第1節 相次いだ周年行事

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生徒数急増期にあって新たな出発を期す
男子校の岡崎城西高等学校においては、昭和56年(1981)4月に、富田太先生が校長として就任した。長年にわたる県内公立高校長としての実績が高く評価され、3年間の安城学園高校の校長を務めた後、本校に赴任したのである。

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富田新校長は就任に当たり、建学の精神に基づくこれまでの城西教育の方針を継承し、「質実剛健」「己に克つ」「努力と勇気をもって困難に立ち向かう、剛毅闊達な人間育成」について、一層の努力を傾注する、と言われた。この教育方針のもとに、本校は、新たなスタートを切ったのである。
この頃は、生徒数急増期であった。57年度から63年度にかけて、本校の生徒数は、収容が危ぶまれるほどに増加した。59年には、生徒数は2,000名を超えた。以後、多少の増減はあったが、増加傾向が続き、平成3年度の生徒数は、2,254名、50学級となる。増加する生徒への教育条件を急遽整え、教員を手配し、また、教育環境を保障するために、音楽室、理科室、剣道場を普通教室に転用した。プレハブ校舎の急造など、対応に苦慮した。

創立20周年
このような情勢のなかで、本校は57年9月26日に創立20周年を迎えることになった。
岡崎城西高等学校は、昭和37年4月に安城学園女子短期大学附属高等学校岡崎城西分校として発足し、同年9月26日に岡崎市中園町川成(現在地)の地にて校舎の起工式を行ったのであった。そのため、創立記念日は9月26日である。
57年9月25日に、創立20周年記念式を挙行した。創立記念日の26日は、祝意を表して当日を休校日とし、前日を式典の日としたのである。記念式典は、体育館で行い、全校生徒、教職員約2,100名が参集した。

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富田太校長の式辞、寺部清毅理事長の挨拶に続き、校長補佐の安藤祐暁教諭が、創立以来の勤続教職員を代表して、城西高校の創立の由来とその歩みについて講演した。生徒と教職員が試行錯誤を繰り返しながら、心をひとつにして、学校づくりに励んだ無我夢中の20年の思い出である。誰もが話に聴きいった。
続いて、新しく制定された応援歌が披露された。
応援歌は、各運動クラブの隆盛はめざましいのに、各種大会で活躍する選手たちを励ます応援歌がないのは寂しい、ということから、創立20年を期し、作成されたものである。作詩は、生徒教職員からの公募によるものとした。その結果、本校の職員である武藤武夫教諭の作品が選ばれた。作曲は、愛知学泉大学の川瀬憲司先生に依頼した。式典当日、作曲者の紹介後、華やかで力強い吹奏楽部の伴奏に乗せて、合唱部の歌う本校初の応援歌が体育館に響き渡った。この応援歌はその後、地区大会、全国大会へと選手を送り出す壮行会で、応援部のリードの下に、全校生徒によって歌われるようになった。

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創立20周年記念事業として、記念誌『城西20年のあゆみ』も出版した。編集作業は56年9月から取りかかった。富田学校長と安藤教諭の立てた骨子に沿い、学校長、安藤、笹浦(校長補佐)、塚平、武藤の5名の編集委員が、分担執筆した。執筆中、よくぞここまで歩んできたという感慨、城西20年の歴史を過去に埋もれさせてはならぬという使命感が、絶えず心中に去来した。

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記念誌は、57年9月の創立記念日に上梓した。「発刊に寄せて」で、富田学校長は次のように述べている。
「20周年の意義は深い。『質実剛健』『己に克つ』『剛毅闊達』の建学の精神に基づき『城西教育』を築きあげた先輩教職員・生徒各位が、創業の苦労の中で、歯をくいしばって、学校づくりに精進した情熱と気力を、謙虚に学び、創業の初心に帰る機会としなくてはならない(中略)。また、創設期の様々な出来事を、古老から、生きた証言として記録に止め得る最後の大切な時である。この期を逸すれば、悔いを後世に残すこととなろう。20年を回顧すると、思い出は尽きることがない。今、その歩みを集録し、後に思い出のよすがとなることを願って本書を編集した」
初代校長岩城留吉先生は、記念誌の編纂に際し、ご高齢にもかかわらず、快くインタビューに応じてくださった。しかしその年の12月2日、ご他界の訃報に接した。先生は、初代校長として、溢れる情熱で、職員、生徒を叱咤激励し、本校の学校としての形態を整え、生活指導方式を確立された方である。校地の南西隅にあるメタセコイアは、先生が在職中に植樹されたものである。

施設、設備の拡充
57年は、岡崎城西高等学校の創立20周年の年であるとともに、安城学園の創立70周年の年でもあった。
その記念事業の一環としての施設設備の充実がある。

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57年8月23日、岡崎城西高等学校においては、中央棟(現・西棟)が完成した。これに関連して、2階建ての自動車置場も完成した。雨天時のトレーニング場として転用可能なものである。さらに汚水合併処理施設の設置、正門の移動拡張、中庭の造園などが行われた。こうして、校内の環境整備は完成し、面目を一新した。
更に特筆すべきは、第2運動場の完成である。岡崎市舳越町の平針街道沿いに位置し、広さは2万4,600平方メートルである。58年9月3日、午後2時、多くの来賓を招き、打ち上げ花火を合図に、竣工式を行った。午後3時からは、寺部理事長の始球式で、こけら落としを兼ね、享栄高校野球部を招き、本校野球部との招待試合が行われた。その時のボールは、陳列棚に残されている。第2運動場は、以後、野球部、サッカー部、ハンドボール部の専用練習場となった。それまでの運動部の練習場の手狭さが解消され、部員たちは大喜びであった。第2運動場は、体育の授業や校内球技大会にも利用され、ゆとりのある、のびのびとした教育環境が実現した。運動場周辺の植樹は、59年度の宇野PTA会長の時の役員寄贈によったものである。なお、正面玄関の「質実剛健」の扁額は、57年度の鬼頭PTA会長の時の役員寄贈による。

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同窓会設立20周年
岡崎城西高等学校の第1回卒業式は、40年2月27日であった。その前日の26日、南棟(当時)の4階集会室に、183名の卒業生全員が集まり、岡崎城西高校同窓会の発会式を行った。初代会長は、河村仁1氏であった。
その20年後の59年8月12日、岡崎城西高等学校同窓会設立20周年記念総会が、岡崎グランドホテルで行われた。
記念総会には、寺部清毅理事長ご夫妻、鈴木修前校長を迎え、本校からは富田学校長をはじめ全教職員が参加し、同窓会メンバーを含めて、300余名が参集した。
判治雅男氏(第6回卒業生・本校教諭)の司会、河村仁一同窓会会長の挨拶に続いて、永年勤続者への感謝状と記念品の贈呈が行われた。レセプションでは、在校生による校歌と応援歌が紹介された。皆、久し振りの再会で、かつての同級生や恩師との歓談は、時間一杯まで続けられた。創立以来、この時点での累積卒業生総数は、8,254名である。

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この同窓会から9か月後の60年4月19日、第3代校長であった鈴木修先生が逝去された。享年60歳である。思いがけない訃報に愕然とし、しばし言葉を失った。以下は、同窓会報第7号に掲載された安藤祐暁教諭による追悼文である。

「鈴木先生は、昭和23年、敗戦後まもなく、安城学園に奉職された。37年4月、岡崎城西高校が創立された時には数学を教え、40年からは、岩城留吉学校長の補佐として学校運営に苦労され、44年4月からの12年間は、学校長として、全身全霊を注いで、城西教育のために、尽力された。先生なくしては、今日の城西高校の発展はありえなかったであろう。鈴木先生の口癖は、『栄光の男子一生』であった。『希望と夢とあこがれを持て。前途は豊かで楽しく、幸多きものである』と。先生は、ともすればしらける生徒達に、情熱を込めて、呼びかけ続けられたのである。また、くだけた時には、こう歌われた。『男なら 男だったら 酒でも飲んで天下とるよな話でも 男ならやってみな』と。先生は、酒を好むロマンチストであった。そのロマンを実現するために、『気力、体力、学力をつけよ。その基礎づくりの時期が高校時代である。勉強にも練習にも、頑張ろう』と言われたのである。
意気に感じた生徒達は、サッカーが全国大会第3位になったのをはじめ、陸上は100米で全国優勝し、バスケットとともに、毎年のように全国大会に出場。ほとんどのクラブは、県大会で上位を占めるようになった。大学進学者数でも、西三河の公私立高校中、第5位となり、国公立大にも1年に10数名が合格するようになった。
鈴木校長は、当時としてはめずらしく、年式の古いクラウンに乗って通勤し、また家庭謹慎生徒の家庭訪問をされた。生徒達には、『君たちは、大きなエンジンを持った車と同じだ。だから強力なブレーキがないと止まれないぞ。しっかりしたブレーキ、他からの誘惑や怠け心に負けない、己に克つ心を持て。止まれる自信がなければ、思い切って走れないぞ』と、機会あるごとに呼びかけられた。その姿は、今も生徒たちの瞼の裏に、心の底に、焼き付いているのではなかろうか。」

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この年は訃報が続いた。11月16日には、筒井勝先生が亡くなられた。32歳の若さであった。53年4月から本校の数学の先生として、8年間教鞭をとられての突然の死である。悲しみに打ちひしがれたご家族の姿には、涙をさぞわれた。先生は長野県飯田市出身、静岡大学卒で、純朴な青年教師として、生徒たちに慕われた。葬儀は幸田町の妙徳寺で営まれ、全教職員が参列し、筒井先生の棺を見送った。

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