第6節 就職委員会の変遷と今後の課題

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(1)就職委員会の活動目標
就職とは、学生にとっては4年間の勉学生活の集大成で、自らの能力・適性を生かす職業を選択し、自己実現を図ることである。学校にとっても教育の総仕上げのときでもある。委員会は「建学の精神」に基づいたこれまでの人材教育や教育指導の成果を生かすべく、学生の自己実現を側面的にかつ的確に支援することを基本目標としている。特に、変化の激しい就職環境に対応するため、環境への理解や環境との調和をどう図るかなどに活動の重点を置く必要がある。その活動目標は、おおむね次の3項目に分けることができる。

1、知性的側面
21世紀の就職環境がどう変わるかを予測することは難しいが、「知識経済社会」が進展することは間違いない。そうした社会の企業人にとって必要な知識とは何か、少なくとも入社時には修得しておくべき基礎的知識レベルの獲得に協力することは、委員会の基本的役割である。

2、感性的側面
就職環境の変化のなかで特にとらえにくいのは、感性的局面での世の中の流れである。新しい時代感覚、世代的感性を身に付けることは社会人としての第一歩であるが、特に就職環境としての地域社会との間に違和感がないよう指導する必要がある。その際、学生と学校教員との年代の差を克服することは無論、学校サイドの責任である。

3、個性的側面
これからの就職のキー・エレメントのひとつは、自己の個性が生かされる条件にあるかどうかである。学生にとって個性とは、これまで獲得してきたものを将来どのように生かしていくかの指針となるもので、個人にとっての「方向性」を示唆するガイドイメージでもある。したがって企業サイドの個性の評価は方向性の評価でもあり、委員会では、就職指導の基本的課題として、この点を強調している。

(2)委員会としてのアプローチ
就職委員会としては、前述したような転換期独自の厳しい就職環境への対応もさることながら、今後の知識経済社会としての就職環境への対応も考えておく必要がある。少なくとも当面の就職対象である知識経済社会を構成する企業に対し、委員会としてのアプローチは次の4項目である。

1、知識主導の企業の仕組みを知ること
企業システムには目に見える部分と見えない部分とがあり、最近の経営では後者のウエイトが高まりつつある。意思決定などの精神領域、組織における人間関係、あるいは企業文化など、人間性を生かす知性や感性の強化に主観が置かれている。企業におけるこうした知的戦力発揮の仕組みを知り、学生にその基礎的内容を徹底することが第一の課題である。

2、企業人としての知識のあり方を知ること
企業知能にはコンピュータ知能(機械知)と人間的知能(暗黙知)とがあり、2つの知能のバランスを求めるのが最近の企業知能のあり方になっている。この点にも注目していきたい。

3、自己の個性の生かし方を考えること
知的人材のあり方と自己の個性の生かし方を就職の条件としなければならない。

4、就職機会にとって欠かせない資格所有
資格は学生にとっては自己アピールの条件であるが、企業サイドにとっては、その学生がこれまで取得してきた知識やこれから進みたい目標(方向性)のバロメーターとしての評価手段となる。資格の量よりも質の方が今後は有意と考える。

(3)委員会活動と就職の現状
経営学部
経営学部に就職委員会が配置されたのは、学部設立後の平成元(1989)年であり、2年間を1タイムスパンとして教員を中心に運営されている。
経営学部では、「きめ細かな学生支援」をモットーに3年次から就職支援ガイダンスを開催している。ガイダンスの主たる内容は、次に示すとおりである。

1、就職に対する事前知識の修得
・就職観の育成
・自己のキャリアの育成
・経営環境の把握と就職戦線の厳しさの理解
・業種や職種の理解
・企業の採用に対する考え方の把握など

2、就職活動上の基本の修得
・就職に対する基本的マナーの修得
・履歴書・エントリーシートの書き方の修得
・企業訪問の仕方、電話のかけ方の修得
・模擬面接、性格適性検査、職業適性検査の実施など

3、対策講座の実施
・一般常識試験対策講座
・公務員試験対策講座(コミュニティ政策学部との連携)

4、資格講座の実施
・会計講座
・販売士3級受験講座(13年度より)
・カラーコーディネーター受験講座(13年度より)

5、就職ガイダンス前段としての特別講義の実施
・特講Ⅱ「就職対策講座」(選択2単位)の実施

●就職の現状
平成11年度から13年度における経営学部の就職率の現状、および業種別就職の現状を表に示す。

コミュニティ政策学部
平成10年の学部設立と同時に就職委員会もスタートした。1期生の3年次から本格的な就職支援活動を展開してきたが、主な内容は経営学部のガイダンスとほぼ同じである。それらの活動のなかで、コミュニティ政策学部独自のもの、または経営学部とともに初めて実施した主な活動を紹介すると次のとおりである。

1、公務員志望学生に対する支援活動
・「公務員の会」の立ち上げ
・「公務員志望学生のための就職説明会」
岡崎市職員2名、県警豊田警察署警察官2名、豊田市消防本部消防士1名など、講師は全員就職後数年の現役の若手公務員であり、講演内容は非情に具体的で有意義なものであった。

・「公務員・企業試験合格講座」の実施
・「公務員受験希望学生のための特別勉強会」
豊田市などの地方公務員、警察官、消防士、国家Ⅲ種(郵政)などのグループに分かれて、各グループのリーダーを中心に勉強会を重ねた。そのおかげもあって、愛知県警、岡崎市(消防職)、知立市(消防職)、西尾市(消防職)などの地方公務員の栄冠を獲得できた学生もいる。

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2、「企業・官公庁・団体と大学の懇談会」
本学部の1期生が訪問する企業その他の就職先に本学部卒業(見込)生の特長、魅力などを説明し、認識してもらうことが必要である。そこで平成12年11月24日(金)、企業、官公庁、NPOなどの諸団体から約100名を招き、愛知学泉大学コミュニティ政策学部「企業・官公庁・団体様と大学の懇談会」をマリオットアソシアホテルで開催した。
学長、学部長をはじめ教職員はすべて黒子に徹し、学生が何を学び、どのような力を身に付けたかを、学生自身が自らパソコンのパワー・ポイントで制作したコンテンツを駆使しながら、自分たちの言葉で自分たちの口で説明した。それまでは「コミュニティ政策学部とは何を学ぶ学部なのか、さっぱりわからない」と言われていた企業などからも、「学生諸君の説明でよくわかりましたよ」と好評であった。当日、中日新聞、朝日新聞、読売新聞から取材を受け、翌日の朝刊には「学生、自分を売り出せ」などの見出しで各紙にパブリシティ記事が掲載された。

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3、企業訪問体制
前述の「大学との懇談会」に出席した約100社の企業などを対象に、原則として全教員で手分けして企業訪問を実施した。
実際に訪問した各企業の反応は好意的で、新卒募集に関する貴重な情報なども得ることができた。

4、「内定を獲得するコツ」(4年生と3年生の就職懇談会)
4年生の5名が、いろいろな失敗を重ねながらやっと内定を獲得した生々しい体験談を語り、出席した3年生全員が真剣に聞き入っていた。特に後半は、業種の異なる5名を別々に囲んで、各グループごとに懇談を重ねたが、親密感あふれる実に和やかな雰囲気であった。

5、「就職活動におけるマナー・話し方講座」(就職ガイダンス)
講師の小6氏はNHKアナウンサーのご出身で、IBMや富士通など大企業の面接官(採用人事担当)対象の研修会の講師をされており、秀逸の講話であった。

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6、同窓会主催「OB・OGによる就職相談会」
本学の卒業生が、後輩の現役学生のためにわざわざ豊田学舎まで来てくれて、自社の紹介や就職相談にのってくれた。誕生して間もない本学部にとって、OB・OGと現役学生との縦の連携は今後の大切な課題である。

7、「未内定者に対するフォローアップ・ガイダンス」
周りの学生が内定を獲得していくなか、就職未内定者(4年生)は焦り、不安、諦めなどの気持ちにとらわれがちである。そのような状況下で開催されたガイダンスは大変効果的であった。その時点でまだ採用計画のある企業を電話などによって緊急調査し、約270社の企業名リストを作成して未内定者に配布した。

8、「4年生と就職関係教職員との懇談会」
卒業式直前の3月6日に4年生10名に集まってもらい、これまで4年間にわたって実施してきた各種の就職ガイダンスについて、良い点、悪い点、改善要望などを忌憚なく話してもらった。今後も、当事者である学生の意見をよく聞いて、効果があり、しかも学生に喜ばれる就職支援活動を展開していく努力がよりいっそう必要であると思われる。

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●就職の現状
1期生(平成13年度)の就職率および業種別就職の現状は先の表のとおりである。
また、1期生の就職先は数のうえでは一般の企業が多いが、コミュニティ政策学部らしい就職先は次のとおりである。
愛知県警、岡崎市(消防職)、知立市(消防職)、西尾市(消防職)などの地方公務員、社会福祉法人愛知玉葉会藤花荘、社会福祉法人、海部連福祉会虹の里八開、あいち中央農業協同組合、トヨタ生活協同組合、JAわかさ、知多信用金庫、阿南信用金庫など

家政学部
就職とは、学生が自らの学習成果と能力・適性を生かす職業を選択し、その自己実現を図ることである。そこで、家政学部就職指導委員会の活動目標は、学生の就職活動に際し、雇用市場の背景となる社会経済情勢、職種・業種の特性、企業研究・就職試験受験の方法などについて、就職指導行事や委員を通じて情報提供し、その自己実現を支援することである。

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●現状
景気動向は、この10年間で一時若干の回復傾向を示したが、総じて後退の傾向を示した。本学部に対する求人件数の推移も景気動向に影響され、平成7年度まで減少傾向を示し、平成8年度から9年度にかけて一度増加傾向を示したが、その後減少傾向を示した。

●家政学部の教職・栄養士資格制度
また、平成13年で男子学生の卒業が10周年を迎え、同様に男子家庭科教員の養成も10年を越えた。中学・高校家庭科の男女共修を経験してきた学生たちが大勢を占めてきたなかで、男子の家庭科教員の必要性も再認識されてきている。12年度前後より、男子家庭科教員についての問い合わせが増加してきた。少子化のため初年度よりの正式採用は難しいが、講師となって活躍し、教諭をめざす男子学生も増えてきた。
家庭科教員免許・栄養士資格については、左記のようになっている。

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栄養コース 栄養士免許(管理栄養士免許取得のための国家試験受験資格)
      高校・中学校家庭科教員一種免許(平成10年入学)
      高校家庭科教員一種免許(平成11年以降入学)
食品科学コース 高校・中学校家庭科教員一種免許
生活文化コース 高校・中学校家庭科教員一種免許
        博物館学芸員
        社会教育主事

平成14年より
管理栄養士専攻 栄養士免許(管理栄養士免許取得のための国家試験受験資格)
家政学専攻 高校・中学校家庭科教員一種免許
      博物館学芸員
      社会教育主事

(4)今後の課題
この10年間は、先の見えない景気と雇用体系の変化、更に就職活動の早期化など学生たちにとってさまざまな変化が押し寄せ、その対応に苦慮した時代であった。しかし、企業が求めている学生像に合致する者は、いつの時代も変わらず多くの内定を獲得し、自分のめざす企業へ入社を果たすことも事実である。
今後、学生たちの就職に関する目的意識、意欲を高めるためには4年間を通した取り組みが必要である。
今後の課題としてまず言えることは、就職それ自体がきわめて厳しい環境だということである。このことを前提として次の3つが課題となる。

1、本校の建学の精神に立ち返り、地域社会に根ざす「実学」を推進しつつ、その過程で就職機会を発見または創造する。
2、現在、IT革命の第2ラウンドが進行しつつあり、新しい情報文明の確立をめざして進んでいることは確かである。企業は人材革命として「感性革命」を志向しているようであるが、これを就職環境としてみると、人間としての感性を生かす就職機会の創造としてとらえることができる。感性革命に対応した学生の指導をする。
3、就職環境を選択する場合、ひとつの環境シナリオに固執せず、いくつかの複数の「就職シナリオ」を用意すべきであり、その学生のシナリオづくりに委員会は知恵を提供する。

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