第3節 教育の質的変革への波 (平成元〈1989〉~平成3〈1991〉年度)

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私学危機のなかで
平成元(1989)年度は、高校入学者急増のピークに当たり、公立高校入試では、複合選抜制度が採用された。平成2年度以降、急減期を迎え、私学危機が現実的課題となった。

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本校では、生徒募集対策として、学校案内のパンフレットや機関誌『彩雲』の大幅刷新、学校紹介ビデオ『夢が止まらない』の製作配布など、広報活動が強化された。本校の教育内容を知る機会の乏しい中学校教員や生徒には特に好評を博した。学校自由見学会には、例年、約850名を超える参加者が訪れるようになった。
推薦入学志願者の基準は、平成3年度までの6年間に、6ポイント上昇した。かつての公立補完的地位から脱却し、高大一貫体制を備えた本校独自の教育を求めての志願者が圧倒的多数を占めるようになった。
入学時の進路希望調査では、それまで約55%であった系列校志願者が、70%(進学希望者80%)を超えた。入学後に実施する学力診断テスト結果も、平均点が飛躍的に向上し続け、生徒の学力向上は毎年、目を見張るものがあった。
急減期の危機的状況下において、私学に対する社会通念を変革し、私学志向の増大を促した全県下の私学の取り組みと本校の教育づくりの努力は、着実にその成果を現わし、危機を転じて、さらに先進的な教育の質的変革を推進することとなった。
そのひとつに、国際化に対応した教育課題への取り組みがある。国際人としての資質形成や英語力の向上は、本校の継続的課題である。
平成元年度の夏季特別補習の英会話では、外国人講師の導入が行われた。
これに続いて、同年度には系列校短大の第1回交換留学生であったカナダ人ジェニファー先生が、英会話授業の講師として就任した。
翌平成2年度の9月からは、生きた英語教育を推進すべく、常勤で、アメリカ人ポール先生が加わった。

平成3年度には、さらにトム先生が加わり、3人の外国人講師と日本人英語教師によるチームティーチングが順調に展開された。
これは、生きた英語教育実現への授業改革を引き起こすとともに、3人の外国人講師が職員室や構内に常駐することによって、生徒や教員の意識にも大きな波及効果をもたらし、本校の国際化を大きく進めるベースとなった。
系列大学と短大の姉妹校であるカピラノ大学留学生の来校、ニューイングランド大セパーソン教育学教授による教育講演会と、年ごとに国際色が強まった。
また、平成3年度には、ホームステイ希望者が急増するなか、本校独自のオーストラリア海外研修旅行が、夏休みの10日間、シドニー市近郊のマンリー市にて、21名が参加して行われた。

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外国人の来客も増える一方、安城市の姉妹都市ハンチントンビーチ市への高校生派遣事業に対する生徒推薦依頼が寄せられた。平成2年度の3年の保里美津子さんに続いて、平成3年度は3年林由紀さんが派遣された。また、3年鈴木里恵さんは、岡崎市の姉妹都市ニューポートビーチ市への交換高校生に選ばれ、派遣された。
アメリカやカナダ高校生の短期留学も相次いだ。
安城市の姉妹都市であるアルトナ市長1行の来校もあった。
国際交流センターから留学生を招いての交流、更に、愛知県立大学の姉妹校であるフィリップ大学の2名の学生が、本校にて教育実地研修を1週間行うなど、国際化の波は、一気に高まっていった。

生徒の主体的な活動の進展
創作ミュージカルに代表される高校生活の主体的創造の活動は、さらに進展した。
ミュージカルは、平成元年度「ルシファー」、2年度「ラフ」、3年度「モーメント」上演と、継続的に発展し、そのなかで多くの生徒が大きく成長していった。
平成元年度には、自主活動が全校的な取り組みに発展し、「全日本人文字コンテスト」への参加となった。人文字の企画は、学園祭の参加企画として始まったものである。全校的な呼びかけによって、「蝶の羽化」が2,400名あまりの大規模な取り組みに発展し、全体練習わずか8時間の短時間で実現され、11月24日に録画、1月11日に日本テレビ系列で放映され、見事、特別賞を受賞した。

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F・Cの内容は、クラス数の増加のために、平成元年度、2年度と、一日短縮の2泊3日になったのをきっかけに、それまでの徹底した集団生活訓練や確認テスト方式に変わり、読書指導、クラス討議、先輩の体験談などを重点とした、主体的な高校生活へのオリエンテーションの性格を強めた。
修学旅行も、生徒の希望で、韓国、沖縄、北九州、南九州のいずれかを選択できるメニュー方式となった。
平成2年度は、不幸にも、湾岸戦争の影響を受け、直前になって飛行機利用の韓国・沖縄が、九州縦断コースへ急遽変更されたが、3年度には、韓国・沖縄・北九州のメニュー方式で実施された。
G・Cは、黒沢口からの登山が、ロープウェーの設営により短縮されたこともあり、クラス代表者会議を中心にした、生徒の手によるキャンプ運営が行われるようになった。
学園祭では、生徒会がイベントを企画し、クラス合同企画も生まれ、生徒の手による学園祭が組織的に行われるようになった。そのイベントは、平成元年度は「いんぐりもんぐり青春を歌う」、2年度は「嘉門達夫の青春トーク」、3年度は「ファンキーモンキー、ラッキー池田」であった。
平成2年度の学園祭は、当日、季節はずれの台風の影響で、開場を半日遅らせる事態が生じたが、「輝く瞳に青春革命―時代の流れを変えた女性達」をテーマに無事、行われた。
3年度の学園祭は、80周年を前に「79年目の挑戦―今年も安城学園が凄いらしい」をテーマに、クラブ発表、調査研究、デコレーション、バラエティー、舞台発表、バザーなどの発表が、約4,500名の入場者を迎えて盛大に行われた。
この他、平成2年度からは、1年生の学年末に、「私の主張」コンクール、教員が教科をはずれて設定した様々な講座や、球技大会などを組み込んだスプリングゼミが行われるようになった。

その中で、生徒の隠れた素晴らしい内面が表出され、また、生徒と教員が文化的活動を通して、学びと触れ合いを体験することが出来た。
一方、本校の部活動はますます盛んになり、全国レベルでの活躍が目立ってきた。

平成元年度
吹奏楽部、トロンボーン4重奏で、全日本アンサンブルコンテスト全国大会へ出場(3浦かな、日野智子、沓名亜由美、倉内由美子)。
スピードスケート部、1年夏目真希子さんが冬季国体に、2年中野朋美さんが冬季インターハイに出場。

2年度
卓球部、2年大竹理恵子さんが全日本卓球選手権大会に出場。
陸上部、3年沢木幸子さんが走り高跳びでインターハイに出場。
ハンドボール部、3年木村裕子さんが国体に出場。

3年度
陸上部、2年石田史さんが走り高跳びでインターハイに出場。
卓球部、3年平野ミユキさんがシングルスで、3年大竹理恵子さん、板倉美代子さんがダブルスで、インターハイに出場。
軟式テニス部、3年広瀬さゆりさん、2年鈴木智美さんがダブルスでインターハイに出場。
ハンドボール部、3年岩川照美さんが国体に出場。

生徒指導の目標では、平成元年度には「生徒の信頼を維持する指導」が、2年度には「活力ある生活の育成」、3年度には、「自主活動の活性化を通して帰属意識の高揚を図る」と、生徒の主体性と共同性の育成による自主規律を意図した内容が加えられた。
学年会目標では、3年度には「交流する力とリーダー性を引き出す」「けじめとふれあいの生活指導」「生き方を共に考える進路指導」が設定されるなど、次第に校則の抜本的な見直しの動きが始まった。
この他、2年度には、傘の規定、スカート丈の規定、制服外出規定が弾力的になった。
3年度には、校則検討委員会が設置され、生徒会の校則検討の動きと並行し、他校の調査に基づき、改訂作業が進められ、生徒手帳記載事項が大幅に整理された。

授業改革、カリキュラムの改訂へ
自学主義に立つ授業研究が進む一方、ミュージカル・学園祭などの自主活動を通して生徒が示した驚くべき能力発現と人間的成長を教科学習に喚起すべく、授業構造の分析検討が始められた。
平成元年度に、学習指導部は、高大一貫教育を推進するとともに、人間主義教育を目指し、自学能力の育成と自己実現型教育を求めて、部分的な授業改善から大胆に授業構造改革へ踏み込んだ。
まず、数学科が数学的思考力育成を重点に、これまでの試験問題、教材、授業方法を洗いざらい見直し、「考える授業」を目標に、独創的な教材や、授業方法の開発や研究を教科一丸となって、取り組んだ。他教科も、生徒が人間として生きるための血肉となる教科指導を求めて動き出した。
こうして授業構造改革は、教科別宿泊研修会をバネに、ひとつの運動として一気に広がった。この動きは、MDや創作活動などの特別教育活動や評価、評定、単位認定の改訂、推薦基準改訂、学習指導部の行事検討など、学習指導構造全体の変革を促し、カリキュラム改訂へと進んだ。
カリキュラム委員会は、56年度に改訂したカリキュラムの目標と基本構造の持つ普遍的妥当性を再確認した。そして、建学の精神の21世紀展望に立つ質的変革を中心に、平成4年度改訂に乗り出した。国際化、情報化、個性化、多様化の時代にあって、人間教育のこれからの課題として、主体性、創造性、共同性を設定し、自学主義教育を展開すべく、全教員の意思を集約していった。
改訂の機軸としては、次の方針が確認された。

1 教育の質的変革を図る。
2 学校5日制度への移行。
3 高大一貫教育体制の強化。
4 魅力ある科目や授業の創造(授業構造改革)。
5 評価・評定・単位認定基準の改訂。
6 国際化・情報化教育の推進。
7 総合的表現教育の導入。

これらの基本方針は、従来の一般的な受験と偏差値を指標とするモラトリアム的、量的な学校観から脱却し、現実にあって、主体的に生活する文化創造者としての人格形成を図る人間主義教育を展開しようとするものであった。
教員が画一的に教え、生徒にそれをできるだけ完璧に理解させるという学校教育に代わって、生徒が学び、友と考え、知的創造性を発揮し、個性豊かな人格に自己を高めることのできる学校教育への質的指標を重視することであった。

平成2年度に、学習指導部、カリキュラム委員会、教科主任を含めた拡大カリキュラム委員会を中心に、動きが開始された。優れた実践を持つ関西・名古屋・東京の7校に、延べ30名に及ぶ教員が研修に出かけ、これからの教育を方向づけるカリキュラム、学校行事、国語教育、英語教育、芸術教育、情報化教育、国際化教育、評価評定と単位認定などの各分野を研究した。これは新カリキュラム構想の積極的な牽引力となった。
教育を量から質で捉え始めた時、生徒の学習領域を広く現実の家庭や社会に求めることの必要性が生まれた。そして、このような開かれた学校観が学校5日制と重なり、学校5日制は積極的に評価出来る制度変革であるとして、捉えられた。
新カリキュラムづくりに向かって、全体カリキュラム研修職員会議、各教科会、カリキュラム委員会、拡大カリキュラム委員会、学習指導部合同会と、年間で60回を超える検討審議が重ねられた。その結果、科目設定と単位数配分、知的創造性と個性育成に効果的なゼミナール科目の編成案が、おおむね合意に達した。
平成3年度には、授業構造改革のうねりが、国語科、社会科、英語科、理科、家庭科と、すべての教科に広がった。そして教材研究や、シナリオ公開授業を組み込んだ授業研究が、組織的に展開された。
創作活動は、リフレッシュ創活として、生徒の意欲に全面的に応えるべく、大幅に刷新された。ゼミナールは、25名前後の徹底した小人数編成で実施するなど、平成4年度を意識した準備が始まった。
新カリキュラムづくりに対して、寺部学園長より次のような提言があった。
「時代の変化に対応した教育を、質で考えない限り、旧態依然とした教育は変えられないのではないか。今後、人間に求められてくるのは、主体性、創造性、共同性、といった資質ではないか。学校は、そんな資質を育てていく場所でなければならない。この基本的な考えは、自学主義にある。読み取る力、書き取る力、まとめる力、表現する力、話し合う力が必要になる。行事においても、自学能力養成にとっては重要である。授業中では、実験、観察、フィールドワーク、そして共同作業、共同研究といった、話し合う、考え合う、といった過程を通して、自学主義が開花する。情報が氾濫するなかで、情報を正しく選択できる能力が必要になっている。複合教科が必要になってきているのではないか。土曜日、日曜日は共同学習、フィールドワークなどが積極的に行われるようになると、自学主義は本物となる。共同学習を重視したもので、3年間通した総合学習的な教科が新設できないか」

特設科目は、礼法を女性学に包含する形で統合され、MDに代わり、現実の現代社会を科目の枠にとらわれず扱う社会科開発による総合講座が設けられた。
また、表現能力育成を総合的に図るべく、国語科開発による「総合表現」が新設された。
さらに、5日制を積極的に活かす土曜日の博物館などを中心としたフィールドワーク、社会科、国語科、理科主催の国内・国外研修旅行など、キャンパスを世界に拡大した教育計画が採り入れられた。
5日制移行に伴う土曜日の扱いは、自学と行事の日と定めた。そして学校を開放し、午前中、学習センター(図書室、CAIセンター、個別学習室)、L・L教室、視聴覚教室、情報処理室、音楽室、体育館を自由に利用出来るようにした。
行事の日には、学校行事として、学年別行事を集中させ、5日間の授業時間を確保するとともに、月2回程度、登校させることになった。また、年間の行事計画が修正され、1年F・Cの期間の大幅短縮、3年G・Cの廃止、試験期間の短縮など、合理化を図る一方、自由参加の夏山登山や種々の国内、海外研修などの個別行事が加えられることとなった。
この他、数年来の懸案事項として、継続検討されてきた評価・評定・単位認定の改訂も、平成3年度に合意に達した。
授業改革の努力がなされても、伝統的な注入型に帰結してしまう理由のひとつに、評価・評定・単位認定方法があったが、ペーパーテストなどの客観テストを評価の中心資料とする画1的方法から、生徒の主体的な思考性や感性、そして、独創性や創造性を積極的に評価する方法が検討された。
3年度には、従来の100点法に代わり、学期評定10段階、学年評定5段階、単位認定基準30%とし、各教科独自の評価観点をそれぞれ設定し、評価する方法が決定された。4年度の新カリキュラム発足と同時に、単位認定基準を30%に引き上げ、全面的に改訂されることになった。

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