第2節 情報教育の変遷と情報センターの役割

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(1)情報教育の流れ
近年のめざましい情報技術の発展に伴って、大学の情報教育も大きく変化してきた。もともとは、専門家を育てるための技術教育がその主流であったが、近年は全学生に情報やコンピュータを扱う能力を持たせるための基礎教育としての重要性が高まっている。教育・研究の道具としてのコンピュータの役割は、情報系ではない専門科目においても増大している。
したがって、大学の情報基礎教育の質をより高いものへ移行していくことが必須である。ネットワークを利用した教育も本格的に行われつつあり、そのためのインフラの整備を進めなければならない。経営情報学科における先端的な教育に対応していくことも必要である。
本稿では、これらの情報教育の流れに伴い、豊田キャンパスの情報設備がどのように拡充されてきたか、またどのような方向を持っているかについて記す。
経営学部が豊田キャンパスに開設された昭和62(1987)年、経営情報学科が設置された平成5(1993)年、コミュニティ政策学部が開設された10年を起点として、情報設備の変遷をⅠ期、Ⅱ期、Ⅲ期と分けると、割合よくまとまって記述することができる。これは、豊田キャンパスが時代とともに歩んできたことを、いみじくも表しているようである。
現在、学生が日常的に携帯しているパソコンの能力は、経営学部開設当時にメインフレームとしていたコンピュータを軽く追い越している。メインフレームの時代には、あらかじめ登録されたユーザーが、システム内のソフトを決まった方法で利用していた。しかし、今では、自分が必要としているソフトをインストールして、パソコンを自分用にカスタマイズして使う時代となった。このようなコンピュータの利用法についての質的な変化は、情報センターのあり方や役割を大きく変えた。現在の問題点とこれからの展望について簡単に触れることとする。

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(2)情報設備の拡充過程
Ⅰ期の経営学部が開設された当時は、メインフレーム・コンピュータをパソコン端末によって操作するという形態が主流であった。本学も、開設時はFACOM M76をメインフレームとしたシステムであった。
Ⅱ期の経営情報学科設置の頃は、メインフレームから分散型のシステムへ、急速に情報システムが移行した時期である。本学でも、HITAC M630をメインフレームとしたシステムを経て、クライアント・サーバシステムへ転換した。
学生一人ひとりがパソコンを使って学ぶのが常態となり、内容もワープロ、表計算などのアプリケーション・ソフトを使うものが増えた。経営学部としては、情報教育のフィールドが一気に広がった時期である。
経営情報学科の設置に伴って、NEC PC9801を中心とした実習室を作っている。OSはMS-DOS、Windows3.1であり、ワープロは、「一太郎」、表計算は「ロータス1-2-3」を使っていた。
一方、この頃華があったのはMacである。Photoshop、Illustratorなどのソフトは、マルチメディアはここから出発したということができる内容であった。本学部も、7号館5階のコンピュータガーデンに、いち早く4台を導入した。
平成6年頃には、それまでの日本独自の「標準機」であったPC9801に代わってDOS/V機が急速にそのシェアを広げた。本学もコンピュータ実習室A、Bの機種を取り換えて各50台を導入した。
7年には、実習室CにMacを30台導入している。この流れは、現在Macを利用して行われているユニークな英語教育として、実を結んでいる。また、同時に当時もっとも先鋭的なOSであったNextStepを10台設置していることは特筆される。この頃、学内LANの設置が完了し、インターネットとの接続もなされた。
9年には、OSがWindows95、ワープロが「Word」、表計算が「Excel」を標準として教えるようになった。C、C++、Visual Basicなどのプログラミング教育の環境も整った。
Ⅲ期のコミュニティ政策学部開設時からは、インターネットが爆発的に広がりを見せた。10年に、新設された8号館には、充実した設備を整えた。4つの実習室にHP Vectraをそれぞれ57、29、29、57台設置した。ノートパソコンをLANに接続するための情報コンセントを実習室やゼミ室に設置した。また、8号館2階にメディアガーデンを開設した。更にパソコンの画面をスクリーンに表示する装置を講義室に設置した。
一方、7号館の実習室Dのパソコンを、NEC VALUESTAR NXに取り換えた。学外から電話回線を使って大学のサーバに接続することができるようにし、学生が自宅からインターネットを利用できるようになった。
11年には、学生全員に電子メールのアカウントを発行した。
12年、実習室A、BのパソコンをそれぞれNet Vectra54、56台に取り換えた。液晶ディスプレーを採用することによって部屋の雰囲気が一変した。また、実習室CのMacもiMacDV40台に取り換えた。
また、本学のインターネット上流との専用回線を1.5Mbpsに増強した。これにより、授業中などの利用者が多いときでもスムーズにインターネットを利用できるようになった。また、8号館にあるサーバ類と7号館のネットワークとの間にギガビットイーサネットを導入して学内LANを強化した。
平成13年、岡崎キャンパスとの間の通信回線を増強し1.5Mbpsとした。ゼミ室に無線LANの設備を設置し、ノートパソコンを利用した教育の可能性を広げようとしている。

(3)現状と課題
現在、在学中の学生一人当たりのパソコンの数は、全国の大学のなかでも高水準にある。ネットワーク環境も基本的な部分は完成している。その環境のなかで次のような情報教育がなされている。

1、オフィス系
Word、Excel、PowerPoint、Accsessなどの教育が丁寧になされている。Excelについての水準の高さは経営学部の特徴をなしている。

2、技術系
C、C++、Visual Basic、そしてJavaなどのプログラミング教育が行われている。今後は、Javaなどによるネットワーク・プログラミングの比重が高くなるだろう。

3、クリエーター系
Webサイトやデジタルコンテンツ制作などの教育も始まっており、今後の情報教育の中心のひとつとなるであろう。

Webとデータベースを結びつけたアプリケーションなど、ネットワーク社会に対応した内容の教育がより重要になっていくのは明らかである。OSもLinuxの台頭によりWindowsを教えるだけではすまなくなった。
このように教えるべき内容は増大しており、講義のなかだけではとても消化しきれない。学生が自学できる環境を拡充する必要がある。また自宅の学習と大学での勉学を途切れることなく結びつけられる工夫が必要である。
学生が扱うデータ量が増えたこと、そのセキュリティへの配慮から、今後は個人認証によるログインでパソコンを使う方式に変えていく必要がある。そのためには、学内LANを再構築することが必要になるかもしれない。

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