第2節 数字で見るこの10年

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私学への入学者数は経済状況の変動に左右されやすく、平成13年(2001)頃からの景気の後退、そして、平成20年(2008)のリーマンショック以降の不景気が大きく影響している。そのうえ、平成23年度(2011)からの公立無償化、そして公立高校の受験制度の変化などにより、本校の入学者数も多大な影響を受けている。

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前述のように本校においては、平成元年(1989)からの公立の複合選抜制度の中で、平成11年度(1999)に男女共学にし、平成15年度(2003)入試までは600名を上回る入学者数があった。受験者数においても2,800名以上あり、ある程度安定していた。しかし、平成16年度(2004)以降は募集定員を下回るようになり、入学者数は500名台となった。平成16年より中学校は絶対評価に変り、入学してくる生徒は今まで以上に真面目な層が増えてきた感がある。
平成17年度(2005)は入学者数が500名に届かず、その対策として、従来の特進コースをZコースとYコースに分け、翌18年度(2006)入試では入学者増となった。平成19年度(2007)には、Zコースをさらに学業中心のZⅡ、文武両道のZⅠとに分け、進学クラスのいっそうの特化を図った。また、将来的に入学者数を安定させるため、平成17年度から女子のクラブ推薦制度を設けた。当初は1桁の入学数であったが、平成22年度(2010)から30名弱の女子生徒がクラブ推薦で入学するようになってきている。
平成20年度入試は、市内の県立高校が普通科から総合学科に移行するという状況の中で行なわれた。工業・商業及び総合学科においては定員の50パーセントを推薦入試で募集できるため、それらの高校は一般入試に先立って入学者を確保した。しかもリーマンショックの影響から入学者減となり、この年は特進男子の数が1クラス分減少した。一般入試においては、コース別合格など工夫をしたため受験者の大幅減とはならなかった。
女子の募集については、「男子校の良さを活かしての共学」の考えで、入学者数の3割程度に抑えてきた。そのため、学習推薦においては女子の基準を高めにし、また、男子は5教科のみに対して女子は9教科の評定基準を設けてきたが、平成22年(2010)からは男女とも5教科のみの基準に変更した。こうした入試基準の変更により、若干女子の割合が増えはしたが、全体的な入学者数は増加とはいえない状況であった。こうした中、平成23年から公立高校の無償化がはじまり、入学者数の大幅減が危惧された。しかし、公立無償化により公立受験の難度が高まると予想されたのか、入学者数も一般受験者数も前年より増加した。とくに受験者総数は平成21年度(2009)から23年まで3年間は3,000名を越えた。だが、平成24年度(2013)入試では、公立無償化が浸透したのか入学者数の大幅減となった。
このように本校の募集においては安定した状況にない。また、近隣私学の影響もあり、岡崎市内の志願率も平成16年度から30パーセントを下回る状況になっている。安定した募集確保のためには、本校教育のいっそうの充実と地域の保護者・中学生から魅力のある学校と認識されるように、今後もさらに努力していかなければならない。

進学校としての意識の中で
平成14年度(2002)以降の10年の間、本校生の進路は全体の平均約12パーセントが就職、約13パーセントが専門学校進学、約70パーセントが大学・短大進学となっている。そのため進学校としての意識の中で、本校は過去から生徒の学習意欲・進学意欲を引き出し、生徒個々のもつ将来の目標の実現に向けて、進路指導をしている。

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進路指導部としての取り組み
この間、本校では、学力養成対策として、コース特性を考慮し内容を精選した上で、早朝演習・居残り学習・土曜演習を実施してきた。また大手予備校との提携によりCS(衛星通信)講座を3年生を中心に実施してきた。さらに2年生から3年生にかけて2年間にわたり、小論文講座(添削講座)を希望者に実施してきた。進学希望者の約75パーセント以上の者が受講している。平成21年度からはその小論文指導の一環として、外部講師による校内TV放送を利用した小論文書き方講座を実施している。一部代表生徒も出演し、各自の書いた小論文の添削指導を受ける形式のものである。
年間に各学年の生徒対象に、進路選択のための進路ガイダンスを実施してきた。とくに1年生対象の職業紹介講座は、卒業生や地域の方々を講師として招き、実施している。参加生徒には大変好評である。また年間2回の保護者向け進路勉強会を実施してきた。大学関係者等を講師に招き、内容としては受験に向けての親の対応や、現在の進学事情の分析結果の説明が主である。年々保護者の理解も深まっている。
主な取り組みをあらためて、列挙しておく。

・早朝演習 居残り学習 土曜演習の実施
・CS(衛星通信)講座の実施 河合塾・代々木ゼミ
・小論文講座(添削講座)の実施
 2年生 桐原書店小論文添削講座 年4回実施
 3年生 学研小論文添削講座 年4回(含志望理由書指導1回)
 TV小論文書き方講座の実施(学研)
・資格取得対策の実施 英語検定・漢字検定
・進学説明会の実施
 生徒対象
  1年 職業理解のための講座・文理選択ガイダンス
  2年 学部学科ガイダンス
  3年 進路ガイダンス
 保護者対象  進路説明会(年2回)
・系列校見学会の実施 愛知学泉大学・愛知学泉短期大学
・就職指導プログラムの実施
 2年 企業見学会
 3年 企業訪問・面接指導講座・就職準備講座
・2年生Zコース 大学見学バスツアーの実施(24年度より新たに実施)
・高校大学連携プログラムの実施 愛知工業大学
・校内実力考査・対外模試の実施(進研模試 全統模試等)

社会の変化に起因する本校生の進路の変化
経済状況の悪化により大企業の採用が年々きびしくなっている。また全体の求人も減少していて、本校においても生徒が企業を自由に選べない状況になってきている。とくに、女子生徒の就職については事務系の職種の求人は少なく、現在女子の就職先は製造業、運輸・流通関係にまで及んでいる。これは製造業・運輸・流通関係が機械化の進展で女子の働きやすい職場に変化してきているからでもある。
平成13年度以前の本校の進学は、全国をターゲットに、広範囲に大学へ進学していたが、ここ10年間を見ると、関東から関西の範囲内に集中しはじめ、年々県内に進学する者の割合が急激に増えている。主な理由は家庭の経済状況の変化、就職活動に有利な都市圏への学生の集中、県内大学の県内企業への就職が有利であること、などによって県内の大学への学生の集中となったのであろう。また、一人あたりの受験校数も減少傾向にある。女子生徒の大半は県内に進路を求めている。

大学選択の変化とキャリア教育の必要性
平成19年度以降の受験生の大学の選択にもあらたな傾向が表われはじめた。就職に有利な資格取得のできる学部学科を志望する傾向である。資格の取得を考え、理系の、とくに医療系に人気が集まっている。また、語学系や教員養成系の学部も根強い人気を保っている。この数年あらたに体育系も人気が高まっている。また短期大学においては、管理栄養士・保育士等の資格を目指しての進学が増えている。
この10年間の社会の変化とそれにともなう本校生の進路状況から考えると、キャリア教育の充実が求められていると思われる。いかに進学目的(将来の職業選択)を明確にさせるかという教育プログラムの充実が重要になってきているのである。

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2学期制の導入
本校は創立45周年に当たる平成19年度から2学期制を導入した。近隣の中学校では平成16年頃から2学期制が実施されてきた。それは、授業時間の確保を第一と考えてのことであった。日本の季節感と3学期制が合致しているとの観点で、岡崎市内の中学校は依然そのままであるが、県内の高校でも、公私ともにほとんどが3学期制のままである。
こうした流れの中で、本校の2学期制導入については、村上前学校長の発案で実施された。授業時間を増やす中で、学力の向上を目指し部活動の活性化、行事の適正な配置と内容の充実を行い、バランスの取れた教育活動を目指す狙いであった。
本来ならば2学期制の場合は年4回の定期考査である。しかし、年4回だと考査範囲が広くなり、また、生徒は試験がなければ学習をしないのではないかという懸念から、前期考査を3回にして3学期制と同様年5回の考査にした。
実施して5年経過した。確かに夏休み前の慌しさは解消され、また、学期ごとの各分掌などの会議が減り、教員の負担は少しではあるが解消した。しかし、行事の見直しまでは充分になされておらず、2学期制でありながら3学期制と同じ年間計画になっているのが現状である。
近年、2学期制にやりにくさを感じて3学期制に再び戻した中学や高校が増えているようである。本校においては、2学期制を実施して5年が経過する中、単に授業時間の確保という点だけでなく、2学期制のメリット、デメリットを検証する必要がある。また、2学期制移行の意図には、本校教員の意識改革の必要性があった点についても再認識をする必要がある。

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