(1)氷河時代の就職に挑戦
就職指導委員会の分離独立
短期大学は学校教育法第69条の2に「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することをおもな目的とする」と規定されている。
このように本来短期大学は、職業教育の一端を担っているものである。また、職業安定法第33条の2には「学校等の行う無料職業紹介事業」がある。これに基づき、平成8(1996)年3月までは学生部内の就職指導委員会が、学生の厚生福利の範疇で就職支援を行ってきた。
この10年間の日本の経済はバブル崩壊後の不況下にあり、雇用情勢は冷え込んでいる。また、近年は政府の施策であるIT革命のもとコンピュータが普及し、特に短大の学生の多くが希望する一般事務職などの仕事の内容にも変化を来した。求人の減少など雇用情勢に大きく影響を及ぼしただけでなく、コンピュータによる求人、就職情報の収集の多様化など、短大生を取り巻く就職環境は目まぐるしく変化している。一方、学生の就職に対する考え方も変化し、学生の就職事情に対応するための新たな組織づくりが必要となってきた。
このような状況下に呼応し、就職支援体制強化のために平成8年4月より、学生部から就職指導委員会が就職相談室と同時に分離独立した。
就職指導委員会の任務は、就職指導委員と就職課(10年度より就職相談室から名称変更)の職員が一体となり、就職支援の事業を企画・立案し、就職することの意義を理解させ、就職活動のノウハウなどを指導し、学生が希望する企業に一人でも多く内定させることにある。
就職指導委員会の到達目標は次のとおりである。
1、学生の希望企業の内定率の向上に努める。
2、就職活動開始時期の早期化に伴い、就職対策講座・就職ガイダンスを前倒しし、社会人レベルの適切な判断ができるよう各種のミニ講座を開講する。
3、定職を希望しない学生の増加を阻止する。
4、全教員による企業訪問を行う。
高い内定率を保つ就職支援のための各種講座
短大の就職支援には、就職ガイダンスなどを通して行う全体的な指導と、学生と個別に面談して指導する個別指導とがある。
全体的な指導は就職指導委員会が主催する就職対策講座、各科の就職指導委員が行う就職ガイダンス、就職課の就職相談員が行うミニ講座などで、個人指導は1年半にわたって、就職指導委員と就職課員が連携してマンツーマンの指導を行う。
具体的な講座内容は次のようになる。
「就職対策講座Ⅰ」は公務員の受験対策講座、「模擬試験(クレペリン検査、SPI模擬試験)」「模擬面接指導」の結果は、学内推薦の選考に利用している。
「就職対策講座Ⅱ・Ⅲ」のⅡは「企業展参加・会社訪問の心得、電話のかけ方、履歴書の書き方など」、Ⅲは「入社試験の心構え、面接対策、小論文の書き方など」を、就職指導委員か就職課の就職相談員が担当して行ってきた。
この他、一般企業の人事担当者を講師に招き「就職講演会」を行う。ここでは、就職状況や自己分析、企業研究の仕方、先輩の困ったことなどの体験談や資料請求、エントリーシートの書き方、自己PR、志望動機を書くためのアドバイス、OG訪問、会社説明会への事前チェック・留意点など就職活動にかかわる具体的な内容を紹介する。
一方、科の特殊性(専門性)を配慮しつつ、就職指導員が中心となり各科ごとの取り組みも行われている。内定した学生から受験の心構えなど身近な話を聞く「内定者による就職懇談会」、就職活動の体験談や就職後の勤務状況などを聞く「卒業生を招いての就職懇談会」などがある。いずれも、先輩の話を聞くことにより、学生の就職意欲を喚起するための講座である。
この他に、他大学では珍しい就職支援は、求人があれば該当する学生を呼び、面接指導や受験の意思確認など、きめ細やかな指導を就職指導委員が行う、というものである。
また、就職相談員は、就職課主催のミニ講座で就職情報の提供や個別の就職相談を受け持っている。このような就職支援は、就職指導委員と就職課の職員が夏期休暇期間中も10日間ほど出勤して、個人指導を行っている。
求人依頼と教員の企業訪問
求人票と企業向けパンフレットを、これまでの就職実績のある企業を中心に、3月に発送している。また、小企業(専門職と一般事務など)の追加募集の出る11月頃に、岡崎学舎独自で求人の有無を確認するための往復はがきを出し、求人発掘に努力している。
平成8年度から、他大学・短大では稀な全教員による企業訪問を、地域の企業への本科のPRを兼ねて求人増の目的で始めた。結果、訪問した教員に直接求人の電話がかかることもあり、成果を上げている。
この10年間の各科の就職状況
服飾科は科の専門性を生かしアパレル関係に、生活科は栄養士と医療事務関係が多く、家政科と国際教養科は一般事務や営業関係に就職した学生が多い。幼児教育科はほとんどが幼稚園教諭や保育士である。短大5科は昨今の就職超氷河期にもかかわらず毎年高い就職率を誇っている。このような成果を上げられるのも全教職員の努力の賜物である。