第7節 専門学校保健科に中等教員無試験検定資格許可される

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当時の制度では、官公立の専門学校は卒業と同時に中等教員の免許状が交付されたが、私立の専門学校では国家試験を合格しなければ中免は与えられなかった。つまり卒業しても中等教員にはなれないという矛盾があったのである。教員の免許状の下付のない私学へは教員を希望する生徒は入学をしてこないので私学にとっては、中免の国家試験に合格するか否かは、廃校になるか隆盛に向うかの重大なことであった。

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幸に、被服科は悪戦苦闘の末、寺部芳子先生(現理事長夫人)等を迎えて合格し、生徒数は年々増加してきたが、保健科は反対に年々減少し昭和21年では1クラスが約20名しかない状況であった。
その時、蒙彊から帰国されたばかりの寺部清毅先生は直ちに、保健科に中等教員無試験検定の資格をうるべく推進力となって、申請書を文部省に提出した。受験者19名は21年の冬を目指して休暇を返上し諸先生の特別指導をうけた。国家試験は文部省より2名の係官が出張し試験の施行と設備の視察をしたが、結果優秀な成績で一度に検定の許可を得、ここに今日の短大生活科の基礎がかたまったのである。全く文字通り寝食を忘れてこのことに捧げられた当時の先生方の熱意と、学生自身の努力が実を結んだものである。こうして昭和22年3月以後の卒業生に「家政科保健」の中等教員免許が下付されるに至った。

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保健科中等教員無試験検定資格のための国家試験に参加して 三輪友子
(昭和22年安城女専卒元安城学園同窓会勿忘草会長)

当時昭和19年4月。大都市にはしばしば敵米機の来襲のありました頃のことでございます。その戦禍を避けるかのように集りました40余名。安城女子専門学校に保健科が誕生致しました。
短期間ではございましたが、戦時下には稀な牧歌調豊かな田園の学舎で、勉学にいそしむことが出来たのでございます。やがて一億一心のスローガンのもとに学徒に動員令が下り、1年余に亘る軍需工場での生活を余儀なくさせられ、敗戦という大きな打撃を受けた後学窓へ戻りました時には、縁あって学舎を共にしました40余名も半数以下19名になっておりました。戦争も一因ながら3年の専門教育を受けた後何の資格もなく社会に出てから学んだものの受け入れられる場もない、という口にこそ出しません一因で退学に至ったことも事実ではなかったかと思います。
戦災にあわなかった安城の街の夫々の動きもやや落ち着きを取り戻しました頃、保健科の教員無試験検定の資格取得の国家試験を受けることになりました。
文部省との折衝に当たられました現学長そして理事長の寺部清毅先生の御苦労は本当に大変なことでありましたことと推察致します。
このようなお心に包まれて寺部芳子先生を中心に畔柳、伊吹、福田、加藤幸子、今は亡くなられました稲沢の各先生方や、外部からの先生方に試験の為にと日夜寝食を忘れての御指導をいただきました。その日々の中には「一目瞭然に。」「字が流れます。」「誤字のないように。」「もっと内容を厚く。」「何とまあまずい内容(要は出来ていない)。」etc。先生方の御気持ちに反した生徒の出来具合に随分頼りない思いをなさったことでございましょう。
午前には授業、午後には試験、といった幾日かが過ぎ試験の日が迫って参りました頃、全員が礼法室に合宿し夜を日についでの追い込みに入りましたが、四六時中の受験勉強に当然起って来なければならないあせりや緊張感や悲壮感が強くならないで、保健科特有ののんびりムードで過ごせましたことは、恐らく寺部清毅、芳子先生御夫妻を中心として多くの先生方の和やかなお気持ちの反映でなかったかと思っております。
礼法室での合宿中には勉強時間を少しでも多くしようと寮の先生方・保健科の下級生や寮生の皆さんが食事のお世話を下さいました。学校中の人々からの暖かいお心に見守られて試験に臨んだのでございます。
答案提出後の虚脱感。我を取り戻せば出来不出来より不勉強の後悔が先に立ちました。不安、焦燥を押し隠したはしゃぎ。よかれ、よかれの連想と。発表の日までの日時はやはり大変に長く感じました。
合格。無から有を生み出した感激。学校関係者、教師、生徒、立場こそ変われ等しく味わったこの気持ち。消えあせることは有り得ないのではないでしょうか。
只々心に残りますことは受験勉強に入りまして間もなく、清毅先生と同じ御苦労を重ねておられました校主寺部三蔵先生が、お志の成就を見られることもなく急逝されました事で、悲しみと共に喜びを味わっていただきたかった思いでございます。
この国家試験を通して学校から或いは多くの人々からいたゞいた有形、無形の御恩を自分の生活の中で豊かに拡げてゆきたいと思います。

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