第1節 図書館の足跡

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(1)豊田図書館の誕生
経営学部図書館の歴史は15年前の昭和62(1987)年、経営学部が豊田キャンパスに開設されたとき、同時に始まった。それ以来10年間、学部所属の図書館として学内外の研究者、学生、学園関係者に利用されてきた。この経営学部図書館も、4年前の平成10(1998)年、コミュニティ政策学部の設置とともに、両学部の図書館ということで名称を新たにし、豊田図書館として再出発した。12年からは、対外業務などについて、従来岡崎図書館で行ってきた大学図書館としての役割を担うことになった。

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図書館にとってもっとも必要な予算に関して言えば、この5年間は厳しい状況が続いている。どの大学もかつてのように予算が潤沢ではない。その学部や大学院に合致する書籍、雑誌類を収書し、選別して、少ない予算を有意義に活用する方策を考えるようになっている。その結果、分野外の選書、雑誌選択は自由にできなくなり、お互いに他大学や他機関にゆだね譲っていくしかなくなっている。こうしたなかで考えられてきたのが、コンソーシアムの設立である。
大学図書館は寺部曉学長の標榜する政策、すなわち建学の理念と精神にうたわれる庶民性と先見性から引き出される考え方、政策に基づいて業務を推進してきた。具体的にはその政策のひとつ「地域と共に創る大学」から演繹される政策方針に照準を合わせてきた。これが大学の地域への開放である。
大学は従来、限定された関係者に利用可能な施設となっていたが、インターネットのオンライン上でだれもがホームページに接続可能な時代、限定開放は地域とともに生きる大学にはふさわしくない。
より多くの人たちに大学の知的財産を共有してもらい、同時に大学の情報を発信・着信していく方法に積極的に取り組んできた。これらの方法を十分可能にするには、内部的サービスを同時に強化することが必要である。しかし、残念ながら近年は、大学の人員は望む方向に進んでいない。図書館という専門知識を必要とする職場は専門の知識を持った司書が利用者に積極的に接近し、親身に対応することが必要である。司書はIT時代に必要なコンピュータ操作能力も身に付けていなければならない。また経験豊かな司書にもつねに新しい時代の要請に応えられるよう、再教育と再訓練が望まれる。
図書館の最大利用者はやはり学生と教員である。各方面の要望に応え、豊田では試験期間のみ6時閉館であったが、さらに広げ平常期間も週3回6時まで延長することとした。このため専任職員だけでなく、パートの職員にも協力してもらう態勢を整えてきた。また地域開放では夏休みの開館期間を大幅に延ばした。これも専任職員とパート職員の協力なくしては無理であった。

施設面から見ると、豊田図書館はコミュニティ政策学部の開設に合わせて増床を行った。更に開設時からの開架式哲学を継承し、2層式で2階建ての24万冊収容できる書架を設けた。閲覧と自習室部分も拡張し、ここにコミュニティ問題の視点から、女性コーナーや地域に密接したコーナーを設けて特別の書架を置いた。自習のためのキャレルにノートパソコンが使用できる設備の整備を行った。また全学を光ファイバーで結び、ネットワークを情報センターとの協力で、業務用ソフトNeoCiliusの導入をもって豊田、岡崎、桜井を結んだ。書誌所蔵のデータを共有することによって、図書館員がどの館にいても、書籍・雑誌のデータ管理・検索はもちろんのこと、図書・雑誌の貸し出し、返却、購入までもただちに把握できるシステムである。利用者は学内外から検索を行い、その図書・雑誌をどの館からも借り出すことができる。また、雑誌、特に洋雑誌については、近来の予算削減の苦境を乗り切るひとつの方法としてEbsco-hostを導入し、専門雑誌の抄録とフルテキストが得られる契約を結んだ。
また法学系の研究者・学生の便宜を図るための判例ソフトを導入した。これは従来弱いとされた法学系の部門強化にもつながるものである。この利用端末を更に増やすことによって、学生のレポート作成などに力を発揮することができれば、導入のメリットが明白になる。
図書館の選書は、各学部から図書委員を通して行ってきている。やはり、時代の移り変わりとともに、学界の研究テーマ、社会の要請するテーマなどは変化してきている。「10年1昔」とは言え、隔世の感がある。21世紀は複雑な時代であり、地方の時代であり、コミュニティの時代である。これにふさわしい選書がなされてきたことは、大学図書館としてあるべき方向に進んでいると言える。
コミュニティ政策学部の開設とともに外国人留学生が増加したため、この文化交流対策として留学生の出身国の新聞・雑誌を整備し、彼らから好評を得ている。また、検索その他のパソコン端末の整備と充実を図った。
教員が研究上必要とする学術雑誌の論文コピーの取り寄せも他大学その他の機関から行い、研究の便宜を図っている。特に若手教員に対する配慮を優先している。
以上のような形で大学図書館として、図書館職員はサービスの向上のため、つねに努力を重ねている。
最後に一番新しい図書館の蔵書数などのデータを掲げる。
(上記図版「平成13年度豊田図書館概要」参照)

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(2)岡崎図書館の10年
図書館のソフト面については、平成元年ハードをPANAFACOMC-28、ソフトをLIMS/SCとしたコンピュータが図書館に導入され、新規購入図書をはじめ所蔵図書データの遡及入力が開始された。図書の整理においても長い歴史を持つこの図書館では、幾度となく整理規則の変更も行われている。このため、記述方法もその時代の特徴を表したものであったため、それらを極力現在の規則に適合できるようにデータ修正しながら、アルバイトを含めた図書館職員の手で入力を行ってきた。

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岡崎キャンパス再開発事業の一環として、所蔵資料の増加と利用サービスの強化・充実をめざして、図書館の新設が計画された。大学本館(1号館)2階に設置されることとなり、6年1月より図書館の移転を検討・準備することになった。同年4月第1期工事終了、11月第2期工事竣工と同時に、図書館の移転を開始した。
図書館利用のための机・椅子など什器類については木製の最高級品を設置し、利用環境をソフトムードにしつらえた。また、利用の多いビデオブースも5台増設して需要に応えることにした。
新館整備に伴い愛知学泉大学附属図書館、愛知学泉女子短期大学図書館規定および利用規則の整備に着手した。
翌7年、従来のコンピュータが容量不足となり、機器およびソフトの更新をすることとなった。新ソフトNetware対応システム、クライアントサーバ方式の総合情報管理システム「情報館」(プレインテック社)を導入した。また、この年より、資料収集に当たってテーマ図書収集方針を策定し、家政学・生活文化・栄養士関連の書籍の補充・強化を図るとともに、特別な予算を配当してレファレンスブックスの蓄積に力点を置いた。
また、「本大学の顔」として、現在も本学所蔵資料利用希望者に広く利用の門戸は開けているものの、将来は一般に更に広く公開できる条件を段階的に整備していく計画がスタートした。
この頃は「将来は本学においても管理栄養士養成が必要」との図書館運営委員の発想により、管理栄養士関連資料の収集も始めており、現在に結びつける先見的な収書を行っていた。

8年、インターネット接続(学術情報SINET)を開始、ようやく資料面においても情報活動の面においても大学図書館の体を成してきた。貸し出し・返却手続きも新しい機器によるサービスとして展開することとなった。
9年、大学・短大の教育・研究活動の進展と活性化に伴い図書館利用者数も大幅に増加し、資料の充実の要望も強く出てきた。そのため、たとえば雑誌については各種の調査を実施して必要度のランクづけなどの見直し作業を行った。その結果を踏まえて、図書館運営委員会より大学当局に対して図書館予算に関して以下のような提言をしている。

1、蔵書数・年間増加冊数の強化のための予算
2、学術雑誌の年間継続受け入れ数の増加のための予算
3、サービス時間帯の延長とそれに伴う図書館職員の増員

10年、大学図書館がある豊田学舎と岡崎学舎との間で協議が行われ大学図書館の名称を「愛知学泉大学附属図書館」から「愛知学泉大学岡崎図書館」に変更するとともに、図書館に関する規則についても両学舎にて検討を行い、将来の愛知学泉大学図書館としての統一化を図り、そのための基盤整備をすることとなった。
同年短期大学国際教養科の岡崎学舎への移転に伴って、若林に所蔵していた図書2万冊のうち8,000冊と雑誌、AV資料などを岡崎に移転し、国際教養科の学生・教職員に対して遺漏なき措置を講じた。
12年、利用者の便を図るとともに、連携サービスとしての相互協力態勢をとるために愛知県図書館とオンラインネットワークの接続をし、学生・教職員のため借り受けサービスを行うこととした。
同年、城西高校図書館建設中のため城西高校生の大学図書館利用を認め、学園内の高大一致の協力態勢も取っている。
13年、安城学園全体のコンピュータネットワーク体制を確立するため、コンピュータシステムを「情報館」から「Neo Cilius」に移行するための作業に入った。
また、学部の再編成として管理栄養士専攻コースが設置されたため、関連資料の収集・整備にも努めている。
図書館の将来への課題としては、次のようなものがある。

1、大学図書館本来の目的のひとつに、大学の教育研究の成果としての優れた資料の蓄積と保存がある。このため、資料の増加は必須のこととして、書庫の増設か新設が必要となる。旧若林の残置図書を含めて、豊田、岡崎、桜井学舎とも同様な事態となるので、安城学園全体を考慮して集中管理書庫を100周年記念施設として設置するべきである。
2、桜井学舎図書館の現況は、すでに大学図書館の体を成さないほど狭隘で、機能低下を来している。これについては「こども図書館」としての性格の付与を含めて、早急に処理をしなければならない。
3、7年に策定した図書館中・長期計画により蔵書数20万冊をめざしてきたが、今日の日本経済の不振、財政事情の悪化、社会情勢の変化などのため、本学においても予算は年々削減され、この計画目標は延期せざるを得なくなっている。

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