第2節 数字で見るこの10年

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私学の教員であれば、新入生説明会の日は1年で最も緊張を強いられる日となる。新入生の数は、その前年度までの本校の教育活動に対する生徒・父母・地域の方々の学校評価となる。また、入学者数は新入生・保護者の学校への期待値でもある。当然のことながら、そこには私学を取り巻く社会的な状況・私学助成・中学校卒業生数・公立高校の募集定員・公立高校入試制度などが大きく影響し、ときにそういった要因の一つが募集における決定打となることもある。

(1)この10年の募集状況

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この10年間の募集状況は、ひとことで言えば堅調であった。入学者数は、ほぼ500人以上を維持している。数値的に大きな変動もなく、一見安定した募集状況に見えるが、その年度ごとで様々な要因が数字に影響している。特に西三河地区の中3生の増減、それに伴う周辺地区の公立高校クラス数の変動は、毎年神経質にならざるを得ない状況にあった。受験者総数では、平成24年度(2012)(平成22年公立高校無償化)以降はやや減少し、現在は2,600人台となっている。全体の半数以上が岡崎地区出身の生徒であるが、岡崎市内中学校からの志願率は、平成20年度~26年度(2008~14)まで20パーセント後半が続き、平成27年度(2015)以降30パーセント台に上っている。また、募集の方法にも中学生の志向・実態に即した対応をせざるを得なかった。運動部を希望する女子生徒が増えたこともその一つである。女子の運動部の受け皿を広げる必要に迫られ、女子クラブ推薦枠の拡充も必至となった。だが、女子生徒の入学比率は、10年間平均35.6パーセントと各年度40パーセント台になることはなく、安定した数値を示している。また、特進Zコースにおいては、文武両道型のZⅠ・学業中心型のZⅡという募集を行っていたが、年々学業中心を希望する生徒は減少し、ZⅡ希望者だけでクラスを編成することは困難となった。平成25年度(2013)入学生よりZⅠと合体したクラスを編成せざるを得ない状況となり、令和2年度(2020)入試よりZⅠ・ZⅡの募集の区分を廃止し、Zコースを一本化した。

令和3年度(2021)入学生の推薦の内訳では、特進推薦の数が学習推薦を上回り、これまでになかった学習・特進コースのクラス数に逆転現象が起こった。特進コース希望者増の背景には、特進コースにおいても部活制限を一切設けていないことがあげられる。また、近年の特徴であるクラブ推薦生に成績上位者が増え、文武両道を極めたいという思いを強くする生徒の増加傾向がみられることも一因となっている。本校の環境なら高いレベルでの学習・クラブ活動の両立が目指せると期待して入学してくる生徒が一定層みられると判断している。本校の目指す文武両道の路線は、令和4年度(2022)より始まる本校の新カリキュラムにおいても同様に追求すべき方向であり、更に発展させていくべき内容でもある。運動部の活動だけにとらわれることなく、全てのクラブ活動を通して無限の可能性を求め人間的に大いに成長できる学びの場となっている。それは、どの進路選択を取ろうがコースに隔たりなく、誰もが等しく同じ教育活動を受けられる環境が本校にあるからである。しかし、他方で常に課題となることは、特に国公立進学を目指す生徒の学習時間の確保である。現行の共通テスト・個別試験を乗り切っていくためには、かなり詰めた学習をせざるを得ないというのが現状である。時間が掛けられなければ、当然、授業・学習の質的変化が余儀なくされる。ICT教育の充実、授業形態、家庭学習の在り方に変化が求められる。生徒・教師の個人の努力だけに依存してしまえば、学校としての組織的サポート態勢に課題を残すことになる。更に文武両道路線をこの先も追求できるかは、高校での部活動の在り方に影響を与える社会状況によっても変化する可能性があることは認識しておく必要がある。

(2)この10年の進路状況

この10年は本校が男女共学となり、進学先にも変化が出てきた時代である。女子大への進学者や地元大学への進学を希望する割合が多くなってきている。これは、本人やご家族の希望により、自宅からの通学を希望してのことである。

このころより大学入試難易度の変化が現れ始めてきた。少子化による大学側の生き残り戦略が始まってきたのである。総じて大学全体が入学者のレベルアップを図るために様々な変革を始めた時期となる。都心回帰時代となり、いくつかの大学が名古屋市内へ移転や校舎の新築を行った。また、学部の名称変更・新学部学科の新設・定員増を実施した大学も少なくない。特に看護学部の新設・学科の新設が、ここ10年余りで愛知県内だけでも7大学を数える。

加えて、大学や受験生を取り巻く環境にも大きな外的変化が起き始めた。大学入試制度の変更・大学入学定員の厳格化である。更に大学入試方式の名称変更やその入試方式においては一定の学力を求めることが定められ、本校においても進学体制の中身の進化が必要となってきた。

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伝統的な早朝演習・土曜演習・夏季演習・学習合宿・冬季演習・小論文講座に加え、この10年余りで新しく導入したことは、Z演習・スタディサプリ・キャリアデザイン講演・文理選択ガイダンス・保護者向け進路説明会・城西アカデミー、そして平成29年度(2017)より英語検定一次試験を校内で実施することとした。これにより英語検定2級・準2級の合格者が大幅に増加した。令和2年度(2020)より二次試験も本校で実施している。このように大学入試制度改革の流れを利用し、新規教育体制の進展を進めてきたのである。

また、本校の大学入試データの不足を感じ、新資料の作成を進めた。それが総合型・学校推薦型入試データである。本校生徒の年度別受験者数・合格数・指定校数・合格率を大学学部別に、県内大学すべてのデータをまとめ年度ごと比較ができるようにし、本校生徒の受験動向や大学の難化傾向を探ることができるようになり、進路指導の一助となっている。

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就職については、自動車産業を中心に景気の動向やコロナ感染症の影響などで変化はするが、大企業を中心に順調な就職状況である。就職希望者は毎年60人前後であり、それに対し求人企業は300社以上となっている。

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