第1節 全体の流れ

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(1)法人の経営方針

平成24年(2012)から平成28年(2016)までの歩み

明治45年(1912)寺部三蔵・だい夫妻により創立された学校法人安城学園は、令和4年度(2022)創立110周年を迎えた。本学園は、創立者から寺部清毅前理事長、そして寺部曉理事長へと着実に受け継がれてきた。

110年という1世紀を超える歴史の中で多くの困難を乗り越えて今日の学園を築きあげてきた。これはとりもなおさず、創立者の教育信条「誰でも無限の可能性をもっている」を堅実に継承し、常に教育の原点を見据え、建学の理念・建学の精神に基づいた学園独自の特色ある教育を展開してきた成果である。と同時に地域の方々の深いご理解と温かいご支援の賜物と心から感謝申し上げたい。

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平成24年(2012)に創立100周年を迎えてから今日までの10年間、私学を取巻く社会・教育環境は厳しく変化した。総務省統計局の調査によると、18歳人口は、約123万4,000人から約117万2,000人に減少した。10年後には約98万人と更に減少すると予測される。一方、大学・短期大学への進学率は増加傾向にある。文部科学省の学校基本調査によると、平成24年(2012)には53.5パーセントであったが、令和2年(2020)は58.9パーセントとなり、過去最高を示した。

このように高等教育環境の激しく変化する社会において、本学園は私学としての独自性を更に進め、時代の変化に的確に対応した教育を積極的に展開してきた。

平成24年(2012)から平成28年(2016)の間、政策的に取り組んだ事業は次のとおりである。

平成24年度(2012)、教育モデルを開発し「教育にイノベーション」を興し、「教育」に質の保証を担保した。学生・生徒に確かな学力の向上を保障するとともに豊かな心と健やかな身体の育成を目指した。

平成25年度(2013)、学校法人安城学園中期経営改善計画を策定した。その骨子は、学生・生徒・園児数6,200人を安定的に確保し、そのために必要な教職員数を340人とすることである。

基本的な考えは、次の3つを実践することにより経営基盤の確立を目指した。

まず、社会から評価される教育を実践する。このために教育モデル「知・徳・体・行」を一層充実させるべく平成28年(2016)には「智・徳・体・感・行」と展開させ、基礎学力と専門知識・技術と社会人基礎力を統合的に身に付けることのできる教育研究活動を推進した。2つ目は、教職員一人ひとりの潜在能力を可能性の限界まで開発し、教職員にとって働きがいのある職場環境を充実させることである。3つ目は、理事会と教職員が学校法人安城学園の目標を共有し、協力体制を構築し、教職員一丸となって教育活動等を展開することである。

更には教職員の雇用の確保である。定年退職後の教職員を法規に則り引き続き雇用し、教職員の能力を最大限に生かし活用するとともに、生活の安定を保障した。

平成28年(2016)11月には寄附行為の大幅な変更を行った。

創立105周年を迎えるにあたり、今一度創立者の教育信条の原点に立ち返り、その目的の再確認を行うとともに、時代と社会の変化に適応した管理運営及び教育における改革に取り組んだ。創立者が目指した経済的・政治的・文化的に自立できる社会人を育成すること、これからの地域と国際社会に貢献できる人材を育成することである。

そのために、「建学の理念」「建学の精神」「学校法人としての事業の目的」「教育目標」「行動指針」についてより具体的に分かりやすく明文化した。

「建学の理念」「建学の精神」は私立学校にとって普遍的なものである。

また、本学園の事業は創立者が常に「無限の可能性」を信じて実践した「潜在能力の開発」事業である。学生・生徒・園児はもとより、教職員、更には地域の潜在能力を開発することを明文化した。

教職員の行動指針となる安城学園教職員憲章については、創立100周年を機に制定した後、更に充実を図り、一部改定を行った。

各設置校において取り組んだ主な事業は次のとおりである。

大学・短期大学

・経済産業省が提唱する社会人基礎力の育成を積極的に展開させ、更に、智性・徳性・身体・感性それぞれを鍛える教育を合わせ、「智・徳・体・感・行」の下、学園独自の教育プログラム、自学・共学システム「学びの泉」の開発に挑んだ。実践活動として、産・官学連携事業を積極的に展開した。

・地域の潜在能力開発事業の一環として岡崎市・豊田市と包括協定等の締結を推進し、地域連携を強化した。

・教育の中身については、教育内部質の保証、自己点検・自己評価に基づき改善し、充実を図った。

・平成24年(2012)と平成25年(2013)の2年連続で、米国のアルバーノ大学を視察した。

アルバーノ大学は、1970年代の初めから学修成果として学生の「能力」を中心に捉えたカリキュラムを開発し導入している。すなわち、8つのコンピテンシー(能力)を開発モデル6段階に設定し、段階的に能力を発達させていくようにカリキュラムを構成し、卒業時までにカリキュラムに組まれた8つの能力を身に付けることを保証している。本学で取り組んでいる「建学の精神」「pisa型学力」「社会人基礎力」を核にした教育を一層充実させるために大変参考となった有意義な視察であった。

安城学園高等学校

・学園の創立と伝統、創立者の生き方を実際の諸活動を通して生徒に体得させた。

・まちと学校・地域を繋ぐ地域連携活動事業により、安城市や近隣の町との交流を盛んに実施し、地域との連携を強化した。

・学力の向上を目指す生徒の育成事業。「建学の精神」「pisa型学力」「社会人基礎力」の育成についての実践を開始する。

・特色ある授業(教科をまたぐクロスオーバー型)を実践する。

・東日本から学ぶプロジェクトを継続して展開する。(大船渡七夕ボランティア・東北セミナー・学園祭への招待・気仙沼市でのコンサートの開催)

岡崎城西高等学校

・創立者の教育信条を基に「建学の精神」「社会人基礎力」「pisa型学力」を核に「教育で勝負できる学校づくり」を目指した。

・「3つの勉強(授業・部活動・行事)」それぞれに「3つの挑戦」を通して生徒が自己の可能性を探り、自己を伸ばす教育を展開する。

・学校の諸行事・クラブ活動を通して地域との繋がり・交流を積極的に取り組み、地域との連携を推進した。

・東日本から学ぶプロジェクトを震災時から継続して実践し、被災地からの学びを通した活動の中で東北の高校生との交流を深めてきた。

・伝統行事「夏山合宿」を約30名程度の希望制により継続して実施する。

・平成24年(2012)のロンドンオリンピックに3人、平成28年(2016)のリオデジャネイロオリンピックでは2人の卒業生が活躍した。

両高等学校において、学習、部活動、学内行事、地域との繋がりの中で「教育で勝負できる学校づくり」を積極的に実践し、地域・中学生・保護者から信頼される生徒の育成を実現した。

3幼稚園

幼稚園については、本学園の設置する幼稚園として共通の教育理念に基づき、それぞれの幼稚園の特色を生かした教育・保育に取り組んできた。

・地域、特に立地している安城市との連携活動、市内の県立高等学校や系列高等学校と共同で様々なプログラムを展開し、連携活動を強化・推進した。

・預かり保育等を導入し、地域の子育て支援事業を積極的に展開し、地域に貢献している。

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明治45年(1912)人口わずか2万人たらずの三河の地・安城に誕生した学校法人安城学園は、創立110年を機に更にその歴史と伝統を堅実に伝承し、学園独自の特色ある教育を展開し、地域に社会に貢献していくことを期するものである。

平成29年(2017)から令和3年(2021)までの歩み

平成29年(2017)、法人は平成29年度(2017)から令和3年度(2021)までの5年間を計画期間とし、教育目標とそれを支える安定的な財政基盤の確立を骨子とする「第2期経営改善計画」を策定した。この第2期経営改善計画における教育目標の達成に向け、また、平成29年に学園創立105周年を迎えるにあたり、寄附行為の大幅な変更を行った。寄附行為の変更にあたっては、学園の創立の原点に立ち返り、その目的の再確認を行うとともに法人の目的をより明確にし、併せて、本法人の建学の理念、建学の精神、事業、行動指針、教育方針等を新たに規定した。

学園創立100周年を記念して平成24年(2012)に制定した「安城学園教職員憲章」も同じく学園創立105周年を迎えるにあたり、その一部を平成29年(2017)2月に改定した。その後、令和2年(2020)には学校法人安城学園ガバナンス・コードを制定し、本法人が寄附行為及び私立学校法等に基づいて、本法人及び本法人の設置する学校を統治する上で必要な本法人のガバナンスの基本的なあり方を示した。

一方、第2期経営改善計画における安定的な財政基盤の確立に向け、法人の設置する学校の適正規模を学生生徒園児数の数値目標で示している。具体的目標は、愛知学泉大学760名、短期大学640名、安城学園高等学校1,500名、岡崎城西高等学校1,500名、3つの幼稚園を合わせて800名の学園全体合計5,200名を達成し、これを維持することである。この目標を達成することによって今後の厳しい経営環境の下で教育を展開するに足る財政基盤を構築し得るのである。

これにあたり、大学は、令和2年度(2020)に家政学部のこれまでの1学科3専攻体制を見直し、3学科体制に改組転換を行った。短期大学は、平成30年度(2018)に学科単位の入学定員を見直している。この経営改善計画の進捗状況、目標達成度の点検は理事会が実施している。

日本私立学校振興・共済事業団の経営判断指標は、本法人の場合、令和2年度において「B3」の区分に該当する。本法人は第2期経営改善計画に基づき、安定的な財政基盤の確立を財務目標に掲げ事業に取り組んでいるものの、目標を達成できていない状況にある。但し、令和2年度の活動区分別資金収支計算書の教育活動収支差額は収入超過であり、令和3年度の同教育活動収支差額は収入超過となる見込みである。従って、次年度以降の経営状態は「B0」以上の区分となると考えている。

寺部曉理事長は、毎年度6月中旬に行われる法人全体の報告討論会において、専任教職員全員に向けた研修の一環として、法人の経営情報の解説を行っている。このように、学内に対する経営情報の公開と危機意識を共有している。このような状況の中、短期大学、高等学校、及び幼稚園は、現状の入学定員充足率、収容定員充足率を概ね維持している。

一方、大学については、平成23年度(2011)に開設した現代マネジメント学部の入学定員充足率は低迷を続け、令和元年度(2019)に学生募集を停止することとなった。令和3年度(2021)において、在籍する学生全員が卒業することを見届け、大学豊田学舎は、昭和62年度(1987)から開始した教育事業を35年間で幕を下ろすこととなった。以上のように、本法人は、これまでも自学の強み・弱みなどの客観的な環境分析を行い、併せて経費(人件費・施設設備費)の適正規模の実現に取り組んできた。少子化の進行をはじめとする今後の学校法人を取り巻く環境の変化に対しても同様に対応していくこととしている。

(2)学園の教育方針

本学園では創立以来この110年間、不易流行、温故知新の精神に基づいて教育にイノベーションを起こしてきた。現在は、新しい寄附行為において「創立者が目指した経済的・政治的・文化的に自立できる社会人を育成する」という教育目標を定めて、次のように教育を展開している。

建学の理念に基づく教育について

「男に生まれようと女に生まれようと誰でも無限の可能性を持っている。一人ひとりの潜在能力を可能性の限界まで開発するのが教育である」という創立者の教育信条は、建学の理念である「庶民性と先見性」そのものである。

しかし、これに基づく教育活動には一人ひとりの潜在能力を可視化するツールが不可欠であり、それが第1・第2・第3からなる「3つの挑戦」である。「第1の挑戦」とは不得意なことを標準レベルまで引き上げる苦手への挑戦であり、「第2の挑戦」とは得意なことを更にレベルアップさせる上達への挑戦であり、「第3の挑戦」とは今まで試したことがなく失敗するかもしれない未知への挑戦である。一人ひとりの目標づくりとセットになったこの「3つの挑戦」プログラムによって、一人ひとりの潜在能力を可視化させ、開発することができるのである。

学園の建学の精神に基づく教育について

本学園には「家庭と社会に温かい心と新しい息吹を与えることのできる人間の育成」と「質実剛健・己に克つ実践、勇気と努力を以て困難に立ちむかう剛毅闊達な人間の育成」という、歴史的に2つの建学の精神がある。一方、男女共同参画社会の到来を視野に入れて、令和元年度(2019)までに全ての設置校を男女共学にした。そこで「男に生まれようと女に生まれようと誰でも無限の可能性を持っている」という創立者の信念に基づいた教育を展開するために、「宇宙の中の一つの生命体である人が、個人として自立しつつありとあらゆる生命体と共生することによって、生きる意志と生きる力と生きる歓びに満ち溢れた鵬のような大局的な存在となること」というジェンダーフリーな学園の建学の精神を制定した。キーワードは「個人としての自立」、「ありとあらゆる生命体との共生」である。生きる意志の強さを寺部だい先生から、生きる力の強さを寺部清毅前理事長から学んで欲しいというメッセージが込められている。

「真心・努力・奉仕・感謝」の四大精神に基づく教育について

「真心・努力・奉仕・感謝」の四大精神をこれまで女子教育用の徳目として位置付けていた。しかし、新しい寄附行為の中で、「この法人の主たる目的は、『建学の理念』と『建学の精神』と『真心・努力・奉仕・感謝』の四大精神の実践を通して、創立者が目指した経済的・政治的・文化的に自立できる社会人を育成することによって、地域と国際社会に貢献することである」と、この四大精神を普遍的な徳目として捉え直した。そして、寺部だい自伝「おもいでぐさ」をこの四大精神を体得する上での基本的なテキストとして活用していくことにした。つまり、「おもいでぐさ」の教材化を幼稚園から大学まで各設置校で開発していく予定である。その一環として、創立105周年の際に「おもいでぐさ」の日本語・英語対訳版を作成した。また110周年の事業として中国語対訳版、韓国語対訳版も作成予定である。

学習モデル「智・徳・体・感・行」に基づいた自学・共学システム「学びの泉」について

明治以来、日本では、「知育・徳育・体育」という教育モデルに基づいて学校教育が行われている。これは、イギリスのハーバート・スペンサーの教育論によるものである。

これに対して本学園では、この「知育・徳育・体育」を包含する「智性・徳性・身体・感性・行動」という新しい学習モデルを独自開発し、これに基づく自学自習用プログラム・共学共習用プログラムを開発することによって、専門的能力を鍛え上げるだけでなく、pisa型学力・建学の精神・自然体・直観力・社会人基礎力といった汎用的能力も同時に鍛え上げることができる自学・共学システム「学びの泉」を令和4年度(2022)から本格的に開発しようとしている。

(3)創立105周年事業

安城裁縫女学校の創立から平成29年度(2017)で105周年を迎えたことを記念して、本学園では「教育で勝負できる学校」をテーマにして様々な記念事業を行った。

創立105周年記念式典をこの年の11月22日(水)に安城市民会館サルビアホールにおいて挙行し、来賓、在校生・卒業生、教職員等を合わせて約1,200名が出席した。安城学園高校弦楽部と岡崎城西高校和太鼓部が歓迎演奏で来場者を出迎え、安城学園高校合唱部と岡崎城西高校コーラス部、愛知学泉大学の合唱部有志による安城学園の歌「いまここに」の披露で式典を開始した。

記念式典では安城市の神谷学市長のほか、「東日本から学ぶプロジェクト」で大変お世話になっている大船渡市の戸田公明市長を会場にお招きし、祝辞をいただいた。また、愛知県の大村秀章知事からは録画映像による祝辞をいただき、式典に花を添えられた。

そして、ここ5年間の優秀者への表彰状の授与と、日頃お世話になっている方への感謝状の贈呈、および寺部だい先生の生立ちと学園創立からの歴史をまとめた動画の上映を行った。

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また、同じ日に安城市にあるアンフォーレにおいて朗読劇「夢のさなか」のミニ公演を開催した。この朗読劇「夢のさなか」は、オーケストラの演奏と合唱団の歌声とともに、語りにより本学園の創立に至るまでの寺部だい先生の半生を演じる劇であり、平成25年(2013)から毎年公演してきたものである。この日の朗読は語りべふみの会代表の田中ふみえ氏で、演奏は大学オーケストラと有志が担当した。

この他、同年11月18日(土)から23日(木)に同じアンフォーレにおいて、寺部だい先生と中興の祖である寺部清毅前理事長の写真や遺品等を展示する資料展を開催した。

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一方、東日本大震災の年から継続している「東日本から学ぶプロジェクト」についても、「2017夏〝東日本〟から学ぶべきもの」と題して、アンフォーレにおいて次の催し物を開催した。

防災フォーラム「3・11を忘れない~安城で取り組むべき防災~」

日にち:平成29年8月11日(金)

講演:「3・11で体験したこと」

講師 坂田隆氏(石巻専修大学 前学長・教授)

パネルディスカッション:「防災を意識したまちづくり」

パネリスト 坂田隆氏(石巻専修大学 前学長・教授)

佐藤健一氏(気仙沼市危機管理課 元危機管理監兼課長)

河合弘樹氏(安城市危機管理課)

藤野千秋氏(安城市城南町自主防災会 会長)

安城市立錦町小学校 児童会2名

安城市立安城南中学校 生徒会2名

安城学園高等学校 生徒会1名

被災地交流コンサート「東北へのメッセージ」

日にち:平成29年8月12日(土)

出演:尾形和優氏ほか、気仙沼を中心に活躍するミュージシャン等

写真展

期間:平成29年8月9日(水)~13日(日)

これらの催し物の他に、これまでのプロジェクトの活動内容やプロジェクトに参加した学生・生徒・同窓生・教職員、更にプロジェクトで交流した現地の方々の声などをまとめた冊子を発刊した。

また、記念式典の来賓には、創立100周年の際と同様に、酔仙酒造株式会社に依頼して醸造した記念酒「夢のさなか」を贈呈した。更に今回は、宮城県にある株式会社1ノ蔵に甘酒づくりを依頼し、記念飲料として幼稚園児に配布した。

以上の記念事業の他に各設置校の創立105周年事業として、次の行事等を実施した。

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大学・短期大学

社会人基礎力育成学内グランプリ

日にち:平成29年12月5日(火)

場所:豊田市民文化会館 大ホール

安城学園高等学校

ウインターコンサート「夢のさなか」公演~寺部だい1代記~

日にち:平成29年12月10日(日)

場所:安城市民会館 サルビアホール

岡崎城西高等学校

英語部 寺部だい自伝「おもいでぐさ」英語・日本語対訳版の制作

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