(4)経営学部のカリキュラム改革
経営学部の開設時や、経営情報学科の増設時に比べて、近県の産業・経済環境は大きく変化した。なかでも、愛知県を中心とする「モノづくり」産業の空洞化ならびに新産業創出の緊要化という重大な変化があり、このような状況に対応できる人材が求められている。
経営学部における過去数年間の討議の結果を中心に、産業界・行政の意向も考慮すると、今日、経営学部が求められているものは、「高度な専門性を基盤にし、いち早く新たな価値を創造する独創性を持った知的人材、創造的人材、戦略型人材」の養成である。言い換えれば、現代の状況に対応できる起業家的精神に満ちあふれた人材と言える。
学部新設、学科増設の時期以上に、「新しい産業分野の創出・育成を担うチャレンジ精神豊かな人材、および新しい社会経済動向やビジネス環境に対応した人材」が求められている。いわゆる「起業人材」「経営支援人材」への要望である。この目標に向けてカリキュラム改革がすすめられた。
(5)大学は「冬の時代」へ
入学試験の状況あるいは受験者数の増減は、各大学・学部がその社会的存在意義を問われ、かつ経営の基礎的条件として全学・全学部の力を挙げて取り組むべき課題である。大学を取り巻く環境を見ると、18歳人口と高卒者数が年々減少しており、大学進学率はアップしているとは言え就学人口は減っている。その一方で、大学数、入学定員は増加の一途である。
これにより、全国的に大学間の競争は激化し、国立大学でさえ、多くの大学が統合や再編を計画している。当然私学では、大学の特色を強化し新たな魅力を創出しなければ生き残ることができず、多くの私学では学部の多様化や集中化が行われている。
入試制度や方法の改善や多様化を図ることはもちろん、大学の総合的な価値を上げていくことが入試政策となる。
(6)景気動向と大学の課題
就職環境とは、学生がこれから就職を志向する企業ならびにその背景のことを指すが、それがどう変化するかを見極めるのは難しい問題である。ただ言えることは、21世紀の企業社会は、大なり小なりIT革命の洗礼を受けつつ、一種の知識経済社会へ移行するということである。現在はその移行期にあり、さまざまな革新の波が就職環境をいっそう厳しいものにしている。
就職環境や条件の厳しさの第一はリストラの慢性化であり、就職それ自体の危機である。第二には企業の業態の変化であり、新しい職種や組織に適合した多角的人材が要求されている。第三には、ネット時代における就職の業務システムの変化であり、学校も学生もこれらの業務に精通する必要がある。
ここ10年間のインターネットの普及はめざましく、企業の大小を問わず、その利用が拡大した。それは就職活動についても例外ではない。企業によっては、エントリーから採用試験まですべての情報をインターネットにより通知し、インターネットを利用できない学生のエントリーが事実上、不可能な場合も生まれている。しかし、従来型の就職活動も継続されており、学生たちの活動範囲は更に広範囲とならざるを得ない。
これらの動きに対して、本学では、学生全員に在学中に利用できるメールアドレスを配布し、学内でインターネットを利用して企業のホームページを閲覧できる態勢を整えた。就職相談室にも就職活動に利用できる3台のパソコンを設置し、活用され始めている。
9年度は就職協定が廃止されて初めての就職活動として、その動向が注目された。その結果、予想どおり全体に1カ月ほど早まり、企業・学生ともに初めてのことで対応に苦労が見られた。更にこの傾向は、その後も見られ、全体的に就職活動の早期化が恒常化してきている。本学では、さまざまな学生指導をできるだけ効果的な時期に開催するため、柔軟な日程で対応した。
また、近年は雇用形態にも変化が見られるようになった。従来の終身雇用からさまざまな雇用形態へと変化し、派遣社員・契約社員などが今までになく増加した。
更に大きな変化は、11年4月1日より改正男女雇用均等法が施行されたことである。男女ともに総合職・一般職の選択が可能となり、本学の女子学生も挑戦し始めている。この法改正は、一見女性の就職に関してはより良い環境整備と思われた。しかし、企業側で女子採用予定が無い場合でも求人票に明示されず、応募学生には確認する方法が無かったため、就職活動が無駄になってしまうケースも発生した。今後、雇用における男女差は減少すると思われるが、学生指導上、十分に考慮すべき点である。