第2節 各科10年のあゆみ

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(1)服飾科
スペシャリストの育成を教育目標として、この10年間にカリキュラムや行事などさまざまの検討を重ねてきた。特に、近年は18歳人口の減少や受験者の4年制大学への進学志向、高校の家庭科・被服科などの廃止や転科などの影響を受けて服飾科への進学希望者が減少したため、学生募集に重点を置き、各種コンクールへの応募・インターンシップ・新カリキュラム・履修モデル・検定試験・科目間の連携・ゼミ・海外研修・学外発表などを新たに実施してきた。これらの対策の効果が最近の入学試験の面接にも表れ、「多くのコンクールに出品し自分の可能性を発見したいから学泉短大を受験しました」「インターンシップや海外研修に参加したいので」「色彩検定やパターンメイキング検定試験に挑戦したいから」などの声が受験生より聞かれるようになってきている。この10年間に実施した新たな服飾科の取り組みを紹介する。

科目間の連携・履修モデル・ゼミを開始
平成9(1997)年に専門科目間の授業内容の連携について検討し、報告書をまとめた。これは、「特色ある教育の推進」をめざして、私学振興財団より助成金を得て始めたものである。現在行われているカリキュラム・授業内容・使用機器などを有機的につなげ授業内容の連携を図るもので、各授業において成果を上げている。また同年、教員と学生の親睦を深め、ゼミごとにテーマを設け研究を深めることを目的にゼミを開講した。12年からは、短大2年間の学習の方法を知ることと教員との親睦を目的とすることにし、開講時期も2年後期だったものを1年前期とした。更に12年より教育形態をデザインコース・被服構成コースなどのコース制の教育から学生の希望進路による履修モデルを使った教育に変更した。

コンテストへの参加
平成8年より学生の潜在能力の開発を目的としてファッション・染色・デザインなどのコンテストへの応募を開始した。14年では30種類ものコンクールに出品が可能となり、毎年多くの学生が入選、受賞している。また、これらのコンクールへの出品指導は12年まで各科目ごとに行っていたが、13年より専門科目「服飾応用講座」のなかでまとめて実施するようにした。

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インターンシップを開講
平成8年よりインターンシップの専門科目「服飾学外実習」を開講した。これはアパレルメーカー・ブティック・デパートなどで学生が1週間の実習を行うもので、目的は企業の現場での体験を通し、プロとしての厳しさを肌で感じ、就業意識を高め、実習後もいっそうの学習意欲を促すために実施している。実習前後の指導や教員の巡回なども実施し、毎年成果を得ている。

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色彩検定・パターンメイキング検定の受験指導をスタート
平成8年より文部省認定のファッションコーディネート色彩能力検定を学生に奨励し、受験指導を始めた。受験前には対策講座を複数の服飾科教員が担当し、毎年多くの学生が合格している。また、13年より専門科目「服飾応用講座」において、パターンメイキング検定の受験を目的とした授業を開講し、2名が合格した。

海外研修の実施
従来の国内研修に加え、海外研修を平成7年より隔年で開講している。国際感覚を養い、視野を広げ、就職後の活動を促す目的で実施している。研修先は、海外の服飾関係の専門学校・企業・工場・美術館・博物館・デザイナーのアトリエなどである。

学外での発表
服飾科では、授業に実習や演習の科目を多く取り入れ、卒業後のより実践的な活躍をめざしている。各授業で完成した作品は、デザイン展と作品発表会(ファッションショー)に展示し、一般市民や保護者への発表の場となっている。デザイン展は岡崎美術館で開催し、平成13年で19回を数える。作品発表会は39回までは学内で開催していたが、40回より開場を学外に移し、40から43回を名鉄岡崎ホテル、44から46回を岡崎せきれいホールで開催、47回を太陽の城で開催した。更に発表の場を増やし、12年より銀行のギャラリーでの作品展示や、デパートや系列高校などでファッションショーを開催したり、「有松絞り祭り」に長さ30メートルの絞り染作品の展示などを実施している。

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(2)生活科
近年、高齢者の増加と科学技術の進歩による生活様式の変化は著しく、その結果として生活習慣病が増大し、国の財政を圧迫する状況になりつつある。そこで生活習慣病対策は重要施策となり、その担い手の中心である「栄養士」への期待は大きくなっている。
県下で3番目(昭和29年4月)に国から指定を受けた、伝統ある栄養士養成施設である生活科は、これらの社会情勢に対応できる実力ある栄養士の養成と卒業後の現職教育にも力を入れ、地域との連携を図りつつ「地域と共生する大学」へと懸命の努力を重ねてきた。主たる動きを以下に記す。

栄養士学外実習への取り組み
栄養士の主な業務は給食管理である。1年生の前期で理論、後期で実習(学内実習)を経て2年生で学外実習を実施する。実習先は学校、病院、産業、福祉の各分野における給食業務である。どれかを選択して1単位(45時間)以上が必修である。同分野で2単位以上実施する学生もいるし、違う分野で2単位以上選択する学生もいる。
実習は従来は夏休み期間中に行われていたが、この10年間で大きく変化した。就職協定の廃止(9月以前の採用内定も可)に伴い就職試験が前倒しとなり、実習と時期が重なる状況となった。その結果、実習が早くなり、現在は1年生の後期春休み期間中と2年生の前期6月に実施されており夏休み期間中の実習はほとんどない。
実習の実施に当たっては、学生に主体性を持たせ、個人的なヒアリングを重ねつつ行っている。分野の選択は就職先の方向づけに、実習先との事前調整は就職活動から社会人への足がかりにと、本学の教育特性を満たすべく、生活科全体の教職員で取り組んできた。しかし近年、実習環境は厳しく調整も難しくなっている。現場の実践教育のなかから多くを学ぶことのできる学外実習を、全人教育に通ずる教育と位置づけ、多くの施設での少人数の実習実現に努力している。

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「ダグ」(DAG)通信の発行
本学では2年制の短期大学生活科と4年制の家政学部栄養コースにおいて、栄養士を養成してきた。栄養士の職場はどちらかと言えば少人数であり、他の職場との交流も少ない。しかし同じ専門職仲間として同僚・先輩・後輩との連携や交流は、仕事はもちろん生活の面においても意義深い。
そこで、卒業後活動をしている栄養士のための情報誌「ダグ」(DAG)を、平成5年1月から発行した。13年8月までに10号が発行済みである。
ダグ(DAG)とは「Dietitians of Aichi Gakusen」の頭文字を取ったものである。名簿が整備されており、会員数は13年7月現在で942名が登録され、実習の依頼や就職活動などにも活用されている。
印刷部数は約2,000部、DAG会員である卒業生(栄養士)、公開講座や市民カレッジの参加者、学生・教職員、近隣の高等学校、教育委員会、保健所、新聞社などに配布して大学と地域や卒業生を結ぶ情報発信の源としての役割を果たしている。

食生活公開講座の開催
地域とともに歩む大学の主旨のもと、平成5年2月から「食生活公開講座」を開催している。対象は本学卒業生および地域の一般住民で、その時々の脚光を浴びているテーマを取り上げている。コンピュータ操作や実験・演習を組み込み、大学だからできる内容として参加・体験をしてもらい、地域住民に大学施設を開放している。
講座は好評で、すでに9回を数える。定員は実験実習施設の関係もあり30名である。毎年応募者は定員数を超え盛況である。

第1回 講演・演習「献立マンで給食管理業務をスピーディーに」
第2回 講演「脳と栄養―脳の働きは栄養次第―」
第3回 講演・演習「コンピュータで食生活チェック」
第4回 講演・実験「食品の着色料―暮らしの中の色々な知識―」
第5回 講演・実習「コンピュータで見るあなたの食事・活動量・体脂肪率」
第6回 講演「肥満と暇」 演習「コンピュータ栄養診断」
第7回 講演「ミネラルと体の機能」 実験「野菜とミネラルの調理変化」
第8回 講演「生野菜サラダは健康食か」 実験「野菜の硝酸含有量簡易測定」
第9回 講演「ビタミン足りていますか」実験「ビタミンCと分解酵素」

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現職フォロー教育「管理栄養士国家試験対策講座」の開催
近年、管理栄養士の重要性が増し国家試験受験希望者が多くなった。栄養士業務に携わる現職フォロー教育の一環として、社会の知識技術の進展に応えつつ大学開放の意義も踏まえて、12年度から「管理栄養士国家試験対策講座」をダグ(DAG)会員を中心に年間13回、土曜日に本学において開催し、国家試験の合格に寄与している。13年度の参加者は100名であった。
なお、この講座は普段は訪れることのない卒業生と大学を結ぶ情報交換の場ともなっている。
7年4月から栄養士免許資格のカリキュラムに救急看護、薬理学、医療保険制度等の専門科目を追加、(財)日本病院管理教育協会の指定を受け、本科においては原則として医事管理士・医療管理秘書士の資格を全員が取ることとなり、就職面でも大きな成果を得ている。
また、8年度からは栄養士制度発祥の地アメリカの実状を研修する機会として、サンフランシスコ州立大と提携し「栄養士と医事管理士のための海外研修」を企画、実施している。3月中旬から下旬にかけての1週間、同大学健康科学部において栄養士業務、医療システム、保険システムなどについての講義と実習を受講し、国情が違うなかでの栄養問題への取り組みについての意見交換などを行っている。以来、13年度で第5回となった。

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(3)家政科
設置以来、家政科新入生の志望動機および基礎学力は多様である。家政科ではこの10年、個々の学生に「自分らしさ」を発見させ確立してもらうため、「家政科セミナー」を設けて、それを単位の中心とした学習活動ならびに学生生活の展開を試みてきた。
家政科にセミナーが選択科目として設けられたのは平成3年度からで、当初は1年後期から2年前期までの1年間の履修であった。同5年度からは1年後期から2年時通年の1年半かけての長期履修科目となった。平成3年度以降中断されていた本科の学年別学外研修旅行が、セミナーを単位として同5年度に復活した。大学祭にも同8年度からセミナー単位で参加するようになったのを手はじめに、他の行事にもセミナー単位で参加するようになった。この「家政科セミナー」は、生活にかかわる諸問題を自問自答する学習法を習得し、総合的に考察できる能力を培うことをねらいとしているが、生活指導および進路指導にもセミナー担当教員が携わり、担当教員が指導教授の役割を兼ね備えることにより、個々の学生の人格形成に直接かかわることになった。当科目は、自問自答の成果をレポートにまとめることによって各自が目標を達成したとの評価を与える。

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9年度から、本学周辺の小学校低学年児童を対象に企画された本科主催の公開講座がOA機器研究セミナーを中心に開始された。その目的は児童がOA機器に親しみ、来るべきIT時代に立ち遅れない素養を培うことにあり、毎年募集定員を超えるほどの受講希望がある。その保護者からも受講の希望が寄せられたため、13年度からは保護者向けのIT講座を実施することになった。
6年度に新設された選択科目「老いと死の文化論」は学外講師を含めた複数教授による高齢社会の諸問題を先取りした多様なテーマ別特論である。このなかでも、浜松聖隷病院副院長兼ホスピス所長千原明氏担当の「死の看取り」は、ホスピスの諸問題を詳細かつ平易に説かれた講座で、ホスピスに立ち遅れている三河地方に先鞭をつける内容であることから一般公開にした。これには、病院関係者を含め外部から多数の来聴希望があった。講義後に催された懇談会への参加者も毎年多い。
本科では7年度から、それまで学内で実施されていた新入生オリエンテーションを愛知県労働者研修センター(瀬戸市)で1泊2日の日程で実施することになった。そのねらいは、本科教育の内容と目標を認識させ、学生個人に「自分らしさ」を追求する姿勢を呼び覚まし、初志貫徹の意識を強く持たせると同時に、学生と教員相互の親密な交流を持てる契機を与え、学生生活をスムーズにスタートさせることにあった。特に、夜間に設けた小グループによる教員を囲む懇談会は直接教員と交流できる契機となって、その後の相互間のコミュニケーションの出発点となっている。
本科学生が主に受験する検定試験は、昭和62(1987)年度から平成9年度までは漢字検定、6年度から日本語ワープロ検定および秘書技能検定、12年度からビジネス文書技能検定といったように、学生のニーズに従って変更もしくは拡充されてきた。今後IT時代を迎えて、更に学生のニーズは変化するであろうが、それに対応できるように検討を重ねている。

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(4)幼児教育科
一貫した教育方針と時代への対応
幼児教育科は、一貫した「現場のニーズに適応できる実践的能力の養成」を重点方針に、平成5年度「子どもの感性を豊かに育む人材を養成するための全人教育」と目標を設定した。その後、家庭内暴力、いじめ、登校拒否など、子どもの不適応現象が社会問題化するなかで、多様化する子どもたちに対応する必要から、8年度、目標を「子どもの感性を伸ばし、創造性と主体性のある幼稚園教諭、保母を育成」とした。本科では、主体的かつ創造的に子どもたちへの指導ができる幼児教育者の育成を図っている。
以後、社会的に子どもに関する問題は、更に深刻な様相を呈し、子どもへの虐待・親の子殺しなど残酷な事件が続発し始めた。これらは依存的生活様式の増大に伴い、自立や共生などの人間的生活能力が未熟なチャイルドペアレンツの増加傾向を示すもので、幼児教育者へ寄せられる課題と期待は更に増大した。
本科では、このような社会的傾向に対し、専門的職業能力の育成と社会的生活者としての人格形成を統合した総合的教育の必要性を確認、平成12年度から目標を「時代を担う子どもの教育、保育現場で活躍できるための基礎知識と技能の学習を通して、一人ひとりが社会のなかで自らの可能性を生かしつつ地域に貢献できる生活人を育成する」と定め、カリキュラムを改訂、時代のニーズに対応すべく総合的な全人教育を開始した。

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進む学生主体の教育実践と地域社会への貢献
独自の教育方法が、長年の地道な努力の蓄積によって定着し、本科を特色づける行事として継続発展してきた。多彩な行事のなかで特に「こどもまつり」「保育における「表現」の研究発表会」「学内コンサート」「合唱コンクール」などは学生を主体とし、教員、そして地域社会が一体となって展開されるようになり、学生たちの幼児教育者としての主体性と能力形成に大きな成果を上げるようになった。また、「公開講座」も継続して開催され、地域の幼児教育の向上に貢献している。

●こどもまつり
昭和54年の国際児童年を記念して学生たちの声によって始まり、毎年11月3日の文化の日に開催される「こどもまつり」は、平成13年度で23回目となった。
近年、親子・卒業生・保育関係者など2,000名の規模となり地域を含めた一大イベントに発展した。企画から準備、運営まですべて学生が主体となり総力を結集し取り組むこの活動は、総合的な実践能力を培う体験的学習であり、学生から幼児教育者への脱皮の場として重要性を増してきた。11年度からは、カリキュラムの一環に「総合演習」として組み込まれ、主体的な学生の取り組みに専門的指導が加わり、教育的効果と内容のいっそうの充実が図られている。

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●保育における「表現」の研究発表会
平成2年、表現力の養成を目的に企画され、表現に関するゼミナールの研究発表会が「全員がステージに!」を合言葉に安城文化センターホールで開催された。以来11年を経過し、今日では2年間の短大生活を締めくくる卒業公演の趣を持つまでになった。就職先の教育・保育関係者や保護者を招待し、ロビーでは美術作品などの発表、ステージでは器楽合奏、ピアノ連弾、アンサンブル、創作ダンス、身体表現、手話と歌など自信に満ちた発表が行われる。

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●幼児教育公開講座
13年度に26回目となった「公開講座」は、リカレント教育として地域社会に定着し、その社会的使命をますます高めている。再教育を受ける機会の少なくなった現職の保育士を対象に、現場の課題に対応した内容で、特別講演や体育・音楽・美術各部門ごとの講座を開講している。例年、定員を上回る応募者があり、卒業生ですら参加を断らざるを得ない状況が続いている。特に、11年度の第24回には参加者が268名にも及んだ。

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(5)国際教養科
過去10年間で国際教養科に起こった出来事のうち大きなものは、平成10年に豊田市若林町から現在の岡崎キャンパスへ学舎移転したことと、11年にカリキュラムの大改訂を行い、科の教育の特長を実用的英語能力の養成に置いたことである。

若林学舎から岡崎学舎へのキャンパス移転
キャンパス移転の理由は、ひとつには規模の点であった。学生数が多ければ、クラブ活動や学生会活動が多様・活発になるし、福利・運動施設や就職指導などの面においても、学生により充実した環境やサービスを提供できる。もうひとつの理由は、コミュニティ政策学部設立により定員が削減されたため、単独学科のキャンパスで、学生数縮小により学生がいっそう不活発化するという事態を恐れたためである。国際教養科が生まれ育った、思い出多き、そして、緑豊かで、地の利にも恵まれた若林キャンパスではあったが、将来を見据えての移転であった。学舎移転の話を聞いた第1期生は若林キャンパスに集い、同窓会を開いた。

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カリキュラムの改訂―実用的英語教育へ特化―
カリキュラムの大幅改訂は「国際教養科の教育内容がはっきりわからない」という高校生や進路担当教員の意見を考慮した改革であった。それまでは、英語コースと秘書コースの2コース制をとっていて、更に両方にかぶさる形で国際関係・異文化理解の教養科目が置かれていた。選択科目をできるだけ多くして、学生が自分の興味や目的に応じて履修科目を決められるようになっていた。英語を重点的に学びたい学生はたくさんの英語科目を履修できるし、ビジネス実務や秘書士関連の勉強をしたい学生はそのように履修科目を選択できた。
しかし、一方で学生に選択の余地を広げて与えたことが、他方では科の性格を曖昧にしてしまうという結果を招いた。また時代を反映して、自分が大学で何を学びたいのか、はっきりとした意思を持って履修科目を選択する学生が、多いとは言えない状況になっていた。そうなると選択制の長所は減退し、弊害が目立つようになる。
カリキュラムの改訂に当たっては、科の教育目的や教育内容を明確に打ち出すことと、その目的に沿って、科として学生に履修して欲しい科目を必修として設けること、の2つに留意した。教育目的としては「グローバル化の時代に対応できる人間の育成」を掲げ、教育内容としては「コミュニケーション能力の向上をめざす」実用的英語教育に重点を置いた。コース制は廃止し、秘書士資格取得のための科目は、資格関連科目として科のカリキュラムから分離した。また必修科目が増え、卒業必要単位の9割以上を占めることになった。
この結果、科の性格や教育内容は非常にわかりやすくなったが、他面では、国際教養科を4年制大学の英語系学部や英語専門学校との激しい競合関係に置くことになった。近年、18歳人口の減少や、高校生の4年制大学志向によって短大への応募が減っている。それに加えて、本科は、実用英語教育機関としては後発校であり実績がなく、またメディアで活発な宣伝広報活動を繰り広げている英語専門学校と比べ、知名度も低い。このように不利な条件が重なり、過去3年の間、学生数は定員を下回っている。この事態を改善していくためには、入学した学生に充実した教育とサービスを提供し、多くの学生が満足して卒業式を迎えられるよう、地道な努力を続けて実績を積み上げていくことが課題である。

特色ある教育
カリキュラム改訂時に、1年次通年の「基礎セミナー」と2年次通年の「卒業セミナー」を設けた。教員一人に学生が数名というセミナーで、読み、考え、話し合い、発表し、書くという現代の若者に一番欠けているといわれる能力を、2年間かけて、教員と学生の人間的交流のなかで磨いていくというセミナーである。この交流が学生の学習、生活や就職などの指導に生かされている。
カナダの姉妹校、カピラノカレッジとの交流プログラムも、20年という歴史を背景に、充実度を増し、実用的英語教育に生かされている。夏期研修は、従来の3週間学習、1週間国内旅行という内容から、1カ月間を通してホストファミリー宅で生活し、英語の授業を受けるという、学習重視の内容に変えた。また、半年間の交換留学制度も定着してきて、この留学を目的に入学してくる学生も毎年、数名ずつ出ている。
教員間の交流も深まり、5年前には、85周年の記念事業として第2回目の両校美術教員による合同美術展がカナダ・バンクーバーで開かれた。この開催に向けて、協賛企業の獲得や会場の手配に、労をいとわず尽力してくれたのが、カピラノカレッジで美術史を教え、本学に交換教員として来たこともあるドリンダ・ニーヴ女史であった。交流プログラムや教員交換を通して、両校の教員間に信頼と協力関係が築かれつつあるのは喜ばしい。平成13年にはグレッグ・リー学長が本校を訪問し、本学学長や教員たちと親交を結んだ。
平成12年に英会話教育にベルリッツメソッドを導入したこと、会話以外の英語の授業にコンピュータを利用し、学生の学力レベルに合ったレッスンを行えるようになったことも、実用英語教育をいっそう充実させ、効果的なものにしている。
また、新設科目の「自立共生論」では、それまでの国際教養科では海外研修を除いてあまり行われていなかった学外活動を、積極的に取り入れた。教室以外に学びの空間を拡大していく試みの一環である。

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