第7節 さらなるイノベーションをもとめて

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以上が、平成14年度(2002)から平成24年度(2012)に至る愛知学泉大学の歩みである。冒頭に述べたように、日本の社会や大学、さらに本学を取り巻く状況は厳しさを加える一方であった。そうした状況に対応して、本学は、さまざまな模索を行い、厳しい状況を克服し、さらに社会をより良くしていくような人材の育成に努めてきた。愛知学泉大学の10年間の歩みの最後にこれからの本学の方向を示す動きについて述べておきたい。

現代マネジメント学部の展望
現代マネジメント学部をどのようにして成長させていくかは、大学全体にとっても大きな課題である。現代マネジメント学部のコンセプトは、従来の一つのチームのためのマネジメントを越えて、社会の真の豊かさをGOALと考え、そのGOALに向かって未来という荒野にレールを敷くという新しいマネジメントを学ぶというものである。
さて、日本社会に迫りつつあるといわれるダウンサイジング。量的=経済的なダウンサイジングは不可避としても、質的なダウンサイジングを誰がどうやって食い止めるのか? 行政主導の福祉政策にはさまざまな点で限界がある。したがって、企業が社会的責任として、福祉やQOL(生活の質)関連事業の一部分を担う、すなわち、経営のノウハウを活用してNPO・ボランティア団体・地域など、非営利部門との連携を強めるなど積極的にかかわるという社会が到来することが予想される。
現代マネジメント学部は、一言でいうと、「企業のこともわかり、NPOやボランティア、地域など非営利部門のこともわかる人材を育てる」学部である。企業に勤める、公務員になる、教員になる、自分で会社を立ち上げる…、そういった夢に向かって、就職支援も含めて、どういう活動の場面においても、あたらしいマネジメントという発想を持って社会に貢献できる学生を育てていくことでもある。
そのための教育システムの特徴として、カリキュラムのうえでは、ビジネス系と社会学系、およびその橋渡しをする科目群に大きく分かれていることが挙げられる。これらの科目群の設置は、地域や企業、行政と連携することも含めて問題解決能力を育成し、社会が求めるコミュニケーションスキルや専門知識・技術を学生に身につけてもらうことを目的としている。
以上のような特徴をもつものが現代マネジメントであり、こうした理念によって教育を行っている。しかし、現実には、どのように学生の学習意欲を引き出し、現代マネジメント能力を身につけた人材として社会に送り出すかという点については、各教員はそれぞれの担当科目、またゼミ指導等で格闘している。その成否が豊田学舎だけではなく愛知学泉大学全体の将来を決めるのであるということを認識しつつ、それぞれが自分の持ち場で課題の解決にあたらなければならない。

研究の展望―研究所の再編
学校法人安城学園は約15年前から「まちづくりのためのひとづくり」を学園のテーマとして掲げている。それは、「ひとをつくることがまちをつくることに繋がり、まちをつくることがくにをつくることに繋がり、くにをつくることが世界をつくることに繋がる」教育を展開するためである。これを具体的に実現していくためには、「ライフスタイルのデザイン」をモチーフにした教育研究活動と「地域社会のデザイン」をモチーフにした教育研究活動が必要である。
岡崎学舎では、前述の方針に基づいた研究所の運営を行うために、生活文化研究所を「ライフスタイルデザイン総合研究所」とあらためることとして、設置の趣旨並びに規程を検討中である。
それに対して、豊田学舎では平成24年度から、従来の経営研究所とコミュニティ政策研究所を融合させる形で「地域社会デザイン総合研究所」が開設された。
地域社会デザイン総合研究所では、「地域社会のデザイン」をモチーフにした教育研究活動として、①「ボランタリー分野」に関する教育研究活動、②「パブリック分野」に関する教育研究活動、③「プライベート分野」に関する教育研究活動、④現代マネジメント学部の設置の趣旨に沿った教育研究活動、⑤地域マネジメントに関する教育研究活動に取り組んでいくことを目的としている。ここから新しい研究活動が展開され、その成果を地域社会に還元することを使命としている。

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東日本大震災から学ぶもの
愛知学泉大学がさまざまなかたちでのイノベーションを繰り広げていた平成23年(2011)3月11日に東日本大震災が発生した。
この震災は、死者・行方不明者は2万人以上、建築物の全壊・半壊は合わせて22万戸以上と、大正12年(1923)に起きた関東大震災に次ぐ大きな被害を出した。また、今回は地震による被害だけでなく、これに地震に伴って発生した津波により甚大な被害を被った。
本学の学生の中にも、実家が大きな被害を受けた学生が何人もいた。春休みに実家に帰っていて、地震・津波に遭遇し、祖母を背負って山道を必死に駆け上がり難を逃れたという学生もいた。実家が地震で破壊され、避難所にいたため中々連絡が取れなかった学生もいた。
これに対して、大学はすぐさま義捐金を募った。現地にボランティアや調査に入った教員が何人もいた。さらに、「東日本から学ぶ」という学園全体の方針を受け、震災から5か月経った平成23年の夏期休暇期間には、豊田学舎全体の取り組みとして「東日本大震災ボランティア活動」が行われた。これは8月31日~9月5日の6日間、津波により大きな被害を受けた岩手県大船渡市で災害復旧ボランティアを行うもので、学生20名(現地活動19名、バックオフィス1名)と教職員6名がこれに参加した。また、学生・教職員は、ボランティアを派遣するための募金に応じた。そして、平成24年8月1日~8月4日の4日間にわたって硬式野球部は、77名が参加して宮城県気仙沼大島でのボランティア活動を行った。
東日本大震災は、日本人が忘れかけていたお互いの〝絆〟を思い起こさせるとともに、日本社会の成長の質を問い直させるものであった。愛知学泉大学は、100周年以後、「東日本から学ぶ」という視点に立って、大学が立地する三河を根拠地とした教育研究活動を展開し、この地域の人材を育成するために教育にイノベーションを興していく決意をしている。

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