第6節 「社会人基礎力」育成プログラムの展開

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生活デザイン総合学科での社会人基礎力育成
この間、学校法人安城学園は新たに「社会人基礎力」の育成推進を教育の核心的方針に位置づけ、そのための教育プログラムの開発に着手することとした。この方針を受けて本学においても各学科で特色ある取り組みが実施されている。
生活デザイン総合学科における社会人基礎力育成の取り組みは、短期大学における展開手法を構築することを目的に、平成22年度(2010)より「総合ゼミナール(山本豊准教授ゼミ)」でパイロット授業として開始した。山本ゼミでは「社会人になるための自信をつけよう」をテーマとし、服飾の専門技術・知識の修得過程を通して、自己の能力の可能性を信じ、「社会人基礎力」の能力を身につけ、社会人となる自信を持って卒業していくことを目指している。
ゼミでは、学外(社会)との結びつきを持った取り組みを通して、実体験から「社会人基礎力」を修得することを重要視している。そこで、ゼミ活動として学外で製作物を発表する機会を設けることで、学生が実社会で働く人びととかかわり、経験を重ねて社会人としての能力を体得していくようにしている。具体的な活動として、毎年2回の社会人も参加するファッションコンテストへの出場と、岡崎市「秋の市民まつり」でのファッションショー開催に取組んでいる。こうした学外での発表活動がきっかけとなってさまざまな企業・団体から依頼を受け、市民劇での衣装製作と展示会(平成21・22年度 ちりゅう芸術創造協会主催)や東京国際フォーラムでの製作物発表会(平成22年度NIPPON MONO ICHI、独立行政法人中小企業基盤整備機構主催)などの活動に広がった。社会とかかわるこれらの活動は、授業で修得した専門知識・技術に加え「社会人基礎力」の発揮が学生に求められることとなり、「基礎知識、専門知識・技術と社会人基礎力」を統合的に育成する場となった。
これらの取り組みを行なう準備として、事前に数回の「社会人基礎力」の説明会を開催して、「社会人基礎力」の理解と意識づけを学生に対して行なった。またコンテストなど一つの取り組みが終わるごとに、学生が自己の活動を振返る機会を設けている。これは学生が振返りシートを記載して自己の体験を整理し、法人本部社会人基礎力育成室担当者との面談を実施するもので、学生が自己の体験を整理することで、自身の成長と次の目標を認識しさらなる行動と成長につなげる目的で行なっている。
平成22年度から取り組みをはじめ今年3年目となるが、学生の記載する振返りシートを検証すると、年々学生の「社会人基礎力」の修得度は高くなっていると感じられる。これは取り組みを継続することで前年度の先輩取り組みを後輩が参考にする流れが生まれたことによる効果であると考えられる。

幼児教育学科での社会人基礎力の育成
幼児教育学科における「社会人基礎力」育成教育の取り組みは、平成22年4月より、専門科目「保育内容と指導法の総合演習Ⅰ・Ⅱ(こどもまつり)」をパイロット授業として開始された。「こどもまつり」は、幼児教育学科の全学生が、企画・立案・準備・運営を行い、10月に地域の子どもたちや家族を招いて開催する幼児教育学科主催の行事である。知識・技術を活用してチームで取り組むこの授業は、学生が社会人基礎力を獲得する取り組みとして有用な場と考えられた。
学生に対しては4月の「こどもまつり」の授業の中で「社会人基礎力」の意識づけとして「社会人基礎力」とは何かについて、また獲得すべき12の能力要素(行動特性)について社会人基礎力育成室の担当者が説明を行い、7月・10月には自己評価表を用いて自己の「振り返り作業」を実施した。平成23年度(2011)は、前年度の活動に加え、7月に、13人のこどもまつり総務委員が社会人基礎力育成室の担当者と面談しながら「こどもまつり」や「保育実習」の授業での取り組みを振り返り、自己の「社会人基礎力」獲得の状況について考える機会とするものであった。平成24年度(2012)からは、全学的にすべての科目において「社会人基礎力自己評価表」を用い、その授業がとくにねらう行動特性(能力要素)についての自己評価(授業前・授業後)を行うことになった。新たに学生には冊子「無限の可能性への道」を配布し、「自己目標ポートフォリオ」「社会人基礎力振返りシート」の記入を行うなど、より積極的な「社会人基礎力」育成の取り組みに移行している。

食物栄養学科での社会人基礎力の育成
食物栄養学科における社会人基礎力育成の取り組みは、平成18年度(2006)に開催された「JICA研修生活習慣病予防対策コース」への参加から始まる。すなわち、JICA(独立行政法人国際協力機構)が主催した同研修会に参加する発展途上国からの研修員との触れ合いを通して相互理解を図る目的で、主催者側から「お国自慢料理交流会」への参加要請があった。そこで、本学科では自主的に参画する学生20名と教員の指導のもと、西三河地方の文化や歴史・気候風土・地理的要因などと深くかかわる食材として地元岡崎の八丁味噌を取り上げ、さらに徳川家康の健康長寿のイメージを加味させて、洋風寿司・みそまんじゅう・みそ風味水ようかん・ゴーヤミソチャンプルー・ミソスパムサンドなどを試作して、これらを「お国自慢料理交流会」へ出品した。

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ここに至る過程では、三河地方の食文化や農林漁業の特徴を調査し、献立作成、調理方法や調理手順等について時間をかけて様々な検討を行なった。例えば、種々の制約条件の中で、いかにして完成度の高い作品にするか、また、外国人に受け入れられる味付けはどうすれば良いのか、など解決すべき課題に対して熱心に取り組む学生の姿が示された。
このような教育実践を通して、「社会人基礎力」でいう3つの能力(前に踏み出す力・考え抜く力・チームで働く力)を構成する12の行動特性の中で、とくに「主体性」「計画力」「発信力」、などが養成されていった。当初は、消極的で他人に依存しがちな学生にも成長の跡を見ることができた。さらに、この取り組みの成果は、平成23年度に開催された岡崎大学懇話会主催の第11回「学生フォーラム」で地元特産物を利用した20種類以上のレシピ集として発信したことをはじめ、その後の本学科で地域と連携するさまざまな活性化事業取り組みの基礎づくりとなったこと、活動の中心的な役割を担うグループ“岡崎嬢”が発足したことなどが特記できる。今後の本学科における「社会人基礎力」教育の取り組みは、平成24年度から本学の全教育活動のさまざまな場面で推進するとの方針を踏まえて、学生へのガイダンスをはじめとして、自己目標ポートフォリオや振り返りシートおよび公開授業を通して充実を図る方針である。

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