第3節 学園の教育・研究

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(1)社会人基礎力育成の推進

平成20年度(2008)に、職場や地域の活性化に貢献できる人材育成を目指した体系的教育プログラム『無限の可能性』を開発し、基礎学力と各学部における基礎的でかつ体系的な知識及び技術に加えて、社会人基礎力を身に付ける教育が始まった。文系大学としては先駆けとなる一般企業や自治体と学生が連携して社会の課題を解決する『産学連携活動』『官学連携活動』の取り組みや、授業での学びを活用した取り組みを、大学・短期大学、学科の枠を越えて発表し、その成果を競い合う『愛知学泉大学・愛知学泉短期大学社会人基礎力発表会』など、学生の社会人基礎力を育成するために始まった取り組みは、13年経た現在も継続して実施されている。そして、現在は日々の授業から社会人基礎力の育成につながる取り組みが行われ、「行動を鍛える教育プログラム」として、本学独自の教育として進化を遂げている。

『産学連携活動』や『社会人基礎力発表会』と同様に、現在も継続されている社会人基礎力育成の取り組みとして、愛知学泉大学で実施されている『外部評価面談』がある。これは学生の活動の評価を教員だけが行うのではなく、一般社会で働く方からも評価を受ける取り組みである。

学生は産学連携活動などの特別な取り組みだけでなく、授業、部活・サークル、ボランティア活動、アルバイトなど、学生生活のさまざまな場面で、経験や知識、気づきを得ている。『外部評価面談』を通して、学生生活の中で得た経験や知識、気づきを整理し、社会で働く人の視点から評価、アドバイスを受けることで、学生にとって社会で活躍するために必要な力に気づき、学生生活の課題について考える機会となっている。

このような外部の社会人による学生評価は、「社会人基礎力」が経済産業省から提唱される際に、モデル校として紹介され、本学では2回にわたり視察を行った、アメリカウィスコンシン州の「アルバーノ大学」でも行われている。本学の『外部評価面談』では、学生が「社会人基礎力」の12の能力要素に沿って自分の行動を振り返り、愛知学泉大学社会人基礎力推進委員会が作成した振り返りシートを作成、そのシートを元に外部評価者と面談する形で進められる。外部評価者は現役の企業人事担当者や企業人事の経験があるキャリアカウンセラーを中心に、仕事で必要な力に関する知識を持ち、人事評価や採用に関して経験のある人員等で構成されている。また面談は、外部評価1名に対し、4~5名の学生のグループ面談形式で行われる。

学生生活の中で、社会人から社会で働く力という視点で評価を受けることはほとんどないため、学生にとっては、これまで得られることができなかった気づきを得ることができる。また、グループ形式で面談を行うことで、他の学生の成果や目標を知る機会となっていることも学生にとっては大きな刺激となり、面談後の学生の行動変化に影響を与えている。

『外部評価面談』を行うごとに、外部評価者、学生双方にアンケートを行い、社会人基礎力推進委員会を中心に効果や課題を検証して実施内容の改善を続けてきた。学生のこの取り組みに対する評価は非常に高く、ほとんどの学生が「参加して良かった」と評価している。このような外部の社会人による評価を、学生全員を対象に実施する取り組みは珍しく、社会人基礎力を育成する本学独自の取り組みとして今後も継続、発展させていく。先述の「アルバーノ大学」では外部社会人からの評価も単位認定の要件に含まれており、それが教育の質保証になっている。本学で現在行っている『外部評価者面談』は、学生が自身の活動を整理し、社会で働くうえで必要な力という視点から課題と目標を考える支援であるため、今後の更なる発展として、職場や地域の活性化に貢献できる人材を育成する教育の質保証につながる取り組みとしていきたい。

(2)学外連携プロジェクトと芸術文化の醸成

夢のさなか公演

学校法人安城学園創立50周年を機に刊行された「おもいでぐさ」は、「官尊民卑」「男尊女卑」の風潮が強い時代背景の中で「誰でも無限の可能性を持っている」という強い信念のもと、全身全霊をかけて教育に力を注いだ寺部だい先生の半生が描かれている。

愛知学泉大学オーケストラでは、安城学園創立100周年記念を冠した第20回記念定期演奏会(平成25年(2013)3月24日(日)於:刈谷市総合文化センターアイリス)のメインプログラムとして、この「おもいでぐさ」を基にした朗読劇(オラトリオ形式)の上演が計画された。作曲はボブ佐久間氏、合唱は知立市を拠点に活動しているパティオシアター合唱団、舞台製作は東京にある有限会社アーティストジャパンに依頼することとなった。アーティストジャパンにより脚本は岡本さとる氏に、朗読は女優の山本陽子氏に、舞台監督は菅原道則氏に依頼することとなった。

完成された「夢のさなか」は上演時間約50分で、フルオーケストラに寺部だい先生を演じる朗読者一人と混声合唱団の編成であり、途中、「おもいでぐさ」「夢のさなか」「わたしが一番ほしいもの」と題した3曲の合唱曲が挿入されている。

先述の定期演奏会での上演はDVDに収録された。その後は安城学園創立105周年のプレ事業として各設置校主催で学生・生徒・教職員に鑑賞する機会が3年連続で設けられた。そして、平成29年(2017)には創立105周年事業として、寺部だい先生・寺部清毅前理事長のパネル展示と合わせてミニ公演が開催されるなど、これまでに大小合わせて6回上演された。

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合唱曲「おもいでぐさ」

やさしい風が 身体をつつむ

やさしい風が 香りを運ぶ

なつかしき あの日の青き おもいでぐさよ

やさしい人が 路傍を見やる

やさしい人が 手をさしのべる

涙ぐむ あの日の青き おもいでぐさよ

やさしい時が 静かにながる

やさしい時が 未来につづく

忘れない あの日の青き おもいでぐさよ

合唱曲「夢のさなか」

いったい自分は どんな夢を 見ていたのだろう

今が夢のさなかなら すぐに答えが 出るはずなのに

もう夢は 遠く叶わぬことなのか

もう夢は 過ぎし日の思い出なのか

じっと考える帰り道 ふっと見上げる春の空

いったい自分は どんな夢を 見ていたのだろう

今が夢のさなかなら すぐに答えが 出るはずなのに

合唱曲「わたしが一番ほしいもの」

わたしはほしい 海を越え行く 鳥の勇気を

翼ではなく 強い心を

わたしはほしい 荒れた地に咲く

 花のいのちを

美しさより 生きる覚悟を

わたしはほしい たださりげない

 あなたの愛を

心にひめた 燃える想いを

「東日本から学ぶ」プロジェクト

創立100周年を記念して立ち上がった「東日本から学ぶ」プロジェクトにはこれまで多くの学生・生徒・教職員が参画してきた。創立105周年の年である平成29年(2017)には活動記録集「東日本から学ぶプロジェクト」が編纂されるとともに、安城市中心市街地拠点施設アンフォーレにて「2017夏〝東日本〟から学ぶべきもの」(「写真展」「フォーラム」「被災地交流コンサート」)が開催された。

◆主な活動実績

愛知学泉大学

被災地支援ボランティア、被災地支援スポーツ教室、被災地支援募金活動、東日本と愛知を繋ぐコンサート、サンマ祭り、仙台牛・笹かまぼこ祭り

愛知学泉短期大学

被災地支援ボランティア、被災地支援募金活動、サンマ祭り、仙台牛・笹かまぼこ祭り

安城学園高等学校

大船渡七夕ボランティア、大船渡東高等学校との交流、被災地支援ボランティア、被災地支援スポーツ教室、被災地支援募金活動、東日本と愛知を繋ぐコンサート、地歴公民科東北セミナー

岡崎城西高等学校

被災地支援ボランティア、被災地支援募金活動、支援物資販売、修学旅行東北コース

愛知学泉短期大学附属幼稚園/愛知学泉大学附属幼稚園/愛知学泉大学附属桜井幼稚園

被災地支援募金活動、支援物資販売、卒園児による被災地訪問(愛知学泉大学附属桜井幼稚園のみ)

安城学園全体事業

東日本から学ぶ連続講演会、創立100周年記念酒醸造、東日本から学ぶプロジェクト基金、2017夏〝東日本から学ぶべきもの〟(写真展・フォーラム・被災地交流コンサート)、東日本から学ぶプロジェクト記念誌発行

カディプロジェクト

本学園では、インド再貧困ともいわれるビハール州ハティヤール村を中心に、カディ(手つむぎ・手織りによってつくられた生地)による手仕事の普及で村々に雇用を生み出し、女性の継続的な自立や生活の安定を目指している、廣中桃子氏が代表を務める合同会社NIMAI-NITAIの活動を支援している。

廣中氏とは第16回安城学園報告討論会のゲスト講師に招いた縁があり、この支援は、「裁縫技術の習得を通してアウトカーストの女性の社会的自立を支援したい」というカディプロジェクトの基本コンセプトが、創立者寺部だい先生の信念と一致していて共感できるものであるとともに、このプロジェクトがインドの最貧困層の女性の潜在能力の開発に役立つことを念願して行ったものである。

そして、合同会社NIMAI-NITAIのプロジェクトに対する真摯な取り組みは、学生・生徒にとって「生きた教材」であり、本学園として相互連携ができればと考えている。令和元年(2019)には、短期大学生活デザイン総合学科1年の学生に対して、また、令和2年度(2020)からは初年次教育の一環として大学家政学部1年生の学生に対して、インドにおけるこのプロジェクトの経験等を通して廣中氏に自己ビジョンの設計等について講義していただいている。

安城市交響楽団

安城学園創立105周年の年に、まちづくりの一環として安城市に初の市民オーケストラである安城市交響楽団を発足させた。楽団は「音楽の溢れる、こどもたちが生き生きと育つ街」をテーマとし、芸術文化活動を通して表現力や創造力を高め、しなやかで豊かな情操性や協調性を養い、心豊かな活力ある地域社会の形成に寄与することを目的としている。

楽団の代表は、安城学園高等学校の坂田成夫前校長。顧問として寺部曉理事長が名を連ねる他、指揮者やトレーナー、事務局長に本学園の教職員が参画し、安城学園が有する音楽活動のノウハウを基盤に活動を続けている。

楽団は、令和元年(2019)12月2日付で一般社団法人格を取得している。現在は年2回の定期演奏会を主軸に活動しており、今後は三河地域のアマチュアオーケストラや学生オーケストラと連動した三河音楽祭の開催や、安城市交響楽団ジュニアオーケストラの発足などを通して、地域とのコミュニティーオーケストラとしてだけではなく三河のフラグシップオーケストラとしての地位の確立を目指し、引き続き三河地域の芸術文化の醸成を深める計画を始めている。

(3)創立110周年事業

学校法人安城学園は、令和4年度(2022)で創立110周年を迎えた。

明治45年(1912)創立から今日まで110年にわたり歴史と伝統を築き、継承することができたのも、地域の方々の深いご理解と温かいご支援の賜物であると心から感謝申し上げ、創立110周年のテーマを「地域に感謝」とした。

今後も地域に感謝の心を持ち続けるとともに、時代の変化に迅速に対応し、安城学園独自の教育を展開していくために教職員一同全力で取り組んでいく所存である。今後とも変わらぬご支援とご協力をお願い申し上げる次第である。

原稿の執筆時点では、創立110周年を記念して次の事業を予定している。

1 記念式典・祝賀会を令和4年(2022)11月17日(木)安城市民会館において挙行する。

2 学園の発展に貢献した教職員、学生・生徒をはじめ、地域の方々に表彰状と感謝状を贈呈する。

3 安城学園110年誌の制作。平成24年(2012)の創立100周年以降、今日に至るまでの10年間の学校法人の経営方針及び組織体制並びに各設置校における歩みをしたためる。

4 安城学園110年の歩み動画の制作(記念式典において披露)

5 創立者寺部だい先生の自伝「おもいでぐさ」の中国語訳付き版と韓国語訳付き版を制作する。地域の図書館への寄贈をはじめ、学生や海外姉妹提携校関係での活用を図る。また、多くの人々が読むことができるように学園のウェブページへの掲載を行う。

6 寺部だい生誕140年・寺部清毅生誕110年を記念して「寺部だい・寺部清毅展」をアンフォーレで開催する。

7 「命を守るプロジェクト」の企画を次の内容で行う。

・プロジェクトの学習報告会をアンフォーレにおいて開催する。

・10年間のプロジェクトの活動記録集及びウェブページを制作し、式典で披露する。

・東北の4市1町(大船渡市・気仙沼市・陸前高田市・石巻市・南3陸町)と連携協定を締結する。

・記念式典において4市1町の特産品を配布する。

・防災を学ぶ授業を系列幼稚園で行い、防災・減災学習を通じて学園全体で意識を高める。

8 創立100周年・105周年と同様に生酒の醸造を企画し、記念式典の招待客及び教職員に贈呈する。今回は気仙沼市の大越商店に醸造を依頼する。

各設置校で取り組みを予定している記念事業は次のとおりである。

大学・短期大学

・第20回家庭科教員セミナー(大学家政学部ライフスタイル学科)

・教職シンポジウム(大学家政学部こどもの生活学科)

・保育職シンポジウム(大学家政学部こどもの生活学科)

・創立110周年記念みんないっしょのクリスマス会(短期大学)

・創立110周年ファッションショー(短期大学生活デザイン総合学科)

・同窓会との共同開催によるホームカミングデイ

・海外姉妹提携校との協定事業

・地域との関係強化事業

安城学園高等学校

・創立110周年記念演奏会(吹奏楽部・弦楽部・合唱部・ダンス部)

・創立110周年記念学園祭の開催

・創立110周年記念ミュージカル一般公開

・城南グラウンドクラブハウスの建替え

・同窓会による「建学の精神」額の寄贈(体育館に設置)

岡崎城西高等学校

・岡崎城西高等学校創立60年誌の制作

・地域で活躍している卒業生を講師に招いて記念講演の開催

・第2グラウンドサッカー場の人工芝化

・同窓会による創立60周年記念マフラータオルの製作

幼稚園

・航空写真

・人形劇鑑賞会

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