第2節 法人の管理・運営

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(1)法人の組織体制

設置校の組織改編

家政学部3学科体制

昭和41年(1966)に誕生した愛知女子大学は、安城学園大学、更に愛知学泉大学へと名称を変更し、時代の変化に適切に対応すべく教育課程を展開してきた。

令和2年(2020)4月、家政学部家政学科は従来の1学科専攻制からライフスタイル学科・管理栄養学科・こどもの生活学科の3学科体制に改組した。

家政学部及び各学科の設置の趣旨及び育成する人材像は次のとおりである。

家政学部は昭和41年(1966)の開設以来、家政学の専門知識と技能を持った女性の社会進出に大きく貢献してきた。本学部の目的は、家政の基礎となる経済的・政治的・文化的に自立し、地域と国際社会に貢献する人材を育成することである。家政学部の教育目標の下、生活者の視点から「生活科学」「食物・栄養学」「被服学」「住居学」「児童学」の5分野を科学的に教育研究することにより、家庭生活の衣・食・住・子育てと密接に関わり、生活環境の向上を目指し、生活をデザインし、広く社会全体の人間生活の進歩・発展に貢献できる人材の育成を目指した。

各学科の教育目標及び育成する人材像は次のとおりである。

ライフスタイル学科では、これからの社会の新しいライフスタイルのデザインを提案することによって、人々の日常生活を衣・食・住及び地域活性に関する専門的知識・技能を身に付け、地域再生に貢献できる人材を育成する。

管理栄養学科は、管理栄養士の資格を生かし「食」の専門家として疾病治療・重症化予防・疾病予防、食育と食環境を整えるための高度な知識と技能を持ち、人々の日常生活を健康の面から支援できる人材を育成する。

こどもの生活学科は、小学校教諭・幼稚園教諭・保育士の資格を生かして子どもたちの学力及び社会性・社会力の基礎基本を育てることによって、人々の日常生活を子育ての面から支援できる人材を育成する。

家政学部は、将来的にも大学を取り巻く環境の変化・社会のニーズに適切に対応し、広く社会に貢献する人材育成のための教育を展開させていくことを目指している。

豊田学舎の閉鎖

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昭和62年(1987)、愛知学泉大学経営学部を豊田市大池町の高台に開設して以来、コミュニティ政策学部、現代マネジメント学部へと時代の変化・社会のニーズに応えるべく学部に改組し、社会に求められる人材を育成してきた。キャンパスの周囲には、天然記念物の「ウシモツゴ」が生息し、美しい自然環境の中にある。

しかし、地域性や社会の変化等による志願者の減少により、現代マネジメント学部を閉鎖せざるを得なくなった。在学している学生を卒業まで丁寧に指導し、社会へ送り出すことを最優先事項として取り組んだ。平成29年(2017)3月の理事会において平成31年(2019)以降の募集停止を決定し、平成29年(2017)4月25日文部科学省にその旨を報告した。令和4年(2022)3月31日、本学部を閉鎖した。

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学舎の閉鎖を惜しむ同窓会により、様々な企画が催された。その一つとして、学舎を応援していただいた地域の方々への感謝の気持ちを込め、令和3年(2021)11月から令和4年3月までの約半年間、夕方校舎をイルミネーションで飾った。また、令和4年3月12日(土)には、多くの退職教職員を交え、昔を懐かしみ楽しい交流会が催された。豊田学舎の数多くの思い出は卒業生・教職員の心の中にいつまでもしっかりと刻み込まれていることである。

研究所の改廃

研究所は、愛知学泉大学における学部の変遷とともに、平成24年度(2012)以降は次のように推移した。

平成24年(2012)4月1日

学園創立100周年を記念し、地域社会デザイン総合研究所を愛知学泉大学附置の研究所として豊田学舎内に置く。

平成26年(2014)3月31日

愛知学泉大学生活文化研究所を廃止する。

平成26年(2014)4月1日

ライフスタイルデザイン総合研究所を愛知学泉大学岡崎学舎内に置く。

寄附行為第3条に掲げた学校法人安城学園の目的を実現するために、「建学の精神」「社会人基礎力」「pisa型学力」を核にした教育を推進するための教育研究活動と「ライフスタイルのデザイン」をモチーフとした総合的な研究活動を行うことを目的とする。

平成30年(2018)3月31日

ライフスタイルデザイン総合研究所を廃止する。

平成30年(2018)4月1日

愛知学泉大学潜在能力開発研究所を設置する。

愛知学泉大学及び愛知学泉短期大学附置の研究所とする、寄附行為第9条に掲げた本法人の教育方針に基づいて、こども・おとな・地域の3つの潜在能力開発事業を推進する上で必要な教育に関する研究活動を通して地域及び国際社会に貢献することを目的とする。

法人本部の組織改編

法人本部は理事長室及び法人事務局で構成する組織である。学校法人安城学園寄附行為第3条に規定する本法人の目的の達成のため、令和3年度(2021)現在において、理事長室は、学園全体の法務業務、理事長の特命事項、理事長の秘書業務、学園全体の広報業務、大学及び短期大学に関するIR情報に関する業務、学園全体の芸術文化に関する業務を行っている。法人事務局は、1課が学園全体の総務業務、人事業務、労務業務を通して学園の管理運営にあたっている。2課は、学園全体の経理業務、財務業務を通して学園全体の管理運営にあたっている。学校法人安城学園管理規程に基づく法人本部の事務分掌に大きな変化はない。すなわち、学校法人安城学園の教育は、これまで学園共通の教育、大学、短期大学、高等学校、幼稚園独自の教育を展開してきている。

このうち、学園共通の教育は平成27年度(2015)の報告討論会での寺部曉理事長の基調講演にあるとおり、これを、建学の精神を核にした教育、pisa型学力を核にした教育、社会人基礎力を核にした教育として改めて定義している。学校法人安城学園の教育とは、学生・生徒・園児、そして、学校法人安城学園に勤務する職員の「智、徳、体、感、行」を鍛え上げるものである。この教育目標の達成のため、法人本部はこれまで一貫して、組織の管理運営上不可欠な総務業務、人事業務、経理業務、財務業務、法務業務、企画業務を遂行している。

近年の法人本部における課題は、学園内外に対する広報の質の向上を実現するにあたり、学園のホームページにおいて公表している学園に関する情報の公表をこれまでの紙や画像といった従来型の広報媒体に加え、近年急速に普及しつつあるインターネット上の動画による情報の公表により、学園の教育情報、組織情報の更なる質の向上を実現することである。

IR情報に関する事務については、大学及び短期大学の教育情報や組織情報の情報収集・蓄積や学生の学修成果をはじめとする教育機能の調査分析の更なる質の向上を果たすこと、大学・短期大学を対象とするIR情報の収集に加えて、高等学校及び幼稚園の教育情報の収集及び蓄積を果たすことである。

また、法人事務局の課題は、平成30年度(2018)に国が推奨している働き方改革の推進に向け、日常業務の生産性を向上し、長時間労働をなくすことである。具体的には令和元年度(2019)に学園に勤務する全ての職員の勤務時間の状況を客観的に把握するよう、タイムカードシステムを導入している。また、令和2年度(2020)に法人本部にフレックスタイム制を試験的に導入し、勤務時間の調整が可能な期間を3か月に設定し、より働きやすい環境の整備に努めている。

令和2年度は新型コロナウィルス感染症の拡大により、これまでの対面型学校教育の遂行が困難な状況が生まれた。これに伴い、国をはじめとする行政手続事務の簡素化・オンライン化が加速したことを受け、法人事務局においても、従来の総務業務や経理業務の在り方を見直し、公文書に対する公印の押印を省略する範囲を拡大するとともに、紙媒体での公文書の提出に代えて、データ化された公文書をオンラインによる提出が主流になりつつある。また、3密(密集・密接・密閉)を避けるため、研修会や会議は従来の集合型からオンライン型によるものが浸透するようになった。このような時代の変化を受けて、本法人においても学内会議の一部はオンライン型会議にて対応している。

(2)法人の財政

10年間の財政

財政健全化計画の進捗

平成22年度(2010)から平成27年度(2015)までの5か年にわたる第1期財政健全化計画スキームでは、学生・生徒・園児数の募集目標を6,200人以上とし、学園全体の教職員数を適正規模である340人以下とすることとした。すなわち、これらの指標を設定して、「事業活動収入内での支出及び予算内での支出に努める、人件費の適正化に努める、学生・生徒・園児の確実な募集(充足)等に努める」とした。しかし、各指標の達成は困難であるとの理事会の判断を受けて、新たに第2期経営改善計画(計画期間:平成29年度(2017)から令和3年度(2021))を策定し、継続して経営改善の実現に努めることとしている。第2期経営改善計画では、学生・生徒・園児数の募集目標を5,200人以上とし、学園全体の教職員数の適正規模を290人以下とすることとしている。これまでの学生・生徒・園児の募集目標に対する実績、学園全体の教職員数の適正規模に対する実績は次の表のとおりである。

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授業料等の無償化

令和元年(2019)10月の消費税増税の財源等をもとに、月額上限を2万5,700円として幼児教育無償化が開始された。また、令和2年(2020)4月から高等学校等就学支援金の支給上限額の引上げ等の制度改正(私立高等学校授業料の実質無償化)が行われるともに、高等教育の修学支援新制度が開始された。このことにより幼稚園及び高等学校における公立学校と私立学校間の授業料等に関する格差が是正されることとなり、令和2年度以降の園児募集及び生徒募集は堅調に推移している。また、大学及び短期大学の修学支援新制度の活用実績は、令和2年度は約5,500万円、令和3年度は約6,400万円と堅調に推移している。

日本私立学校・振興共済事業団からの借入

本学園は、平成11年度(1999)から平成13年度(2001)にかけて大学及び高等学校の校舎の改築事業を実施している。改築事業の実施にあたっては日本私立学校・振興共済事業団からの借入を実施している。借入にあたっては返済期間20年で融資を受け、令和元年度から令和3年度にかけて、順次借入金を完済している。大学及び短期大学の校舎の耐震対策事業として平成30年度(2018)に校舎改築事業を実施している。事業実施にあたり、日本私立学校・振興共済事業団からの借入を実施している。借入にあたっては返済期間20年で融資を受けた。なお、借入金の元本及び支払利息の支払総額の全額を特定資産として引き当てている。

改正学校法人会計基準への対応

平成25年(2013)4月に学校法人会計基準の一部を改正する省令が公布された。これにより、平成27年度以降の会計年度から日常の会計処理及び計算書類の作成に新会計基準が適用となった。「学校法人会計基準」に定められている計算書類は、資金収支計算書、事業活動支計算書、貸借対照表である。また、私立学校法によりこれらの他に財産目録、事業報告書を作成することになっている。

財政改善に向けた取り組み

電力自由化への対応

日本における電力の小売自由化は、平成12年(2000)に始まった。はじめは、「特別高圧」区分の大規模工場やデパート、オフィスビルが電力会社を自由に選ぶことができるようになり、新規参入した電力会社「新電力」からも電気を購入することが可能になった。その後、平成16年(2004)には小売自由化の対象が「高圧」区分の中小規模工場や中小ビルへと徐々に拡大した。そして、平成28年(2016)からは、「低圧」区分の家庭や商店などにおいても電力会社が選べるようになった。

このようなことを背景に本学園では平成26年(2014)に高圧区分の電力購入を地域の電力会社から新電力会社へ切り替えている。また、低圧区分についても平成26年から電力購入を新電力会社への切替えに順次取り組み、平成28年には全ての電力を新電力会社から購入するようになった。この間、高圧電力の契約については、毎年競争見積に基づき業者を選定している。この結果、光熱水費の電力分は地域の電力会社との契約時期の電気使用料が年額約1億円を超えていたことと比較して近年は約6,000万円まで電力使用料が削低減されている。

奨学生について

令和元年10月の消費税増税の財源等をもとに、幼稚園の授業料は実質無償化となった。このことに伴い幼稚園の奨学生制度は令和元年9月末をもって廃止となった。また、令和2年4月から高等学校等就学支援金の支給上限額の引上げ等の制度改正(私立高等学校授業料の実質無償化)が行われるともに奨学生規程及び授業料等の減免に関する規程を見直し、国の就学支援金制度、県の授業料減免制度を全面活用することとした。

(3)教育環境の整備

校地校舎・施設設備の整備

平成23年(2011)3月に東日本大震災が発生し、これを契機として国においては平成25年(2013)11月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が改正され、平成28年(2016)3月には「建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針」が改正された。学校施設は「建築物の耐震改修の促進に関する法律」により、大規模建築物の適用範囲が拡大し、所有者による耐震診断及び耐震改修を実施することが努力義務となった。

一方、大学は、学校教育法及び同法施行規則により学生の教育研究環境を含めた教育研究活動等についての情報を公表することが求められている。本学園においては、これまでも学園の施設の耐震診断を実施するとともに、耐震診断の結果、耐震対策が必要な施設に対して耐震補強事業を実施している。これに加えて、平成24年度(2012)には安城学園高等学校における防災対策事業として、校舎南館の付近にマンホールトイレ、貯水槽、非常用浄水器を設置している。平成26年度(2014)には大学及び高等学校の体育館の天井の耐震性診断調査を実施している。平成29年度(2017)には大学及び高等学校の体育館について、天井材をはじめとする非構造部材の落下防止対策を実施した。平成30年度(2018)には大学岡崎学舎の施設のうち耐震対策が必要な校舎に対する耐震改修事業を実施し、新しく校舎を建築した。この結果、平成30年度現在において、本学園の校舎等の耐震化率は100パーセントとなった。また、この状況は学園のホームページに公表している。

以上のように東日本大震災による施設設備の甚大な被害を契機として、これまで以上に施設設備の耐震対策を促進し、施設の地震に対する安全性の確保が喫緊の課題となった。これと同じくして、福島県において発生した原子力発電所のメルトダウンは、資源の乏しい我が国にとって、電気料金のコスト、地球温暖化、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を踏まえた現実的かつバランスの取れたエネルギー源の一つとして、また、日本の技術力に裏付けされた安全性に基づく原子力発電の活用を前提とする日本のエネルギー政策にとって大きな転換期となり、空調をはじめとする施設設備の省エネルギー化が進行した。本学園においても校舎等に整備する空調機器の老朽化に伴う入替にあたっては、省エネルギータイプの空調を整備している。

情報ネットワークの補強

日本におけるインターネットサービスは定額料金・常時接続というブロードバンドサービスが定着し、平成15年頃(2003)から光ファイバーを活用するより高速のFTTHサービスが普及した。本学園のインターネット通信環境も同様の時期に光ファイバーを活用するFTTHサービスを導入している。また、インターネットサービスの高速化が進む中で、徐々に写真等の画像や動画といった容量の大きなコンテンツを閲覧・投稿できる環境が整備され、平成22年(2010)には国内でモバイル端末からのインターネット利用者数がパソコンからの接続者数を超えた。その中で、平成27年度(2015)に学園全体の情報通信環境を見直し、これまで最大100メガビット毎秒の通信速度のサービスから最大1ギガビット毎秒の通信速度のサービスに移行した。

令和2年(2020)3月頃に始まった新型コロナウィルス感染症の拡大は、日本における教育現場にも多大な影響を与えた。これまでの学校現場におけるインターネットサービスはホームページによる情報公表やメールサービスの活用、サーバーの構築による学内情報の共有等、サービスの主な利用者は教職員であった。令和2年は、これまで主流であった対面型授業・対面型行事に代わりオンラインによる授業の展開、3密(密集・密接・密閉)を回避するため保護者の行事の参加をやむを得ずオンライン動画の視聴等に限定する対応が、日本全国で展開された。学校におけるインターネットサービスはこれまでの教職員による利用に加えて、学生・生徒・園児、又は、その保護者が学外から利用することを想定した環境を整備することが喫緊の課題となった。高等学校では、令和2年度に学内施設における無線LAN環境を完備し、タブレット端末を活用した双方向型授業を可能とする教育環境を整備した。一方、大学及び短期大学においては、令和3年度(2021)に学内全域での無線LAN環境を整備し、時代の変化に対応している。

(4)管理運営体制の整備

労働環境の整備

高年齢者が少なくとも年金受給開始年齢までは意欲と能力に応じて働き続けることのできる環境の整備を目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の一部が改正され、平成25年(2013)4月1日から施行された。学園では高等学校教諭について、60歳の定年退職後の再雇用制度を平成24年度(2012)から導入し、高年齢者の雇用確保措置を実施している。

平成25年(2013)4月1日付改正労働契約法が施行され、有期雇用労働者に対する無期転換ルールが規定された。これまでの有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにしている。

令和元年(2019)には、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準表が4月から順次施行となった。時間外労働の上限規制、年次有給休暇の確実な取得のために年10日以上の年次有給休暇を付与する労働者に対して、年5日については使用者が時季を指定することとなった。また、フレックスタイム制の拡充により労働時間を調整できる期間がそれまでの1か月から3か月へ延長となり、より柔軟な働き方の選択が可能となった。

改正労働安全衛生法により、労働者が50人以上いる事業所では平成27年(2015)12月から毎年1回、ストレスチェックをすべての労働者に対して実施することが義務化となった。本学は平成28年度(2016)にこれに係る規定を整備し、この検査を実施している。

平成27年(2015)10月以降、国民一人ひとりにマイナンバー(個人番号)が通知された。

教職員の適正な勤怠管理に資するため令和元年(2019)5月に従来の紙媒体の出勤簿に代えて電子タイムカードによる勤怠管理へ移行し、教職員の出勤時刻、退勤時刻を記録し、勤怠管理体制を整備した。

経理業務の効率化

平成26年度(2014)は、複数の学校法人における不正会計が明るみになり、新聞やマスコミによって大きく報道された年であった。平成26年10月に発覚したのは、学校法人が学校法人とは別の団体である後援会を通じて学校法人の保護者等からの納付金の寄付を受けていたという事例である。また、平成27年(2015)3月には学校法人が設置する学校における簿外の預り金を利用した不正支出であった。

このことを受け、本学の経理事務における内部統制の強化を図ることとし、設置校における保護者からの収受金の網羅的調査の定期の実施、寄附金を募集する場合は、後援会等によらず、すべて学校法人が直接処理することを改めて徹底することとした。これらの対応により、本学の経理事務は平成27年度(2015)からその事務量がそれまでと比較して飛躍的に増加したため、決算事務において決算値確定に所要する時間も増加した。その結果、例年5月に行われる理事会及び評議員会への決算報告の準備に大変な労力を要する状況が続くようになった。

このような状況の中、令和元年度(2019)の監事による財務監査において、経理事務の現状の問題点を把握するとともに業務プロセスを見直し、業務の効率化の検討を進めるとともに決算値確定の早期化を果たすよう改善要請がなされた。このことへの対応として令和2年度(2020)に外部有識者の助言の下、経理事務の効率化に向けた検討を進め、帳簿作成業務をこれまでの人による1品1葉型の帳簿作成から機械操作により一度にまとめての帳簿作成も見直しを図り、同年度の下期から実務の切替えを進め、効率的な経理業務の定着に取り組んだ。令和3年度(2021)現在において、経理事務の効率化は定着し、決算値確定の早期化を果たしている。

令和元年(2019)11月には給与明細をこれまでの紙媒体から電子化へ切り替えている。これにより、給与明細書の発行業務に所要する時間数を大幅に短縮し、業務の効率化を実現している。令和2年度(2020)は、日本において、新型コロナ感染症の拡大防止の観点を含め、テレワークの推進や諸手続きのオンライン化への移行、公印の省略など既存の定型業務の在り方の見直しが進んだ。これに伴い、経理事務や総務事務における国や自治体等外部団体への報告書をはじめとする書類の提出方法はこれまでの郵送からオンラインへ移行しつつある。

(5)教育の質保証に向けて

ガバナンスの強化

創立以来この110年間、本学園は時代と社会の変化に適応してきた。戦後の学制改革の際も大きな影響を受けたが、一方、経済のグローバリゼーションを起点として、1990年代から始まっている政府主導の教育改革は現在も進行中であり、少なからず本学園にも影響を与えようとしている。そして、更なる少子化社会が想定される中、これからの時代に生き残るために、平成29年(2017)に学校法人の憲法ともいえる寄附行為を大幅に変更した。

新しい寄付行為では本学園の目的を「創立者が目指した経済的に自立できるだけではなく、政治的にも文化的にも自立できる社会人の育成」とし、本学園の行う事業を「こどもの潜在能力開発事業」「おとなの潜在能力開発事業」「地域の潜在能力開発事業」の3つに整理した。

加えて、教育目的と教育目標の他に教育方針も大切であると考え、この教育方針を新しい寄付行為に明記した。寄附行為に教育方針を記載しているのは、全国でも恐らく本学園だけであろう。

一方、文部科学省では、私立学校が今後も社会からの信頼と支援を得て重要な役割を果たし続けるために、学校法人による自律的で意欲的なガバナンスの改善や経営強化の取組みと、情報公開を促すとともに、学生が安心して学べる環境の整備を含めた改善方策が検討された。これを受けて令和元年(2019)に私立学校法の一部が改正された。

この改正では、学校法人における役員の責任の明確化、監事の牽制機能の強化、情報公開の充実、中期的な計画の作成、破たん処理手続きの円滑化等が新たに規定された。これに合わせて本学園でも令和2年(2020)に寄附行為の一部を改正し、この動きに対応できるようにした。

ガバナンス・コードの策定

経済界では平成27年(2015)に金融庁と東京証券取引所が共同で「コーポレートガバナンス・コード」を公表した。これは、上場企業が行うコーポレートガバナンス(企業統治)におけるガイドラインとして参照すべき原則・指針を示したもので、各企業が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うことを促すものである。

一方、教育界においても、大学等が自律的なガバナンスの下で経営力強化と経営の透明性向上に努め、社会の理解と支援を得られるようにすべきとの考えが広まり、日本私立大学協会や国立大学協会などは、令和元年(2019)からそれぞれが大学法人版のガバナンス・コードを策定し始めた。

ガバナンス・コードへの取組みの考え方は、「コンプライ・オア・エクスプレイン」である。何らかの事由でそれを遵守(コンプライ)しない場合は、ステーク・ホルダーにその理由を説明(エクスプレイン)することが求められている。大学法人版のガバナンス・コードも、学生や保護者を中心としたステーク・ホルダーに対する説明責任を積極的に果たすとともに、法人の運営方針や姿勢を主体的に点検し、大学の健全な成長と発展につなげることをねらいとしている。

その後、私立大学等を設置する学校法人は、これら各教育団体によるガバナンス・コードをガイドラインにして、各法人の実情に合わせた独自のガバナンス・コードを策定・公表し始めた。令和3年度(2021)には、文部科学省が私立大学向け経常費補助金の算定基準の一つに、ガバナンス・コードの遵守に対する項目を追加したこともあり、その動きは加速している。本学園も令和2年(2020)に「学校法人安城学園ガバナンス・コード」を策定し、学園のウェブサイトで公表している。策定後は、定めた遵守項目に対する取組みの実施状況を定期的に点検し、その結果や今後の対応方針を公表していく必要がある。

中期的な目標の設定

平成25年(2013)に策定した中期経営改善計画の流れを受けて、平成29年(2017)に令和3年度(2021)までを対象とする第2期経営改善計画を策定した。この経営改善計画では、安定的な財政基盤の確立に向けて学園全体の在校生の適正規模を5,200名とし、この規模を実現するための教育目標と、この規模に見合う教育環境を設計した。

また、この経営改善計画に合わせて設計された第2期財政健全化スキームでは、事業活動収入に占める事業活動支出の比率(事業活動収支比率)を80~90パーセントの範囲に収めることを目標とした。これは、本学園が安定して存続するための一つの指標である。当面の課題は事業活動収支比率を90パーセント以下に抑えることとし、このための具体的な数値目標として、学園全体の事業活動収入は49億円以上、事業活動支出は43億円以下とした。

このスキームを実現するために、各設置校の会計では人件費と人件費を除いたその他の経常支出に対する上限を定め、その金額に合わせて毎年度の予算案を作成し、その執行状況を定期的に点検した。

令和4年(2022)3月の理事会では、令和4年度(2022)から令和8年度(2026)を対象とした第3期経営改善計画と、その改善計画に対する中期目標を策定した。

第3期経営改善計画では、大きな枠組みとして教育に関する目標を、「自学・共学システム『学びの泉』の本格的な開発・実践を通して智性・徳性・身体・感性・行動をバランスよく鍛え上げることによって、生涯にわたって自ら学び続ける能力と共に学び続ける能力の基礎を身に付けることをもって、本法人の教育目標の実現に寄与する」こと、管理運営に関する目標を、「寄附行為、ガバナンスコード及び私立学校法等に基づいて、管理運営体制の基礎を構築する」こと、財務に関する目標を、「本法人の持続可能性を担保できる財務体質の基盤を確立する」こととした。そして、これらの各目標に対して、それぞれ質的目標、量的目標、標準化および差別化のための目標を定めるものとした。

IR室の創設

前述の通り私立学校を取り巻く環境は厳しさが続く状況の中、学校運営においてエビデンスに基づく政策判断の重要性が高まり、そのための支援機能として平成20年(2008)頃からIRに注目が集まり始めた。

教育界におけるIRとは、インスティテューショナル・リサーチ(Institutional Research)の略で、教育機関において機関に関する情報の調査、分析を実施する機能または部門のことである。機関情報を1元的に収集、分析することで、機関が計画立案、政策形成、意思決定を円滑に行うことを支援し、また、必要に応じて機関内外に対し機関情報の提供を行うことを目的としている。

平成25年度(2013)から始まった私学助成制度の一つである「私立大学等改革総合支援事業」では、IR担当部署の設置が加点項目の一つになっている。そして、平成30年度(2018)から始まった私学助成制度の「教育の質に係る客観的指標」でもIR機能の整備が算定基準になっており、日本の高等教育機関においては、もはやIR機能は標準のものとして求められるようになってきた。

本学園では、平成30年(2018)8月に安城学園IR室を創設した。大学・短期大学だけでなく、高校・幼稚園も含めて学園全体におけるIR活動ができるように法人直下の部署とし、事務局を法人本部の理事長室に設置して、初代IR室長にはその職員が着任した。

IR活動の基本的なプロセスは、調査内容の設計、必要なデータの収集、収集したデータの分析、分析結果の報告である。意思決定等をする際の判断材料を作成するために、従来から各教職員が定期的に、または必要に応じて臨時的に行っていることではあるが、これを学校運営に必要な1機能として位置付けたわけである。

IR室として、まずは補助金等で必要に迫られている大学・短期大学においてIR活動をスタートさせた。各分掌から提供してもらった情報や、実施した各種アンケート結果などを統合して分析することで、教務・学生・入試・就職などといった既存の枠を超えて、学生の学修等さまざまな成果や課題を可視化することが可能となり、教学マネジメントの一翼を担っている。

また、短期大学は令和元年(2019)9月から、大学家政学部では令和2年度(2020)4月から、IR室の専門部会としてそれぞれのFD委員会に加わることで、設置校との連携をより深めて、IR機能の充実を図っている。

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