第2節 コミュニティ政策学部の誕生

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(1)新学部の設立
学部設立決定までの経緯
平成10(1998)年4月、本学3つ目の学部であるコミュニティ政策学部が誕生した。この誕生には、学内、学外の多くの人々からの協力・貢献があった。学外では、北海道大学法学部の今井弘道教授、名古屋大学法学部の室井力教授にお世話になった。また、総合政策学部を日本で初めて開設した慶応義塾大学、地域政策学部を開設した高崎経済大学からは情報提供を得た。その結果短期間で新学部開設にこぎつけることができた。
本大学が、全国に先駆けてコミュニティ政策学部を立ち上げたのには、いくつかの理由がある。
第一に、学園の創始者が掲げた建学の理念、すなわち「庶民性と先見性」の実践である。この理念は時代を超えた普遍性を持つが、社会の変動期には特に人々に訴えるものがある。しかも、コミュニティの概念がこの理念と共通する中身を持つことから、建学の理念を具現化する学部ととらえられた。
第二に、昭和40(1965)年代後半以降の「地方の時代」の流れが、平成に入って地方分権の促進という形で具体化され、人々の目を地域に向けさせ、コミュニティに注目する土壌を耕してきたことである。
第三に、少子・高齢社会の進展、地域の防災体制の整備などにかかわって、市民が自立とともに相互扶助を必要とする「共生の時代」を迎え、コミュニティの創造、強化が要請されるようになってきたことである。
こういった変革の時代を背景に、急速な社会や人間の意識の変化が表れ、21世紀を迎えるに当たり、新たな社会に必要な人材を育て上げることが焦眉の急となってきた。当時、学園の副理事長・大学学長代行であった寺部曉は、グローバリズムの視点に立つ地方自治体政策学に深い関心を寄せていた。また、平成7~8年には、学園内に大学短大問題協議会が置かれて、新しい世紀に向かって大学が果たすべき貢献や、18歳人口の長期低減傾向に対処して大学がとるべき方策などについて討議がなされていた。
このなかで、地方・地域の問題を取り上げる学部を創設しようという方向に議論がしぼられ、「コミュニティ政策学部」という名称を持った学部創設が決定した。
8年3月に大学・短大の教職員全体会が豊田学舎で開かれ、新学部の構想についての説明が行われた。参加者からは、卒業生の進路についての質問があった。学部で養成する能力としては、「自分で考え、問題を発見し解決できる能力」「英語とコンピュータを操作できる能力」「よいコミュニケーションを築くためのプレゼンテーション能力」が強調された。

学部設置認可申請
コミュニティ政策学部の設置については、平成8年8月27日の学園評議員会および翌28日の学園理事会で承認された。これに基づき、9月26日に申請書類が文部省に提出された。翌9年1月16日には文部省で面接があり、同10月には文部省設置審議会による実地審査(17日に土地・建物・設備関係、21日に法人関係)が行われた。申請2年目の9年度は教員の審査が行われ、若干の手直しを経て、同年12月19日付で新学部設置が認可された。
学部設置認可申請のための学内検討組織として、新学部設置準備室(室長は寺部理事長)が置かれ、経営学部の武藤宣道教授がまとめ役を果たした。ここでは主に学部構想、人事、建物など、設置審への対応が議論された。新学部に対応する建物は竹中工務店が落札し、教職員との協議を重ねながら、10年3月、現在の8号館が竣工した。同時に図書館の増床も行われた。
成功のためには学部設置の趣旨を十分に理解し、これを実現・実行できる人材が必要である。当時、名古屋大学でコミュニティの研究と現場指導に20年以上携わっていた中田實教授を学部長候補として招聘できたことで、学部新設の作業は順調に進んだ。9年4月に、中田と同じく名古屋大学を退官した神谷信彦教授が着任するとともに、新たな学部開設準備室(室長は中田学部長予定者)を置き、学部運営に必要な事項(入試、施設設備、シラバス、学部規程など)についての詰めの作業を開始した。
学部の規模は、1学年の入学定員を190名、他に3年次編入生を20名とし、収容定員は800人とした。その内訳は、短大の改組転換により学生定員120名を振り替え、学生定員増の原則抑制という文部省の方針に対し、外国人留学生・帰国生徒を積極的に受け入れることで70名の純増が認められた。
学部の名に冠せられる「コミュニティ」という言葉については、学内でも文部省・設置審議会でも繰り返し問題とされたが、地域政策学部系との差別化を意識して、地域性を超えた超域コミュニティも対象としていることが強調された。他方、地元との連携の要請と学部趣旨の広報のため、8年5月に、学部に先立ってコミュニティ政策研究所が立ち上げられた。初代所長は寺部学長で、多彩な講演会やシンポジウムが頻繁に開催された(この詳細はコミュニティ政策研究所の項を参照)。
カリキュラムに沿った教員の確保については各方面に照会し、それぞれの分野での活躍を期待される教員が専任・兼任・非常勤で確保できた。
この学部がこれまでにない総合的な内容を持つものであったことから、設置審査と並行して就任予定専任教員会議を開き、学部の趣旨への理解を深めた。その第1回は9年4月19日に豊田学舎で、続いて第2回は10月4~5日に豊田市鞍ケ池ロッジで、第3回は設置認可後で、学部スタート直前の10年3月23日に、新装なった8号館会議室で開かれた。

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(2)その歩みと展望
学部のスタート
平成10年4月、コミュニティ政策学部は、261名の第1期生と初年度着任の23名の専任教員でスタートした。学部長は中田實、教務委員長は神谷信彦、学生委員長は後藤秀爾、就職委員長は岡田洋司、入試委員長は保田正毅であった。
学部長と4委員長よりなる学部運営委員会が設置され、学部運営の中核を担った。これらの常置委員会の他に、本学部はコミュニティ政策学の構築という特別の研究課題を持つことから、学部内に研究委員会を置き、コミュニティ政策研究所長の渡名喜庸安が委員長となった。本学部は、その設立の趣旨から学生とのパートナーシップを重視している。学生と教員との意思疎通を図る目的で学部広報誌「Community News」を刊行することにし、広報委員会の長に西山恵美が就任した。また、14名の留学生枠を持つことから、留学生との窓口となる国際交流委員会が経営学部と共同で置かれ、その委員長に本学部の林嘉言が就任した。
学部教育はセメスター制をとり、1年次では、少人数による基礎演習を軸に、グレード制をとった英語、全員にノートパソコンを持たせてのコンピュータ入門、そしてコミュニティにかかわる各界の現場より講師を招いて行われた総合科目「現代社会と人間」などによって、進められていった。
「現代社会と人間」は春セメスターの最初に開設され、教育・文化、地域、環境、福祉、国際問題などの区分けに従って、担当講師の人選が行われた。
初年度の最初の講義は、本学学長の寺部曉が立ってコミュニティが建学の精神に即するものであることなどを語った。教育・文化では愛知私学教職組連合委員長の寺内義和氏、名古屋劇団協議会事務局長(本学事務局長)の谷邊康弘氏が熱弁を振るった。地域枠では、本キャンパスが立地する豊田市逢妻地区コミュニティ会議の会長で当時豊田市地区コミュニティ会議会長連絡会会長を務めていた光岡光明氏、福祉では前三好養護学校長の清水弘勝氏、豊田市高齢福祉課長古井鎮信氏、環境ではごみ問題の現場の矛盾や運動を名古屋市の職員水野3生氏、国際問題ではアジア保健研修財団理事長の川原啓美氏、マスコミではエル・クラノ君殺害事件を扱っていた中京テレビディレクターの大脇千代氏、そして参議院議員でイスラム問題に詳しい鈴木政二氏の諸氏が、1回ずつ講義を担当した。

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学部設置2年度と3年度には、地域の教育運動について安城学園高校教諭の鳴戸達雄、吉見光三、地域では常滑市大野コミュニティの井上恭子氏、名古屋市緑区森の里自治会の小池田忠氏、福祉ではダウン症・染色体異常児童親の会代表の杉本直子氏、環境問題では藤前干潟を守る会代表の辻淳夫氏、中部リサイクル運動市民の会代表の萩原喜之氏、そして、地方政治で日進市の市会議員後藤尚子氏が講義を担当し、本学部の立ち向かうべき課題について、現場からの問題提起を行った。
2年度(平成11年度)には、新たに3名の専任教員が着任した。授業では、3年度から始まる専門演習と実習に備えて、コミュニティ政策を学ぶ方法の習得としての社会調査論、社会情報処理、外書購読が選択必修科目として始まった。しかし、2年度には少人数の演習系科目が置かれなかったため、学生との日常的な接触に欠ける面を生み出したことが問題点として残った。
3年度に当たる平成12年度には最後の4名の専任教員が着任し、スタッフは勢揃いした。授業では、基幹科目で毎週2回ずつ行われる講義として、春セメスター2科目(コミュニティ原論、コミュニティ政策)、秋セメスター2科目(コミュニティ設計論、行政法)が開講されて、本学部のめざす教育課題が鮮明に示された。週に2回ずつ行われるこれらの講義は、学生の関心の集中化という点でも有効であった。
設置3年度には演習および実習が始まり、多彩な専門家を擁する本学部の総合性と実践性がひときわ明らかとなった。これらの特徴は、コミュニティ現場での教育を要請していることである。その具体化が、選択必修科目のコミュニティ運営実習(2セメスター2単位)である。この年には、10名の専任教員がそれぞれの専門分野にかかわる組織や機関を実習の場に設定し、志望してきた学生それぞれ約10名が現場に出て実際に活動に参加し、あるいは調査を行った。実習先の組織・機関は、地域コミュニティ組織、社会福祉協議会、公民館、歴史資料館、スポーツクラブ、自然保護団体、行政機関、企業施設・事業であった。実際に社会人のなかで活動する経験は学生にとって得るものが大きく、この学部での目玉授業となった。この実習でつけた自信は、すぐに始まる就職活動にも連動していった。
実習科目には、他にコミュニティ設計実習と情報処理実習があり、現場の課題と密着したテーマと方法で授業が行われた。また専門科目では、伝統的な科目名称に「コミュニティ」を冠した科目(たとえば、コミュニティ福祉論、コミュニティスポーツ論、コミュニティメディア論、コミュニティ資源連関論、コミュニティ倫理、コミュニティ保健論、コミュニティリスク管理論など)を新設し、コミュニティ政策に即した教育の推進に努めた。
外部世界に対する関心(好奇心)が衰弱してきた現代の学生にとって、このような総合的な教育には当初とまどいが見られたが、学年が進むにつれてこの学部の個性として受け止められた。このようにして「コミュニティ世紀」たる21世紀を担うにふさわしい人材が育っている。

教員および職員の陣容
コミュニティ政策学部スタート時の教員および職員の陣容は、以下のとおりである。括弧内に初年度の担当科目を記す。*は基礎演習1・2を示す。なお、事務長以外の事務ポストは経営学部を含む豊田学舎に所属するものであるため、氏名は省略する。

学部長 中田實(現代社会と人間、*)

教授 大内義三(法学、民法、*)、岡田洋司(日本史、地域社会史、*)、神谷信彦(統計学1・2)、後藤秀爾(心理学、人間関係論、*)、沢恒雄(コンピュータ入門、コンピュータA1)、渡名喜庸安(*)、中島豊雄(体育実技A・B、体育講義、コミュニティスポーツ論)、西山恵美(英語A1・2)、林嘉言(*)、保田正毅(*)(以上10名)

助教授 井上匡子(日本国憲法、*)、佐藤秀樹(コンピュータ入門、コンピュータA1)、建石真公子(*)、都築くるみ(社会学、*)、唐亮(*)、ジョナサン・ノサカ(英語A1・2)、安井喜行(高齢社会論、コミュニティ福祉論、*)、矢部隆(生物学、*)、山崎丈夫(まちづくり論、*)(以上9名)

講師 三船毅(統計学1・2、政治学)、村林聖子(*)、山上博信(*)(以上3名)

事務長 服部平和

教授会の始動
初年度は1名を除き全教職員が新任であり、また、前歴の多様性に起因する共通理解の困難を克服する必要もあり、教員は本学の諸制度と教員相互の理解を深めることが重要であった。メンバー全員の議論への積極的な参加は特筆すべき成果であり、これが相互理解と学部事業の積極的な展開を可能とした。
学部の運営に関する事項は、学部長、またはあらかじめ運営委員会で審議したうえで、前記各委員会などから教授会へ提案された。
ここでは教授会の審議に特徴的な事項について述べることにする。

1、初年度はすべてが初めてのもので、課題処理の基本ルールづくりをしながら、日々の業務を処理するという2重の課題をこなさなければならなかった。
2、新学部の設置に伴って、想定してなかった問題や、細部にわたる手立てができていない問題が発生し、後追い的に対応しなければならなかった。教員研究費の中から拠出して、学部共通経費を設定し、学部機関紙「Community News」の発行、セクハラ問題講演会、オリエンテーションⅡなどに支出したことはその例である。また、日本語がまったくできない留学生の入学、定期試験で不正行為を行った学生への対処なども必要になった。
3、本学が「地域と共につくる」大学であり、本学部が「コミュニティ政策」学部であるということから、地域社会に開かれた学部にしていくための取り組みを重視し、安城市公民館と共催で市民公開講座を開くこととなった。これは、教員による高校訪問の問題と合わせて、学部の教育・研究・校務・社会的貢献という教員の任務のバランスを議論するきっかけとなった。
4、学部設置に際し、21名の留学生・帰国生徒の定員枠を設定したので、留学生のためのオリエンテーション合宿、支援ボランティア制、日本語の補習など、留学生の修学環境に特に配慮を要した。

『愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要』の刊行
中田学部長は、創刊の辞において、大要次のように刊行の意義を述べている。「本学部は、広く政治・経済・社会・文化・環境の世界でコミュニティの原理が形成・展開・確立していくための政策目標と政策過程および政策手法を理論的、実践的に解明することを課題としている。(中略)本学教員の専門領域はきわめて多彩であるが、それらを総合し、新しいコミュニティ政策学へ結晶化させていくことが、われわれの課題である。本紀要は、この課題の具体化を促す媒体であるとともに、その成果を示すバロメーターでもある。」
本紀要の刊行は、以上のような位置づけのもとに、平成10年度から年1回の発行(B5判、約200ページ。編集は研究委員が担当)で開始された。紀要名称は、『愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要』とした。紀要の内容は、論文、研究ノート、調査報告、判例批評、翻訳、書評に区分され、末尾には学部教員の年間業績を掲載している。ここでは、各号の原稿名および著者を紹介する余裕はないが、毎号、学部教員を中心に約10名からの寄稿で定期刊行を維持している。
本紀要が「政策系学部の一つとして実践的性格を失うことなく、(中略)新たな学問の創造とその政策的実現に貢献できる学術機関誌となる」(同創刊の辞)ことをめざして、引き続き努力していきたい。

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順調に滑り出した開設初年度
新しい学部に新入生がスムーズに適応できるように、留学生に対しては入学式に先立って、平成10年4月2・3日の両日、合宿オリエンテーションを実施した。また、新入生に対するオリエンテーションは4月5日~7日に実施されたが、4月28日、学生の自治活動の活性化を図るため、オリエンテーションⅡが学生自身の企画により、「キャンパス内オリエンテーリング」として実施された。
5月18日には学部広報委員会が学部広報誌「Community News」の第1号を発行した。巻頭で中田学部長は「学部コミュニティづくりの促進剤として『Community News』を育てよう―自立と共生の学部コミュニティづくりに参加を」と学生に呼びかけた。広報委員会には学生編集スタッフも加わり、年4回の発行を行った。これ以後「Community News」は学部内のコミュニケーション・ツールとして重要な役割を担っていく。
学部の開設を祝う祝賀会が7月15日、杉浦正行安城市長、小出忠孝日本私学協会副会長をはじめ学外関係者250名の参加を得て、8号館多目的ホールにて盛大に行われた。また当キャンパスの所在する豊田市逢妻地区の人々から、今後の学部の教育研究に理解と協力を得るため、7月28日、同地区コミュニティ会議の関係者31名をキャンパスに招き、学部見学会を実施した。
7月7日から29日にかけて教員による高校訪問が行われた。その目的は本学部創設の理念、教育内容の特色、入試制度、就職支援活動(含資格取得)、学生生活などについて高校の進路担当の教員に説明し、高校サイドの本学部への理解を得ること、高校サイドからの本学部への質問・要望事項を聴取することにあった。訪問校は愛知県下の普通高校83校、名古屋地区日本語学校9校であった。
学生の教育面では、基礎演習Ⅰの報告会が9月10日に、基礎演習Ⅱの報告会が翌年の2月9日にそれぞれ行われた。これは基礎演習の学習成果を発表し相互理解を深めるとともに、学生のプレゼンテーション能力を高めることを目的としている。
10月21日には「学部教育を考える会」が運営委員会の主催で開催された。本学部のめざすコミュニティ政策学教育とは何か、どのような人材を養成するのかについて、教員間の一致点を見出すため自由な形で論議を行った。この会は、諸学の列挙ではない総合的な教育を創造しようというもので、年3回開催された。
12月5日には、学部開設記念と銘打った公開講座「これからのコミュニティ―コミュニティの現在と将来方向を考える―」が、豊田市教育委員会・地区コミュニティ会議会長連絡会の協賛を得て、豊田市で開催された。これは社会的要請にコミュニティ政策学部が応えたものである。
また、他学部・短大5科に先駆けて、本学部に「セクシャルハラスメント対応窓口(平成11年度より「セクシャルハラスメント相談窓口」)」が設置され、学生・教職員への啓発活動が展開された。これは、「セクシャルハラスメントのない教育・職場環境の実現は、お互いを人間として尊重しあう、差別のないコミュニティづくりとつながるものである」という認識に基づくものである。
これら初年度の学内外を対象としたさまざまな活動は、次年度以降に引き継がれていくことになる。

学部発展への展望
学部設置2年度の折り返し時期が近づくとともに、学部教育のあり方、問題点などを論議するため平成11年11月に「教育問題洗い出し委員会」が発足した。「当面の問題」という形で当委員会がまとめた項目は、1.履修3モデルの学生への周知、2.基礎演習の性格付けの検討と明確化、3.留学生に対する指導体制などであった。これらの議論を踏まえて、長期的課題および完成年次以降に行うべき課題を検討するため、翌年の7月に「学部改革構想検討委員会」が設置された。検討委員会は同年12月、13年4月の2度にわたって「中間報告書」を発表し、学部教育の今後のあり方について一定の方向を提示した。
学生への就職支援活動も2年度の後半から始まり、第1期生が3年生になった12年度からはそれが本格化した。まず公務員志望学生のために「公務員試験合格講座」を開設するとともに、特別支援体制として「公務員の会」を立ち上げた。この会の運営には学部長の委嘱する4名の委員が当たり、各種事業を通じて公務員志望学生の総合的な指導・援助・助言を行うものである。
また「就職ガイダンス」を13回、第一線で活躍している企業家を招いての「就職講演会」を3回、それぞれ開催した。更に本学部生の就職PRのため、11月24日、名古屋駅前マリオットアソシアホテルで企業への学部紹介企画「企業・官公庁・団体様と大学の懇談会」を開催した。これには企業、官公庁、NPOなどの諸団体から約100名が参加をした。そこでは、第1期生がこれまでこの学部で学んできた内容を、コミュニティ運営実習を中心に学生自身が作成したパワーポイントの画面を使って報告した。それは、若々しい感動を呼び起こした。この懇談会に出席した約100社の企業を対象に、12月中旬から3月末に全教員による企業訪問を実施した。
学生が在学中に取得できる各種資格を検討するため、10年11月に、就職委員会の専門委員会として資格小委員会が発足した。小委員会は「コミュニティ診断士」という本学独自の資格の創設に向けて、諸条件の整備を図ることになった。
地域の要望に応える学部の社会的貢献活動も更に広がりを見せた。安城市公民館と協議の結果、安城市民公開講座を開設することが決まり、安城学園高校、愛知学泉短期大学の教員とも協力して、5月8日から8月21日まで、土曜日の午後、計8回の講座を実施した。この市民公開講座は12年度以降も継続して行われている。また豊田市の公開講座については、コミュニティ政策研究所との共催事業であるが、市役所自治振興室と協議して、地区コミュニティ会議のリーダー研修として実施された。
コミュニティ政策学の確立とその理論的、政策学的発展のためにはコミュニティ政策学会(仮称)の設立が必要である。この認識のもとに、11年12月、コミュニティ政策学会(仮称)調査会が発足した。コミュニティ系大学の学部・学科の調査を経て、13年3月、「コミュニティ政策学会設立呼びかけ人会」が名古屋ガーデンパレスで開かれ、学会名を「コミュニティ政策学会・研究フォーラム」とすることに決定した。この「学会・研究フォーラム」は14年6月に設立された。これから本格的に活動することにより、本学部の新たな発展の地平が拓かれるものと期待される。

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