた。その際に重要なことは、社会とつながる生きた学びの場を設けることである。「安城七夕まつり」や矢作地区の「花のとう」への協力はその一つである。また平成18年度(2006)から始めた株式会社ココストアとの産学連携を始めとして、企業・行政・団体との産学・官学連携事業は、学生・生徒に生きた学びの場を提供してきた。
現代の教育には「基礎学力」「専門知識・技術」に加え、主体性やコミュニケーション力といった、社会で多様な人々と物事を成し遂げるために必要な行動特性を鍛える必要性が出てきた。時を同じくして経済産業省は「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として「社会人基礎力」を提唱した。そこで平成19年度には経済産業省から社会人基礎力育成・評価事業を受託し、先の産学連携事業をパイロットケースとして学生の社会人基礎力を育成する仕組みを作り始めた。本大学・短期大学では「シラバスへの記載」「自己評価・外部評価」「授業・活動記録シート」などと取り組みを拡大していった。

平成23年3月11日に発生した東日本大震災に対して、本学園でも多くの大学生、高校生、教職員が被災地に出かけ、ボランティア活動や演奏会・講演会等を実施してきた。また、それらの活動を通して多くの人々との交流も生まれ、東日本の人々の生きる逞しさやエネルギー、そして日本の発展に貢献してきたこの地域の役割の大きさにも気づいた。そこで本学園では「東日本から学ぶプロジェクト」を展開し、学生・生徒・園児の総合学習としてだけでなく、教職員も含めて全学的な生涯学習としての活動を展開していくこととした。さらに「東日本から学ぶプロジェクト」基金も立ち上げ、幅広い活動を行っている。

本学園は平成24年度に創立100周年を迎えた。そこで新しい100年に向けて『無限の可能性に挑戦』し、『社会人基礎力』と『PISA型学力』に注目し、従来の教育モデル『知(知育)・徳(徳育)・体(体育)』に対して『行動特性』を加えた新しい教育モデル「知・徳・体・行」の下で『教育にイノベーション!』を興こすこととした。

学園の創立記念事業
 創立90周年記念事業
本学園は、平成14年度に創立90周年を迎えた。記念式典・祝賀会等主要な記念行事は創立記念日である11月22日(金)に4部構成で開催した。第1部は安城市民会館において記念式典を挙行した。来賓・学園関係者等、総勢約1,800名が参加した。来賓として愛知県知事神田真秋氏・安城市長杉浦正行氏・岡崎市教育長藤井孝弘氏・豊田商工会議所会頭渡辺祥2氏からそれぞれ祝辞をいただいた。
第2部は安城学園高等学校の体育館に会場を移して記念祝賀会を催した。ここでは北斗の会のエネルギッシュな踊りが披露され、歓談の場を盛り上げた。
第3部は会場を安城市民会館に戻して、当時川崎重工の技術者である宇賀克夫氏による記念講演会を行った。演題は「プロジェクトX 挑戦者たち ドーバー海峡に鉄道を通した男たち」である。学園関係者及び一般の方々にも公開した。100人もの技術者のリーダーとして英仏をつなぐ夢のトンネルを成し遂げたドラマ等が熱く語られた。
記念行事の最後は、ベートーヴェン交響曲第9番の特別演奏会で締めくくった。この第9の演奏は、大学オーケストラ部によるもので、一般市民と教職員有志の総勢245名で結成された合唱団を交えて演奏された。創立記念日は終日、記念行事を盛大に行い、地域の人々にも楽しんでいただいた。
この他、創立90周年を記念して様々な事業・行事を行った。

・大学オーケストラによる東南アジア演奏旅行帰国記念コンサート
開催日 5月24日(土)
会場 豊田市コンサートホール

・大学オーケストラ部と安城学園高等学校吹奏楽部のジョイントコンサート
開催日 11月23日(祝)
会場 名古屋国際会議場センチュリーホール

・大学オーケストラのクリスマスコンサート・ニューイヤーコンサート
他、各設置校の記念事業・行事は次のとおりである。
愛知学泉大学(岡崎学舎)・愛知学泉短期大学

・記念講演会「トップスポーツの光と影」
開催日 11月19日(土)
2人のゲスト講師による講演会を開催した。
講師 元プロ野球選手の与田剛氏
演題「自分を信じ逆境を乗り越える」
講師 管理栄養士の金子ひろみ氏
演題「女子マラソンオリンピック選手のサポートをして」

・生活文化フォーラム、家庭科教員・栄養士支援セミナー
開催日 6月22日(土)
テーマ「食で築く健康生活」

・第27回幼児教育公開講座、第24回こどもまつり
愛知学泉大学(豊田学舎)

・コミュニティ政策学会・研究フォーラム設立大会においてシンポジウム、3市長との鼎談を実施

・豊田市中心市街地まちづくりシンポジウム、寺部だい回顧展、第3回地域活性化フォーラム、豊田市中心商店街活性化討論会

安城学園高等学校
・吹奏楽部・弦楽部の定期演奏会、演劇部の公演「君は今なぜここに」
・学園祭─安城サルビア秋祭り

岡崎城西高等学校
・和太鼓部定期演奏会
・日韓交流ハンドボール試合、演劇鑑賞会

3幼稚園
・劇団「飛行船」による合同演劇鑑賞会
開催日 平成15年3月1日(土)
会場 安城市民会館

・思い出集「まごころ」を創立記念日に刊行

平成12年度(2000)から始まった「ネパールに学校を創る」プロジェクトは、安城学園高等学校LENP・ANJO及び岡崎城西高等学校の国際協力部の生徒たちを中心に募金活動など積極的に進められた。平成14年には90周年記念事業として、現地に2つの小学校の建設が完成した。この活動は10年後の現在も継続して行われている。

創立95周年記念事業
本学園は、平成19年度に創立95周年を迎えた。
記念式典を創立記念日にあたる11月22日(木)安城市民会館で挙行した。
来賓・私学関係者を招待し、学内教職員を中心に創立95周年を祝福した。来賓を代表して渡辺祥2豊田商工会議所会頭から祝辞をいただき、式典は厳粛な雰囲気の中で行われた。
翌23日(祝)には豊田市コンサートホールにおいて、25日(日)には安城市民会館においてそれぞれ記念コンサートを開催した。大学オーケストラによる演奏は秋の一日観客に音楽をプレゼントし、好評を得た。
各設置校における主な記念行事は、次のとおりである。

・大学オーケストラと安城学園高等学校とのジョイントコンサート
開催日 10月6日(土)
会場 安城市民会館

・安城学園高等学校吹奏楽部とデンマークコリング音楽学校とのジョイントコンサート
開催日 10月19日(金)
会場 安城市民会館

・日韓親善バスケットボール試合
開催日 8月20日(火)
会場 岡崎城西高等学校体育館
岡崎城西高等学校、安城学園高等学校の両校により韓国・東亜高校を招いて行われた。

・幼稚園では3園合同で演劇鑑賞会を行った。

また、各設置校における主な記念事業は、次のとおりである。
・岡崎学舎新5号館・音楽棟・新グランドの竣工
・安城学園高等学校第2グランド竣工記念植樹祭
・株式会社ココストアとの産学連携事業

平成18年から始まったこの事業も平成19年度は、創立95周年事業の一つとしてさらに積極的に展開した。学生による「食の意識・食の実態」アンケート調査や「失われつつある愛知の伝統的食文化」の聞き取り調査とその報告会、弁当共同開発、食育研究、社会人基礎力育成のための産学連携プログラム開発など、多岐にわたって様々な活動を展開した。
また、経済産業省産業人材開発室長の新川達也氏、盛田エンタープライズ株式会社総務部長の羽柴善典氏をゲストに招いて、座談会「『社会人基礎力』を活用して逞しく生きる人間を育成」を開催した。

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