第7節 国際交流―環太平洋圏の重視を―

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(1)北京第二外国語学院との交流
経営学部成立後ただちに、交流のために中国での姉妹校探しが行われた。その結果、従来、短大国際教養科とも関係があり、教育水準が高く条件的にも優れている北京第二外国語学院が姉妹校候補に選ばれた。昭和62(1987)年10月、当時の副学長伊藤寿洪をはじめとする代表団が訪中して、第1回の「学術文化交流協定」が結ばれた。この協定の主な内容は教員と留学生の交換、夏期中国語セミナーへの参加、資料の交換などであった。
この協定で、当方は大学と短期大学を含むものとされ、北京第二外国語学院からは毎年、中国語教員1名と留学生1名が1年交替で派遣され、当方からは留学生2名を送るようになった。しかし、平成12(2000)年以降、北京第二外国語学院からは教員2名が派遣されてくるようになり、当方からは1年間の留学生2名が派遣されるというパターンが定着した。

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北京第二外国語学院の教員は、経営学部のみならず短大国際教養科の授業も担当し、中国へ行く交換留学生も国際教養科の学生を含んでいる。この交換留学生というのは、往復航空運賃、学費、寮費などはすべて両大学が負担し、生活費として奨学金が支給されるという優遇された条件のもとで、1年間学ぶものである。系列高校からの入学者のなかには、経営学部に入れば中国に交換留学生として行く道があることを知って、高校時代から中国語を勉強してくる学生も現れるようになった。
夏期中国語セミナーは、毎年夏休みに北京で3週間の学習、1週間の地方旅行として、15年来行われている。
このように協定は大きな成果を上げ、平成3年と7年にはそれぞれ4年間の延長・再調印がなされた。しかし、ひとつの問題があった。それは初期の2年間に来た留学生が来たが、いずれも若い日本語の教員であったため、経営学部の学習内容に興味関心が薄く不満足であった。そこで、11年の協定改定の際には、北京第二外国語学院から2名の交換留学生と5名以内の私費留学生を迎えることに改正した。これによって12年度からは北京第二外国語学院日本語科のトップクラスの学生が1年間の交換留学生として、また5名が4年間の私費留学生として、経営学を学ぶために入学してくることになり、当初の目的を達することとなった。
北京第二外国語学院から、本学のこのように継続的かつ熱心な取り組みに対して、故寺部清毅学長(平成6年)、石川賢作教授(7年)、寺部曉学長(11年)にそれぞれ名誉教授の称号が贈られ、日中文化交流への功績を称えた。

(2)日中共同研究
本学の経営研究所は、中国国務院(中央政府)の国家経済体制改革委員会に所属する経済体制・管理研究所との間で、平成4年度から3年間、「日中企業比較研究」をテーマに共同研究を行った。これはもともと、昭和63年に、経済体制改革研究所との間で話し合われていたものであったが、翌平成元年6月の「天安門事件」でこの研究所が解散されたことがあって、実現が危ぶまれていた。しかし、研究所が先述のものに改編されることによって、陽の目を見たものである。平成3年10月には、経済体制・管理研究所の劉樹人所長が本学を訪れ、「日中企業比較研究に関する協定書」の調印式と「中国の経済改革と日中経済関係」と題する記念講演が行われた。
この共同研究は日中双方の調査対象を自動車、家電、石油化学、繊維の4業種にしぼり、それぞれの調査対象企業を選定して、自国の企業を双方共通の調査項目に従って調査し、その結果を踏まえてそれぞれ相手国の企業を調査するという方法をとった。
主たる調査対象企業は日本では、トヨタ自動車、日本電装、アイシン精機、大信精機、東郷製作所、東芝、三洋電機、三菱樹脂、宇部興産、吉村油化、ミヨシ油脂、大垣紡績、丸丹の各社であり、中国では、中国東風汽車公司(自動車)、広東半球実業集団公司(家電)、大連石油化工公司、北京燕山石油化工公司、浙江省蘭渓農薬廠(以上、石油化学など)、梧桐絲廠(シルク)、平頂山綿紡廠(綿紡織)の各社であった。
本学はこれによって中国の国有、集団所有、合弁、更には株式制、企業集団など、さまざまな形態・規模の企業の実態を調査・見学することができた。
3年間の共同研究の成果は、まず6年5月の重慶と7年3月の豊田市における国際シンポジウムとして結実した。また、本学経営研究所の『経営研究』第8巻特別号(平成6年12月)は、日本側参加者10名の論文を発表した。出版物としてはいずれも日中の共同執筆による以下のものが出版された。

日本語版『中国の企業改革』(税務経理協会、平成7年2月)
『中国の企業経営』(税務経理協会、平成7年4月)
中国語版『中日企業比較:環境・制度・経営』(中国社会科学出版社、平成7年5月)

なお、この共同研究は本学の多額の研究費以外に、私学振興財団の援助も受けて行われた。

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(3)ニューイングランド大学との交流
アメリカの大学との交流計画も経営学部が設立されると同時に調査が開始され、約50の大学に学術交流に関するアンケートを送り、特に熱心に本学との学術交流に関心を示したニューイングランド大学と協定を結ぶことになった。
ニューイングランド大学は東部のニューハンプシャー州にある単科大学で、規模や教育水準の高さから本学の学術交流の相手校にふさわしいとして選ばれた。協定を結ぶに当たって、ニューイングランド大学のピーター・グラスマン副学長が昭和62年4月に本学を訪問し、本学から翌63年8月に後藤秀雄経営学部長ほかの代表団がニューイングランド大学を訪問し協定の細部について協議した。平成元年1月、ウイリアム・オコーネル学長夫妻とピーター・グラスマン副学長が来日して、第1回の「学術文化教育交流協定」が結ばれた。
この協定の主な内容は教員と学生の交流、短期語学研修プログラムの実施、両校の友好関係の維待促進などであった。この協定により、元年2月に本学から5名の学生と1名の引率教員がニューイングランド大学の短期語学研修プログラムに参加した。同年5月、ニューイングランド大学から6名の学生と引率教員1名が本学での短期研修プログラムに参加し、交流が本格的に実施された。本協定は、6年5月に改定調印され延長されたが、日米の不況などにより参加を希望する学生が減少し、現在は交流プログラムが途絶えている。
このニューイングランド大学でのプログラムが2月から3月にかけて実施されるため、多くの学生から夏期休暇中のプログラムの要望があった。そこで、6年から南オレゴン大学とプログラムごとの契約を結び、夏期語学研修プログラムを行うこととした。しかし、こちらの方もバブル崩壊後の経済的混乱により、研修プログラム経費の高騰などのあおりを受け、毎年参加希望学生は減少し続けている。
このような経済的な負担を考慮し、比較的経費が安いオーストラリアの大学との交流が企画された。12年3月、サザン・クロス大学の短期語学研修プログラムに11名の学生と引率教員1名が参加した。今後は、サザン・クロス大学との本格的な学術交流に向けて準備を進めていく予定となっている。
ニューイングランド大学からは、国際交流の一環として、故寺部清毅学長に対し、永年の私学教育および環太平洋地域の重要性を重視した教育の実践、国際化に尽くした功績をたたえ、2年10月5日に名誉人文学博士の学位が授与された。

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(4)コミュニティ政策学部の活動
コミュニティ政策学部は、平成10年度の新学部設立以来、多くの留学生を受け入れてきた。学部は、世界各国の留学生を受け入れ、コミュニティ政策を学んでもらい、卒業後は母国のために尽力する人材を育成したいという大きな理想があった。10年から14年までに受け入れた留学生の出身国は、インドネシア、ベトナム、タイ、カンボジア、中国、韓国、台湾、香港など多岐にわたっている。10年に14名、11年に17名、12年に27名、13年に55名、そして14年には1名の留学生を迎えた。また留学生受け入れに際して、多くの制度が作られ、実施された。以下にそれらについて詳述する。

日本語補習
初年度となる10年には全く日本語を理解できない留学生が2名入学したが、彼女たちのために、「初級」クラスとして夏期休業中に集中講義が実施された。秋セメスターにおいては、1週間6コマの補習が実施された。また、入学前に日本語1級を取得してきた学生については、「日本語A1」「日本語A2」が免除された。日本語1級を取得していない学生に対しては、「日本語A1」「日本語A2」だけでは不十分であるので、そのほかに2コマ後期から実施された。この補習は、その後、現在にいたるまで制度を整備しつつ毎年実施されており、「日本語A1」「日本語A2」「日本語B1」「日本語B2」「日本語C1」「日本語C2」まですべて正規授業の他に補習が行われている。留学生に対する日本語教育は万全であると言える。

留学生研修旅行
留学生用の研修旅行は毎年留学生が喜んで参加する行事のひとつである。10年度は高山・白川郷にバスでの1泊旅行。多くの教職員も参加し、大変有意義な交流ができた。11年からは日帰り旅行で、伊賀忍者村と手づくりソーセージ体験をする、童心に返ったバスツアー。12年度は希望の多かった京都旅行で南禅寺、竜安寺、金閣寺などを訪れた。13年度は、この4年間熱望していた富士山見学で、静岡県側から遠くに富士山を眺めた留学生は満足の歓声を上げた。これらの研修旅行は毎年留学生の希望を聞き入れ、対象地域を決定する。経済的あるいは日程的に、また地理不案内なため個人での旅行がなかなか困難な留学生にとって、日本の文化や伝統を間近に感じるよい機会であると大変好評で、毎年その実施が待たれている。

各種交流パーティ
留学生用の交流パーティは、留学生同士、あるいは留学生と日本人学生、教職員との交流をする楽しいものである。新入学用オリエンテーション後のパーティや留学生の結婚祝賀パーティ、留学生の卒業お祝いパーティなど小さな手づくりのパーティや、年に一度の大きなクリスマスパーティも行われてきた。このクリスマスパーティは、安城学園の設置校である城西高校や安城学園高校、短期大学、家政学部そして豊田学舎の経営学部とコミュニティ政策学部などに留学しているすべての留学生とその指導教員、日本語教師など関係者が集まる大規模なものである。1年に一度各設置校の国際交流担当者との交流は非常に有意義なものであるし、日頃なかなかゆっくり話すことができない職員も仕事のあとでパーティにかけつけて、交流することができた。

地域での国際交流
豊田学舎の国際交流委員会は、豊田市の国際交流協会と協力関係を結んでおり、多くの企画に参加している。日本人の一般家庭を訪問する企画や、日本の文化を学ぶために着物の着付けや華道、茶道を体験する企画、日本のお正月を体験する企画、そして富士山登山などの旅行へも参加している。豊田市国際交流協会から豊田学舎へ協力を依頼されていることのひとつに、豊田市内の小中学校への国際理解教育プログラムへの講師派遣がある。これは、留学生が各小中学校へ出向き、母国の文化を紹介し、一緒に学校の授業を行う企画である。こうした企画に参加した学生の一人はその後、児童生徒から手紙や写真をもらったりして、なんども講師派遣に応じるようになったこともある。日本人の児童生徒にとっても自分の知らない国の留学生と直接交流できることは大変有意義なことであろうと推察できる。
また、コミュニティ政策学部で3年次に実施されるコミュニティ運営実習において、地域へ出かけ地域住民とともに自治区活動に参加したり、地域住民の方々と交流したりすることは大きな経験となっている。公民館活動への参加、地域の幼稚園や児童館へ紙芝居を見せに行ったり、成人式に出席したりと、大学内だけではなく地域へ出ていくことは、日本での留学生活を充実させるよい機会となっている。

海外の大学との交流
本学には環太平洋構想の理念があり、これに基づいてアメリカ合衆国ニューハンプシャー州ニューイングランド大学、中国の北京第二外国語学院との姉妹校提携が結ばれているが、平成13年度新たに中国上海の復旦大学日本研究センターとの姉妹校協定が結ばれた。
上海復旦大学日本研究センターとの学術交流に関する協定締結は、①教員の派遣と滞在、②共同研究活動、③セミナー、シンポジウムなどの学術的会合への参加、④学術資料および研究・教育活動に関する情報交換、などである。復旦大学は中国教育部が定める重点大学のひとつで、北京大学と並ぶ最高峰の総合大学である。12年度は協定の締結を記念して、図書の寄贈がなされた。寄贈については本学教員の著書を中心に復旦大学の希望を合わせて贈られた。またこれに先立ち、復旦大学徐静波先生が来学、講演され、その後寺部曉理事長から徐先生に図書目録が贈られた。これらの多くの海外の大学との交流は今後も継続されていくであろう。

留学生の進路をめぐって
13年3月コミュニティ政策学部は第1期卒業生を送り出すことができたが、同時に留学生8名が卒業した。留学生の進路は進学が主で、名古屋大学大学院総合言語文化研究科、中京大学大学院経済学研究科、愛知県立大学大学院国際文化研究科総合文化専攻、名城大学大学院、愛知学院大学総合政策研究科などの大学院に進学した学生と、名古屋大学教育学部の研究生になって勉強を継続している学生などである。多くの留学生はコミュニティ政策学部に在籍中、日本社会の勉強と同時に母国での現状や将来に思いをはせ、より深く勉強する希望を持つようになったと思われる。高い志を持ち、困難な留学生生活を選択し継続していったようである。今後もよりいっそう高い志を抱いた留学生を受け入れ、教育していくことを念願している。

本来の国際交流とは
豊田学舎における国際交流はこの4年間、留学生の受け入れに重点が置かれてきた。日本人学生と留学生の間の交流はともすれば、後回しにされてきた面もあった。しかし日常的な学生生活のなかでいつのまにか留学生と日本人学生が自然に友人となったり、演習や実習をともに行ったりしている姿が見られるようになった。留学生のおかげでその国を知り、興味を持つようになった日本人学生もいる。また教職員との交流もクリスマス・パーティなどではよく見られた。全教職員や日本人学生にとって留学生がいることが自然となったと言えよう。今後もいっそうの交流が自然に行われることを願っている。

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